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新たな協創のカタチ

移動を考える
オンラインワークショップを
開催。
自分ごととして
“問い”を共有するアイデアとは

株式会社日立製作所は、「アフターコロナ時代の移動を考える」 をテーマにしたワークショップを、社会課題解決に特化した人材育成や企画・PR支援を行う会社 morning after cutting my hair, Inc.と共同で開催した。コロナ禍における状況をふまえ、オンライン開催されたこのワークショップには、複数の事業者、学生やスタートアップ、社外のクリエイターといった生活者、そしてデザイナーや研究者を含めた日立関係者など、全3回で延べ73名が参加。「私たちの新しい日常を、どのようなものにしていきたいか」という観点で、移動や都市に関する課題について考えた。

この企画に携わったメンバーの一人、日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ デザイナー 高田将吾氏に、開催の意図や、morning after cutting my hair, Inc.との共催に至った経緯、ワークショップを振り返っての話を聞いた。

(2021年1月15日 公開)

インフラ事業「鉄道」を支える
企業として、
協創パートナーと
ニューノーマルに立ち向かう

高田氏

研究開発グループ
東京社会イノベーション協創センタ
高田将吾氏

日立は総合鉄道システムインテグレーターとして、車両、駆動用制御装置をはじめとして、列車運行管理システム、電力管理システム、情報サービスなど、フルラインナップのサービスを提供して、都市生活において重要なインフラである「鉄道」を支えてきました。研究開発グループでも、次世代の「鉄道」に向けた技術開発やデザインに取り組んでいます。

東京社会協創イノベーションセンタ 価値創出プロジェクトは、デザイナーと研究者の混成チームで、社会課題の解決に繋がる新たな価値を持つサービスやソリューションを、パートナーとの協創活動により創出していくことをミッションとしています。そこで私は、2018年4月の入社からの2年間、パートナーである企業との協創活動を推進してきました。2019年度からは、モビリティチームのメンバーとして、MaaS(Mobility as a Service:マース)の社会実装に向けた顧客協創に取り組んでいます。

2020年、モビリティチームでMaaSに繋がるサービスのコンセプトを創り上げ、次のステップに向かおうとした矢先に新型コロナウイルス感染症が拡大しました。世界的なパンデミックとなり、東京社会協創イノベーションセンタも3月末から在宅勤務を開始、外出自粛により人の移動が制限され、鉄道事業者も大きな打撃を受けることになりました。

コロナ禍であっても、これまで検討をしてきた次世代に向けた新たなサービス開発を継続することは、重要なことです。しかし、パートナーである鉄道事業者が今抱えている、「乗客の減少」「生活者の価値観変化への対応」などの課題を解決しなければ、新しいサービスを提案したところで受け取ってはいただけません。日立としては、「鉄道事業の現在の状況を捉えることが、最優先である」という結論に至り、ニューノーマルモビリティプロジェクトを立ち上げ、活動をはじめました。


ワークショップの参加者全員が
自分ごととして考え、
議論をするために

ニューノーマルモビリティプロジェクトでは、課題解決に向けたワークショップの開催を企画しました。これまでも、新しいサービスやソリューションを考えるうえでワークショップを開催してきましたが、それらはパートナーである企業を主体としたものであり、その企業の沿線地域に対象を限定して実施したものでした。

しかし、今回のワークショップでは「コロナ禍における生活者視点での課題・価値観変化」を捉えたうえで、アフターコロナ・ニューノーマルの世界における移動を考えていくために、複数の鉄道事業者と、その利用者である生活者に参加していただく必要がありました。また、パンデミックによって生じた社会課題の解決は、すべての生活者・企業の共通の願いであり、利害を超えて様々な立場の意見、アイデアをオープンに議論したいと考えました。

複数の事業者や生活者が混在して議論をする場合、実在する地域を事例に取り上げると、その地域につながりを持たない参加者が、自分ごととして議論することは難しくなります。参加者全員に、自分ごととして考えてもらうためにはどうしたら良いか――これを解決するアイデアが、morning after cutting my hair, Inc.によるワークショップで使われた「空想都市 中村市(なごむるし)」でした。

morning after cutting my hair, Inc.とは

田中美咲氏が創設・代表取締役を務める、さまざまな社会課題を解決するための活動を応援する、社会課題解決に特化した人材育成や企画・PR支援を行う会社。morning after cutting my hair, Inc.による本イベントのレポートはこちらから。
https://macmh-inc.com/


