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ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

「現行業務は変えたくない」
既存資産を継承しながらコスト低減と機能アップのオープン化を実現

運用コストの低減と環境変化に即応できるシステム基盤の構築を目的に、メインフレーム資産をオープンシステムへと移行するレガシーマイグレーションの動きが活発化しています。 自動車部品から食品、日用品まで幅広い輸送サービスを展開するロジスティクスプロバイダーの「株式会社バンテック」は、これまでメインフレームで稼働していた「自動車部品調達物流システム」のオープン化を図るため、日立のオープンミドルウェアをフル活用。エンドユーザーに移行を意識させない操作性と信頼性、機能拡張に向けた柔軟性を実現する新システムを構築しました。

「現行業務を変えない」ことが最大の目標

お客さまのSCM※全体をサポートする提案型総合物流企業として躍進を続ける株式会社バンテック(以下、バンテック)。同社は近年、さまざまなお客さまごとに構築された物流システム基盤を、メインフレームからオープンシステムへと移行するレガシーマイグレーションに取り組み、運用コストの低減と業務量の拡大に対応した処理能力の向上を図ってきました。

今回対象となったシステムは、全国に数百社もある部品サプライヤーから自動車メーカーの各工場へと、バンテックが多彩な輸送メニューを駆使しながら物流の効率化を実現する調達物流システムです。

バンテックは、このシステムを2001年より日立のメインフレームMP5600(VOS3/FS)で稼働させていましたが、そのハードウェアリプレースに合わせ、コストパフォーマンスと拡張性に優れたHA8000(OS:Windows2003)プラットフォームへの移行を決断。企業競争力の維持・継承を図るため、「現行業務を変えることなく、オープン環境で継続運用させる」ことを目的としたプロジェクトを、SIパートナーの日立とともに2006年7月よりスタートさせました。

  • * SCM(Supply Chain Management):ITを利用し、受発注、在庫管理などの供給業務の効率化やコストダウンを図ること。


システム移行前と同じように入力画面ではキーボード主体による
快適なデータエントリ操作を再現

既存資産を継承した画面系の開発にXMAP3/Webを適用

橋本 淳一 氏の写真
株式会社 バンテック
管理本部
情報システム部
運輸ITグループ課長
橋本 淳一 氏

蓬莱 淳一郎 氏の写真
株式会社 バンテック
管理本部
情報システム部
運輸ITグループ
蓬莱 淳一郎 氏

「今回のプロジェクトでは、エンドユーザーに負担をかけないよう、画面インタフェースや操作性を一切変更しないこと、全国20拠点に散らばるクライアントPCの管理負担を軽減するため、個別にソフトウェアをインストールしなくてすむWeb方式にすることを絶対条件にあげました」と語るのは、管理本部 情報システム部 運輸ITグループ課長の橋本淳一氏です。

新システムにおける画面系の開発には、メインフレームのマップ資産やCOBOL資産を活用できるXMAP3/Webが採用されました。XMAP3/Webは、基幹業務をお客さまニーズに合わせたオープン環境で実現するXMAP3シリーズのWebシステム対応版で、通常のHTMLと違い、固定項目をあらかじめクライアント側にキャッシュさせておくことで、サーバとクライアント間の送信データを軽減する仕掛けを提供するとともに、TP1/Webや分散トランザクションマネージャOpenTP1などと連携して、オープンシステムでも安定した性能と信頼性を確保できるのが大きな特長です。

今回のシステムでは、これまでと同じ入力画面上でキーボード主体の快適なデータエントリ操作を再現しながら、OpenTP1との連携により、業務処理をサーバ側に集中させ、クライアントPCにはWebブラウザのみを配置すればよい軽快なWebシステムを構築することに成功しました。

また、帳票系では既存のEUR資産を活用できるEURPrint Serviceの導入により、クライアント側に専用ビューワーをインストールすることなく、サーバ側でPDF帳票を一括出力するスタイルへと印刷方式を変更。「繁雑だった画面・帳票系のアプリケーション配布の手間がなくなったことで、全国に散らばるクライアントPCの運用管理コストが大幅に軽減できました」と、管理本部 情報システム部 運輸ITグループ 蓬莱淳一郎氏は、その適用効果を高く評価します。

