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Hitachi

Crush & Connect

働く自由、働かない自由
つながる自由、つながらない自由

「いまの気持ちをちゃんと伝えたいからオンラインで会おう」

変化の始まり

学校や企業などリアルな交流の場に制約ができた今、オンラインは対話における主流の場となった。多様なコミュニケーションツールが登場しては競合し、これまで接点のなかった相手とのやりとりも活性化。新たなツールをいち早く使いこなすサイバーネイティブ世代が周囲の賛同を得て、古い考え方のもとに作られた慣習を次々と議論の俎上に載せていく。

公平性と「正しさ」が重視される

学校・企業はオンライン参画を認めることが義務化され、高齢者や心身面で外出や集団生活に制約のあった人々が、アバターを介する方法も含め、学びや働きの場を得るようになる。誰もが不便を感じない環境づくりが求められ、オンラインでの公平性が築かれる。それに伴い、人々は会社に通勤するという従来の「スタンダードな働き方」から解放され、自分なりの働き方を模索し始める。誰もが働きやすい環境が整っていく一方で、そんな環境下でも「働かない」選択をする人々を「怠けている」と見なす人々も現れ、「働く/働かない」の自由は個々の判断に委ねべき、と考える人たちとの間に摩擦を生む。

多様な人々の社会参画が可能になったことで、「サイバー議会」が一般化し、「代表する人」と「支える人」の立場が近くなる。「サイバー」という言葉は、高齢者と若者、健常者と障がい者、登校者と不登校者など社会を二分していた壁を打ち砕き、双方の垣根をなくすための象徴的な言葉となる。一人ひとりが声をあげ、困難な状況にある人に「1対1」で直接手を差し伸べることができるようになることで、人々は自らの発言・行動に意義を感じ始める。一方、何も発言せず無関心で通す「その他大勢」に安住する人の立場は危うくなっていく。

細やかな感情の表し方が新たなマナーに

結婚式、墓参りなど、フォーマルなイベントもサイバー空間に移行する。ただし、サイバー空間では、喜びや悲しみなどの心の動きに深みが伴いづらいため、そのデメリットを補おうと感情に訴えるコンテンツが活用される。「親密さ」の定義も変わる。直接顔を合わせたこともない、既存の交流範囲外の人ともオンラインで幅広く「個」と「個」でつながることが豊かな交遊と見なされるようになる。同じ時間・サイクルで生活する相手とのコミュニケーションの取りやすさが重視され、親密さを左右する要因は距離差よりも時差が大きくなっていく。

オンラインシステムの進化は、自宅にいながら最前列のライブ体験を可能にしたが、個々の体験を画一化してしまう。対面でのやりとり時の微妙な表情や相づちに替わるものとして、スタンプなどのアップデートが行われるなど、オンラインコミュニケーションを豊かにするためのユーザーインタフェースの開発も進むが、ツールによる個々の感情表現もパターン化されていかざるを得なくなる。その裏腹に、センシング機能によって汗をかいている、興奮し呼吸が荒くなっているなど、個人の心身状況が対面以上に伝わりやすくなる。そのような個人の情報をどこまで相手に見せるかについて、権利やマナー、調整方法が形式化されていく。

Keywords:
デジタルコミュニケーション、デジタルデバイド、サイバーネイティブ世代、テレプレゼンス、ノンバーバルコミュニケーション