PROJECT INTERVIEW 04
イタリアの鉄道会社向け
業務効率化プロジェクト
A / データサイエンティスト
入社年 2021年

PROJECT INTERVIEW 04
A / データサイエンティスト
入社年 2021年

IT、製造、物流など多様な事業を展開している日立製作所なら、幅広いデータや課題からデータサイエンスの知見がいくらでも得られるはず――。そんな思いでデジタル事業開発統括本部に加わったAさん。生成AIやAIエージェントを活用したソリューション開発などに携わっているほか、データサイエンティストとして工場などの品質改善に向けた分析業務で活躍、なかでも最も大きな成長につながったのがグループ会社であるイタリアの鉄道会社の車体溶接工場の業務効率化プロジェクトだったという。
イタリアにある鉄道車体溶接工場では、とある検査工程に時間を要しており、生産性の向上が急務だった。
日立グループ内の溶接のスペシャリストへのヒアリングや国内溶接工場の視察、現地工場の関係者とのオンライン会議を重ねた上で現地へ。これまで培ったデータ分析スキルと徹底したコミュニケーションで得た現場ノウハウを掛け合わせ、最適化された検査体制を提案した。
現場の実情に即した実装・持続可能な提案を行うには、何よりお客様の現場での業務内容を熟知することが第一歩となります。今回の場合、私は溶接の知識をほとんど有していなかったので、そこから短期間で現地工場の人たちと同程度まで溶接技術に関するリテラシーを引き上げるのに苦労しました。イタリアの工場の製造部門や品質部門などと何度もオンライン会議を重ね、記録される各種データの意味はもちろん、「溶接工程における不良はどうやって起こるのか」「その原因を探る上でどんな変数に着目すればよいのか」「どんな時にどんな数字の変化があるのか」など、とにかく粘り強くヒアリングしました。
そうして溶接技術に関する知識や現地工場の状況をインプットした後、溶接データを分析するわけですが、やはりデータを見るだけでは状況の把握に限界があります。そこで、日立グループの溶接技術のスペシャリストたちと議論を重ね、日本の溶接工場の視察、その上でイタリアの現地工場を実際にこの目で見て、データ分析をもとに検査工程を検証しました。その結果、従来は経験則に従ってかなりの手間と時間をかけて行われていた検査を取り止め、「この指標がこれ以上の数値になった場合のみ検査をすればよい」という適切な基準を設けることができたのです。
ただ、現地の関係者とお互いに母語ではない英語でコミュニケーションを重ねるのはちょっと辛かったですね。こちらがやろうとしていることや工場の実情などを分かりやすく伝える必要があったので、三次元可視化やアニメーションなどを用いるなど、折に触れてアウトプットを工夫しました。
2025年3月、私はイタリアにあるグループ企業の鉄道車体溶接工場の業務改革プロジェクトにデータサイエンティストとして参加することになりました。発端はその工場から「車体溶接後の検査工程を効率化したい」という課題が寄せられたこと。不良率は限りなくゼロに近いのに、検査に手間と時間をかけ過ぎているのが実情で、その検査をどの程度短縮すればよいかを検討するためにデータサイエンティストによる因果分析が必要となり、これまでの経験や業績から私に声がかかったのです。
このプロジェクトは日立グループのさまざまな部署からスペシャリストを集めて社会課題に挑む取り組みのひとつだったため、チームには私のほか、日立グループの溶接技術のスペシャリストが3人アサインされていました。プロジェクト期間はわずか3カ月、まず3・4月に現地工場側とのオンライン打ち合わせや国内の溶接工場の見学、溶接技術のスペシャリストへのヒアリングなどを重ねた上で5月にイタリアへ行き、現地工場で一気にデータ取得と可視化、分析を実施。そして、期間内にデータ分析に基づいて検査時間を短縮できる明確な根拠を示し、具体的な改善手法を提案することがプロジェクトのゴールでした。

今回のプロジェクトにおける一番の難問は、実は「不良データが存在しない」ことでした。もし不良データが一定程度あれば、それを分析してどの程度の検査をすればよいかの敷居値を出すことができたかもしれませんが、そもそもデータが取れないほど不良率が低かったのです。この点でも、日立グループの溶接のスペシャリストたちに話を聞けたことは非常にありがたかったです。
それまで私はデータを起点としたアプローチを基本としていたのですが、テーマとなっている分野のスペシャリストの実感や経験、事例などをヒアリングすることでこんなにも実態に即した提案内容にできるということに驚きました。さまざまな分野・領域のスペシャリストが揃っているのが日立の強みですから、今後はそういったスペシャリストの知見を織り込むことをさらに意識してデータサイエンスに取り組んでいきたいと思います。
先述した通り、このプロジェクトでは「不良データが存在しない」ところからいかに最適で必要十分な検査体制を導き出すかという難題に挑みました。今後、同様のケースが出てきた際には今回の知見を大いに生かせると思うので、ほかの工場やグループ会社、さらには広く溶接業界に向けてアプローチしていきたいと考えています。また、イタリアの関係者へのプレゼン用に開発したデータ可視化アプリが現場から好評で「今後もぜひ使いたい」と要望をいただきました。これを受け、単なる可視化ツールではなく、より洗練された分析機能を持つダッシュボードとして開発し、実装に向けて提案していく予定です。
このようにプロジェクトからは必ず次につながる知見やノウハウ、アイデアが得られます。お客様のビジネスの躍進や私自身の成長にどう生かすか、考えるだけでもワクワクしますね。
※掲載内容は取材当時のものです