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Hitachi

Resilient Public, Inc.

企業がつなぐ持続可能な社会

「一番楽しい環境活動がついてる商品はどれかな?」

変化の始まり

インドの街では数十年ぶりにヒマラヤ山脈が姿を現すなど、ロックダウン(都市封鎖)は全世界の環境汚染を一時的に改善させた。人々は自然環境に与えていた影響を再認識し、消費者として企業に求めてきた生活の利便性や快楽について省みる。人々はエコバック持参など、社会の風潮に乗って「なんとなく」習慣化させていたエコ活動に、新たな認識を持って前向きに取り組むようになる。

企業の調整力から生まれる新たな公共、そしてバランスの崩壊

生活用品等の受容と供給のバランスが崩れた経験を経て、行政や市民は地域のレジリエンス(適応能力)のための調整役を企業に期待するようになる。多くの人が在宅勤務や自宅学習への切り替えを余儀なくされる中、企業は就労・学習環境を自ら整えることが困難な人々を対象に遊休施設などを開放。不足する生活必需品の臨時生産なども含め、緊急事態時の企業による地域活動が求められるが、人々は、商業主義に陥ることのない事態収束時の潔い「去り方」にも注目する。企業の公共領域への進出によって、調整力の高い地域ほど、企業が営利目的で提供してきた製品・サービスと公共サービスの境目が曖昧になっていき、商業的サービスと公益的サービスを同一事業者が一カ所で提供するようなケースが増えていく。

民間企業の公共領域への関与は進むが、地域の人口に応じてサービスの品質に徐々に格差が生じ始める。企業は、地域に対して発揮する調整力(社会価値)をより可視化させるため、利用する市民の家族構成、職業など属性を把握すると同時に利用の頻度、傾向などを分析。人々は自身のステータスに適したサービスを求めるようになり、企業による緊急時の調整力は等級のついた個人向け保険のように変化していく。避難所の占有スペースや配給物資などに優遇差が生まれ、公共領域の特性であるはずの公平性が著しく薄まっていく中、「変わらぬ商業主義」に失望を感じ、あくまでフェアな地域全体の価値向上を目指し、公共サービスに投資する人も登場する。

企業に求められる「環境に関わらせてくれる仕掛け」

製品のトレーサビリティは単なる情報開示から、人々を製品のライフサイクル全行程に主体的に参加させる入口へと変わる。消費者は、廃棄物や温室効果ガス削減など地球環境を守る活動に協力できるのであれば、商品購入時における価格負担やエコバック持参などの不便をいとわなくなり、環境活動へ関わる機会を与えてくれるよう企業に期待する。企業側は、衰退せざるを得ない産業の従事者を対象とした雇用創出など、社会をサスティナブルに変えていくための取り組みを提示。優良企業イメージを訴求するブランディングから、人々に環境活動への関わりの機会を与えられる企業ブランディングへと移行していく。

企業は環境への負の影響開示とあわせ、自社ならではのリカバリー施策を組み合わせた情報を現代のテレビCMのように日々発信。企業と人々の間の双方向的コミュニケーションのあり方の1つとして定着する。また企業内では、生まれた時から環境意識の高いエコ・ネイティブ世代が企業の中核を担うようになる。もはや「配慮」するというレベルの環境への向き合い方は過去のものとなり、環境を守るための活動が経済を動かす軸となっていく。人々は各企業が参画するエコシステムが地球環境の保護にどのような影響を及ぼしているかを精査し、信頼のおける企業との関係を築く。単独の企業ではなしえない大きなビジョンや、解決し得ない複雑な課題について、企業はその大きさ・複雑さを社会に表明するとともに企業、個人問わず協力を要請。消費者側は今まで以上に自らができる行動を意識・実践し、エコシステムの重要な役割を担うようになる。

Keywords:
レジリエンス(復旧力)、地域防災、企業の社会的責任、ソーシャルインパクトボンド、公共サービスの民営化・再公営化、サービス格差