バンテックではこれまでも、画面系資産の維持・継承を図るため、UNIXベースの輸出入システムや、Windowsベースの食品物流システムなどのレガシーマイグレーションにXMAP3シリーズを多数適用させてきました。その豊富な移行経験で培ったノウハウの蓄積が、今回の自動車部品調達物流システムでもみごとに活かされたことになります。

このほかにも、COBOL85資産との互換性に優れた「COBOL2002」や、JCL(Job Control Language)と同じイメージでバッチ処理などのジョブ運用を実現する「JP1/Automatic Job ManagementSystem 2(JP1/AJS2)」、XDM/RD E2からの迅速なデータベース移行を可能とした「HiRDB」といった日立オープンミドルウェアをフル活用したことで、システムトータルでの高効率な移行を実現。プロジェクト開始から8か月後の2007年3月に、新システムは予定どおりカットオーバーを果たしました(図)。

システム移行イメージ
(図)システム移行イメージ

運用コストの低減と処理能力のアップを実現

川端 健仁 氏の写真
株式会社 バンテック
管理本部
情報システム部
流通ITグループ
川端 健仁 氏

オープンシステムへの移行により、「運用コストが約1/3にまで低減できました」と笑顔で語る蓬莱氏。最新のプラットフォームによる処理能力の向上も期待以上のものとなり、「オンラインでの高レスポンスはもちろん、バッチ処理では従来に比べて2倍以上のスピードが出ています。システムの取り扱いデータ量は日々24万件にものぼりますが、数値チェックのため数年前のデータを見たいといった場合でも、HiRDBとの連携で、各種処理が非常に高速になったことが何よりもうれしいですね」と橋本氏は語ります。

システムの可用性向上についても独自の工夫がこらされました。

「実はこのシステムに先立ち、食品メーカー向けの物流システムも同じ手法とシステム構成でオープン基盤に移行したのですが、万一の障害時には相互をバックアップシステムとして切り替え、縮退運転できるようにしました」と、管理本部 情報システム部 流通ITグループの川端健仁氏は説明します。これにより、各システムに待機系サーバを持たせる構成より、低コストにダウンタイムの極小化による事業継続性の確保を実現することに成功したのです。

これら一連の移行プロジェクトを支援した日立に対して蓬莱氏は、「当社からの細かな要求が多くあったにもかかわらず、ほとんどトラブルもなくスケジュールどおりに本番稼働を迎えられたのは、日立さんのプロジェクト管理能力の高さによる部分が非常に大きかったと思います」と評価します。

さまざまな戦略的課題へのチャレンジが容易に

システム基盤の柔軟性が確保されたことで、「今後は協力会社さんとのシステム間連携や、取引量が拡大している海外サプライヤーさんとのEDI基盤の構築、輸出入システムとの連携による複合一環輸送の仕組み作りといった、さまざまな戦略的課題へのチャレンジが非常にやりやすくなりました」と期待を込める橋本氏。そして、今回の自動車部品調達物流システムや食品物流システムは、さらなる安定稼働と可用性を追求するため、2007年度中にも日立のデータセンタへとハウジングされる予定となっています。

ますます多様化・高度化するお客さまニーズに対応するため、ITを最大限に活用した提案型総合物流企業としての体質強化を図るバンテック。すでにサービスを開始している従業員向けポータルサイト(uCosminexus Portal Frameworkで構築)とのシームレス連携や、次なる目標であるグローバル市場でのプレゼンス向上に向けた挑戦も含めて、これからも日立は幅広い品ぞろえのオープンミドルウェアとプラットフォームソリューションによって同社の戦略を力強く支えていきます。

USER PROFILE


平塚物流センター

株式会社バンテック(VTC)

[本社] 神奈川県横浜市西区花咲町六丁目145番地 横浜花咲ビル
[創業] 1954年1月6日
[代表取締役] 山田 敏晴
[資本金] 24億4,164万2,400円(2005年現在)
[売上高] 707億円(バンテック単体 2007年3月期)
[従業員数] 4,645名(VTCグループ)
[車両台数] 3,400台(VTCグループ)
[事業概要] 貨物自動車運送事業、梱包事業、港湾運送事業、倉庫業、廃棄物処理業、通関業、物流コンサルティング

特記事項

  • この記事は、「はいたっく 9月号」に掲載されたものです。
  • COBOL2002XMAP3OpenTP1JP1HiRDBの詳細については,ホームページをご覧ください。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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