リアリティがある架空の都市
「空想都市 中村市(なごむるし)」

morning after cutting my hair, Inc.の社会課題にクリエイティビティを掛け合わせることで、事業パートナーや生活者から共感を得ながら解決を目指すスタイルには、以前から注目をしていました。

2020年5月に、morning after cutting my hair, Inc.開催のオンラインイベント「Art and Creativity for COVID-19」のレポートを読ませていただき、「空想都市 中村市」を知りました。誰も行ったことがなく、誰も知らない、でも、めちゃめちゃリアリティがある架空の都市。これを使えば、参加者全員が自身の生活を想像しながら、自分ごととして“問い”を共有できるワークショップが行えると感じました。さっそく同社へ依頼をして、具体的な企画をスタートしました。

*morning after cutting my hair, Inc.開催「Art and Creativity for COVID-19」イベントレポート
https://note.com/macmh/n/n00cc1c3d0287

「空想都市 中村市(なごむるし)」とは

株式会社地理人研究所の今和泉隆行氏の手によって描かれた、「極限まで現実に近い空想の都市」。サイト上に精緻な地図が公開されており、誰でも自由に閲覧することができるようになっています。
https://imgmap.chirijin.com/


さまざまな人たちと
“問い”を共有する
ニューノーマル・スタイルの
ワークショップ

ワークショップ画面オンラインで開催されたワークショップの模様

morning after cutting my hair, Inc.との共催となったワークショップ「『空想都市中村市都市改善推進課』NONEXISTENT CITY-NAGOMURU:For Our New Normal」(2020年7/31、8/21、8/23実施)自体もニューノーマル・スタイルとなり、全3回ともオンラインで開催しました。ワークショップを数多く企画してきた私たちにとっても、オンライン開催は初めてのことでしたが、すでに経験を積んでいるmorning after cutting my hair, Inc.の協力を得ながら、準備を進めることができました。

ワークショップを振り返りますと、東京だけでなく、新潟、静岡、名古屋、福岡とさまざまな地域から参加いただけたこと、企画から2か月間という短期間で開催できたことは、オンライン開催ならではのメリットでした。今後も、オンライン環境で充実した議論を行うために、最適な参加人数やメンバー構成の検討、「空想都市 中村市」のようなツールの活用など、さまざまなノウハウを蓄積していく必要があるだろうと感じています。

この取り組みを通じて感じたのは、先の見えない時代に立ち向かう時こそ、多様な価値観を持つ人たちと“問い”を共有していく必要があるということです。より多くの人々と“問い”を共有し、共にその“解”を想像することで、次に踏み出す足場が見えてくると私は信じています。そして、分野を超えた視座を持ちながら、社内・社外の様々なステークホルダーと連携し、社会課題の解決に取り組んでいこうと思います。

ワークショップの様子は、11月に開催された「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」内で、「日立が考えるAfterコロナ時代の鉄道のあり方」(オンデマンドムービー出展)※として報告させていただきました。また、ワークショップで見えてきた結果はビジョンとしてまとめ、パートナーへ共有することで、議論のきっかけとして活用してまいります。

「Hitachi Social Innovation Forum 2020 TOKYO ONLINE」

2020年は11月4日(水)~6日(金)にオンラインイベントとして開催。公式サイトでは、2021年3月11日(木)までアーカイブをご覧いただけます(登録制)。
https://hsiftokyo.hitachi/

 プロフィール&愛読書


日立製作所 研究開発グループ
東京社会イノベーション協創センタ デザイナー
高田将吾

入社したころに上司から読んだ方が良いとおすすめされた『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(新潮社)は、今でも印象に残っている一冊です。当時、この本の舞台となる武蔵小杉周辺に住んでいたということもあり、読みながらその情景を鮮明に想像することができました。しかし、そこに描かれる内容は自身の想像を大きく超え、強く衝撃を受けました。自分の見えている社会はあまりにも偏ったものであり、想像力を持って社会と接するべきということを教わったように感じます。この本で描かれた「ほんの少しだけ未来の日本」とは異なる世界になりましたが、社会や公共といった分野での受容性、許容性ということを改めて考えさせられる一冊です。