ページの本文へ

Hitachi

日立ワークスタイル変革ソリューション

先が読めないビジネス環境の中、営業はどう動くか?

回 予測不能な時代のビジネスパーソンの要件とは?

社会を一変させた新型コロナウイルスのパンデミック。そして、コロナ前の常識が大きく変わるニューノーマルの到来。かつてないほどに先が読めないビジネス環境の中、大きく混迷している組織の一つが営業部門ではないでしょうか。

日立では、企業のそうした悩みに応えるために「営業活動データ分析ソリューション」を開発。そして、本ソリューションの中核技術であるAIの研究・開発に携わる日立製作所 フェロー 矢野和男に、予測不能な時代に営業活動に求められる変革について、語っていただきました。

AIが行動をサジェスチョン

日立は現在、営業活動を支援するためのソリューションでの適用をめざして、新しいAIの実用化を進めています。そのソリューションではAIが、いま市場に起きている変化に応じて、どのような商材をどのような顧客に提案すればよいのか、新しい売り方の可能性を導き出します。そして営業担当者はその情報をサジェスチョンとして受け取り、日々の行動に生かすと同時に新たなデータと可能性を生み出してしていきます。

これにより変化に対して自己革新しつづける営業組織を実現でき、その結果、売り上げの最大化を図ることができます。

安定を求めてしまう人間

変化が常態化している今日では、ビジネスにおいて自己革新をつづけることは企業が生き残るために必須の要件と言ってもいいでしょう。しかし人間は、どうしても安定を求めてしまいます。

長年にわたって築いた顧客とのつながり、機能も売り方も知り尽くした商材など、蓄積したノウハウにどうしても頼りたくなります。その結果、行きやすい顧客のところばかり訪問してしまう、売りやすい商材ばかりおすすめしてしまう、といった現象が起こりやすくなります。

もちろん顧客とのつながりや商材の知識は、とても重要です。しかし、過去の成功体験だけを繰り返していても行動の幅は広がりません。いずれ市場の変化とのギャップが拡大し、ジリ貧は避けられないのではないでしょうか。

その点、私たちの新しいAIは、営業組織の自己革新のサポートを主眼に開発されています。

例えば、組織に対して新しい挑戦を推奨しても、その選択肢は無限にあります。可能性が見えない挑戦は誰もしたくありませんから、かけ声だけではどうしても守りに入ってしまいます。

その時私たちのAIが、いま起きている事象の中から、ここに新しい可能性があるとサジェスチョンを行い、挑戦を後押しするのです。これによってジリ貧を脱するための新しい展開が生まれます。

これからの営業担当者に求められる要件は?

AIとともに活動するこれからの営業担当者に求められる要件とは何でしょう。それは研ぎ澄まされた感覚でいつでも高度な判断が行えることだと思います。AIは変化の兆しを発見しますが、提供するのはサジェスチョンであり、実際に行動するのはあくまでも人間です。

サジェスチョンをもとにどういう提案を行うのか、そのストーリーづくりやチームづくり、顧客とのコミュニケーションなど営業担当者は感覚を研ぎ澄まし、質の高い判断を行うことが要求されるでしょう。

そのためにはやはり、つねに自己革新を怠らないことです。自分の専門分野にこだわらず、つねにアンテナをはってさまざまな人に会い、したことのない経験をし、新しい知識を積み増していく。そしてそれらを統合して理解し、いま時代はどのように変化しているのかをつねに把握し、判断に生かしていく。不断な自己革新こそが、予測不能な時代のビジネスパーソンがなすべきことだと言えるでしょう。

自己革新は、幸福の要因

私たちの新しいAIは、営業活動を支援するためのソリューションでの実用化をめざしていますが、今後さらにその適用領域を拡大していく方向です。営業だけでなく開発や人事など企業内のさまざまな組織で、さらには暮らしのなかで多くの人々がこのAIを、自己革新に役立てることができます。

自己革新は、人間にとって幸福の要因のひとつです。人生にはポジティブなこと、ネガティブなこと、いろいろなことが起こりますが、つねにポジティブな可能性に目を向け、壁を乗り越えるためのストーリーを組み立てられる人は、本質的に幸福だということができます。そして個人や組織の幸福は、ビジネスのパフォーマンスに直結します。

私たちのAIは、新しい可能性の提示を通してポジティブなストーリーづくりをサポートします。そして、予測不能な時代に、変化に前向きに立ち向かう組織を支えます。そのためにわれわれは今後も、このAIをさらに成長させていきたいと考えています。

写真:矢野 和男

矢野 和男
1959年、山形県生まれ。1984年、早稲田大学大学院修士課程を修了し日立製作所に入社。同社の中央研究所にて半導体研究に携わり、1993年、単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功する。同年、博士号(工学)を取得。2004年から、世界に先駆けてウェアラブル技術とビッグデータ収集・活用の研究に着手。2014年、自著『データの見えざる手 ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会』が、BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる。論文被引用件数は4,000件にのぼり、特許出願は350件超。2020年、(株)ハピネスプラネットを創業しCEOに就任。東京工業大学情報工学院特定教授。