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Hitachi

Ultimate Nomad Life

境界のない新しいワークライフバランス

「今月はオーストラリアにいます。インスピレーションが欲しくて。」

変化の始まり

パンデミックの影響を受け、多くの人が働く場所や働く時間帯を自由に選べるようになり、さまざまな働き方、住まい方が可能になった。これまで家賃補助などの「与える」福利厚生で働きやすい環境づくりを行ってきた企業に対し、各個人が働き方、住む場所の自由な選択を「認める」よう、労使交渉の内容が変化する。

「枠のない就労」を認め合う企業と個人

企業が従業員の就労時間の短縮や副業を容認するにつれ、人々は自分ならではのワークスタイルを模索し始める。日本との時差の少ない海外へ移住する人。仕事と学びを両立させたいと思う人。1つの会社の中で描くキャリアパスが自分にとっても企業にとっても最良の答えではないことに気づいた人々は、自ら人的ネットワークを構築し、ギグワークやフリーランススタイルで働くことを好む。一方、組織に属する従来型の働き方に慣れてきた人々は、「枠のない就労」が社会の潮流になっていくことを認識しつつも、潮流に乗り切れない自らにもどかしさを抱え始める。

「枠のない就労」スタイルが定着するにつれ、企業側も人材のマネジメント戦略を変えていく。自分の能力をどう生かすべきか悩む「モラトリアム」時間を過ごしていた人たちにも価値を見出し始め、合理性を持った実績型人材から、集団行動は苦手だが独創的視点を持ち、前触れもなく爆発的な成果を発揮するセレンディピティ(予想外のものの発見)の確率を秘めた人材の獲得に乗り出す。企業側は、いつ結果を出すかわからない従業員の活動の自由を許容する一方、企業の「生産性」を意識し、彼ら/彼女らがどのような人的ネットワークの中で何を生み出そうとしているのか、常に把握しておくことを望むようになる。

グローバルな「枠のない近所づきあい」

自由な働き方を実践し始めた人々は、企業内におけるコミュニティのつながりが弱まるにつれ、身近な暮らしの中に拠り所をつくろうとする。子どもの面倒を見てくれたり、病気の時には様子を気遣ってくれる。そんな、 かつての「近所づきあい」は地域、隣人同士という偶然性から生まれた「助け合い」であったが、人々は地域にとらわれない「いざとなったら助け合える関係」を求めて能動的に「ご近所さん(共同体)」を構築していく。共同体は物理的距離の制約にしばられず遠くの人とのつながりも形成し、遠距離の「隣人」は個人のフットワークを軽くさせ、多拠点居住を促進する

人々の生活拠点選びが活性化するのを受けて、グローバルレベルで地域同士の交流が進む。住民票の書換えや税金の納め方、医療保険の在り方など、住む場所を変える場合に足かせになっていた課題は、世界中の各都市が税制や社会保障システムにおける連携を取り合うことで解決していく。人々は複数の都市を自由に行き来することが可能になり、距離の制約を超えた「ご近所さん」関係を実現。多拠点居住に伴いモノへの所有観念が薄れた人々は、他者とモノや生活の場を共有することが自分にとっての暮らしやすさ、安心感につながることに気づきはじめる。

Keywords:
テレワーク普及、副業解禁、キャリア形成、ワークライフバランス、福利厚生、移住・多拠点居住、互助関係