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Socio-education

社会と関わり、変えていくための学校教育

「さあ、今日の授業はみんなでまちの仕組みをつくります」

変化の始まり

突然の休校要請は学びの場のあり方を変えた。良質なコンテンツとビデオチャットの組合せによるオンライン学習は、教師と生徒の直接的な対話関係を深め、教師一人ひとりの生徒に向き合う時間をもたらした。それに伴い、従来の教師が一方向的に生徒に知識を教授する画一的な教育の在り方に疑問が生じ始める。Face to Faceであるからこそ可能な学習方法が模索され、個々の興味・関心を伸ばしながら学ぶ場に変えていこうという機運が高まる。

新たな義務教育で広がる、学びの自由度と学習意欲の個人差

教室に整然と並んだ机の光景は過去のものとなり、義務教育の在り方も変わる。基礎学習ではリアルな場(学校)もしくはオンライン学習を選べるようになり、生徒たちは個々のレベル・環境を考慮に入れながら、コンテンツの選び方、わかりにくい箇所などを教師に相談する。それに伴い、教師と生徒の関係は「教える/教わる」という縦の関係から、「一緒に考える」フラットな関係へと変化、教師の役割は旧来の枠組みから解放される。

学習コンテンツのポートフォリオ管理(分析・検討)を用い、得意分野を伸ばす学習法が普及する。小中高の学習内容をオンライン留学により日本にいながらにして受講できたり、特定の分野のみ集中的に学ぶスタイルも一般化。子どもたちも互いの得意分野を認めあうようになり、おのずと個々の違いを受け入れるようになる。一方、無償コンテンツによって世帯収入などによる学習機会の格差は縮小するが、学力差は拡大。一人ひとり学ぶペースが違うため、学習プランの立て方、進め方における家庭と学校との連携が複雑化するが、根本的な課題として子どもたちの学習意欲の差が広がってしまうことが問題視されるようになる。

「社会の変え方」は学びの必修に

「自分と公共との関係について考える」授業がすべての学年で必修科目とされる。大学では学生各々が専門性を活かし地域課題解決に取り組むことが、主要な学習・研究のスタイルとなる。学校には次第に、教師や学生に限らずさまざまなバックグラウンドを持つ地域市民が集まってくる。アゴラ(市民が政治・哲学などを論じて過ごす場)化されていく学びの場の中で、生徒たちは地域市民と触れあうことで身近に起きている社会の問題を知り、現場参画を通して一人ひとりが社会に対して声をあげることの意味を実感し始める。「社会は自分の行動によって変えられる」という考えが彼ら/彼女らの中で確かなものとなっていく。

義務教育の必修科目として「地域における起業」がプログラム化される。生徒たちはプログラムを通じて対価を稼ぐようになり、対価を得るために必要なサービス水準や起業による地域への影響力を理解するなど、社会を変えるための実践的な知識を体得していく。また、活動を続ける中で、彼ら/彼女らの中に他者を理解し共に協調していく能力、物事をやり抜く力などの非認知能力も育まれていく。併せて、大切なのは自分や周りの人々が無理なく続けられる参画の方法を見出すことなのだと気づき、可能な範囲内の参画を複数組み合わせて大きな価値の創出につなげていけるような、エコシステムの構築を目標とするようになる。

Keywords:
デジタル教育・オンライン学習、教育格差、体験学習、多世代交流、コミュニティ教育