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人々を孤立から守る覚悟のいらないしなやかな所属感

ギグワークが進み、企業を中心としたコミュニティは弱くなっていく。代わりに、気の置けない仲間たちとオンラインで「隣人」関係を結んだり、地域への関りを強くしていく人たちが増えていく。生活の自由度が高まる一方で、一人一人が社会システムを支える存在であるということを理解しろと言われているかのように、定期健診は常時モニタリングに変わっている。

会社中心の生活をしてきた多くの人々が、自由をうまく使いこなせずにいる。自分の自由のために他者を侵害してしまうのを恐れ、周囲に合わせることに気力を使い、自立をしているのか孤立をしているのか分からなくなっている。彼ら・彼女らは「所属」の安心感を求めるようになっていく。 そのような人たちに向けても、ここでは地域に関わる入口がさまざまな形で開いている。例えば、地域の農家が台風前に急遽収穫した野菜をみんなで買おうという呼びかけがある。ただ野菜を買うだけだが、意味はまったく違っている。皆が使うバスも地域の入口である。自分の行動データを出す、データを見ながらルートを検討する、これらを取りまとめて計画をつくる立場に回るなど、自分の気持ちや状況に応じてしなやかに関りの度合いを変えながら、目に見える成果を通じて地域に所属している感覚を得ることができる。 街や行政は、市民が関わりやすくするための環境づくりを徹底的に行い、市民は街に関わり社会的なコストを抑えるような生活を送る、そんなちょうどいいバランスが模索されている。

持続可能な社会のQOLを考えるキーワード 「利用から関与へ」

関わることができる、役に立つことができるという、皆が使うインフラが備える新しい機能

10年前に「所有から利用へ」という言葉が新しい時代の到来を示したように、いま、「利用から関与へ」という言葉について考える必要がある。 利便性や効率が重視される現在は「面倒」と捉えられることが、「権利」や「責任」を伴う「所属感」として、インフラ事業者の次世代の倫理として求められるようになる。皆が等しく使う社会インフラだからこそ、人々の相互的な関与や地域への関与の入口となる可能性と責任がある。