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Hitachi

日立GE革新軽水炉(HI-ABWR)に向けた放射性物質閉じ込め技術を開発

独自の希ガスフィルタ+有機ヨウ素フィルタにより外部環境への影響を抑制

2024年3月22日
株式会社日立製作所

日立GEニュークリア・エナジー株式会社(以下、日立GE)が開発する革新軽水炉HI-ABWR (Highly Innovative ABWR)*1では従来のフィルタベントシステム*2に加え、希ガスフィルタと、除去効率を向上した有機ヨウ素フィルタからなる放射性物質閉じ込めシステムを導入します(図1中央)。これまで放射性物質の一つである放射性希ガス*3は、放射能を減衰させてから放出していましたが、減衰には多くの機器が必要になるという課題がありました。そこで日立は、放射性希ガスとプラント外に放出される蒸気や水素の極性および分子サイズの差*4に着目し、独自の分離膜により放射性希ガスを分離、除去する技術を開発しました(図1(a))。また、放射性有機ヨウ素*5に対しては、従来のゼオライト系*6の吸着材をイオン液体*7に置き換えることで、除去効率を向上させた有機ヨウ素吸着技術を開発しました(図1(b))。イオン液体による静電相互作用*8を活用することで有機ヨウ素を選択的に除去し、固体のゼオライト系を使用しないことによりフィルタベントシステムの圧力損失が低減され希ガスフィルタ(分離膜)の小型化が可能です。これらの技術を組み合わせることで、外部環境への影響を抑制しつつ、既設炉の限られたスペースでも本システムを導入可能となります。
今後も日立は日立GEと連携し、外部環境への影響を抑制したHI-ABWRの実現を通じて原子力発電の安全性向上に貢献します。

なお、本成果の有機ヨウ素フィルタは、経済産業省・資源エネルギー庁の「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」に係る補助を活用しました。

図1. 放射性物質閉じ込めシステム

図1. 放射性物質閉じ込めシステム

*1
革新軽水炉Highly Innovative ABWR(HI-ABWR):
https://www.hitachi-hgne.co.jp/activities/advanced_reactor/hi_abwr/pdf/brochure_hi-abwr.pdf
*2
フィルタベントシステム: 事故時にプラントを保護するために外部に放出するガスから長期的に影響がある放射性物質のほとんどを除去する設備
*3
放射性希ガス: 事故時に原子力施設で発生するキセノンとクリプトンなど希ガスの放射性物質
*4
極性および分子サイズの差: 分子の電気的な偏りを示す極性の差(蒸気は極性が大きく、希ガスは極性が無い)もしくは分子径の差(希ガスは大きく、蒸気は小さい物質)を利用して分離する
*5
放射性有機ヨウ素: 事故時に原子力施設で発生するヨウ化メチルなど有機物とヨウ素が化学結合した揮発性の高いガス状物質
*6
ゼオライト系: ミクロ多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩の総称。分子ふるい、イオン交換、触媒、吸着などの機能を有する。
*7
イオン液体: イオンのみから構成される液体の塩。電解質、潤滑剤、吸着材などの機能を有する。
*8
静電相互作用: イオン結合、水素結合、分子間の引力など分子間で働く電磁気学的な力
*9
FP: 核燃料が燃焼した際に生じる核分裂生成物。主要な核分裂生成物としてヨウ素、セシウムがあり、放射性希ガスであるキセノン、クリプトンも含まれる。

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ

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