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企業情報環境への取り組み

森との共存を考えた「協創棟」建設

日立製作所 中央研究所
2020年度

1.敷地概要

日立製作所中央研究所は、東京都国分寺市の市街地にあり、最大東西約600m・南北約550mにわたる約22haの広大な事業所です。敷地周辺は、奈良時代に聖武天皇が全国に建立した国分寺の一つ、武蔵国分寺の旧地にあたり、その遺跡は研究所の西南約1kmに今も残っています。また構内にはハケと呼ばれる国分寺崖線があり、その湧水は多摩川水系である野川の源流の一つになっています。この自然豊かな構内に2019年、オープンイノベーション拠点「協創棟」が建設されました。

空から見た中央研究所
空から見た中央研究所
協創棟
協創棟

2.計画地(協創棟)周辺の状況

樹高20m以上の大景木も数多く残り、樹齢百年余のケヤキやヒマラヤスギの大木なども既存の棟周辺に配され、緑に囲まれた豊かな環境を生み出しています。また計画地南側には芝生広場が広がり、広場の先の崖線下には大池が豊かな水を湛えています。

計画地(協創棟)周辺の状況

3.生態系への配慮

(1)既存樹木への影響の最小化

創業社長の「よい立木は切らずによけて建てよ」という意志を受け、構内の樹木は極力守られました。その精神は現在も継承され、武蔵野の面影をとどめた研究環境が保持・整備されてきています。「協創棟」の建設にあたり、これまで大切にしてきた武蔵野の3万本の原生林、野川源流の湧水、縄文時代の集落遺跡などをできる限り残すことを第一に計画しました。
計画地の全樹木を調査・プロットした上で、既存樹木を極力伐採しない配置設計を実施し、建物のボリューム分節によって森へのインパクトを低減させました(下図参照)。やむを得ず伐採した2本のケヤキは、豊かな自然環境を感じながら心地良く仕事をするための環境づくりとして、屋外テラスのテーブル天板などに利用しました。

破線が既存棟。既存樹木を避けた「3つの箱とそれをつなぐガラスの箱の集合体」からなる協創棟。建物を分節することで生まれた隙間を森と建築の中間領域と捉え屋外テラスに活用。既存棟に近接し過ぎており、工事で止む無く伐採した大木は赤丸の2本。
破線が既存棟。既存樹木を避けた「3つの箱とそれをつなぐガラスの箱の集合体」からなる協創棟。建物を分節することで生まれた隙間を森と建築の中間領域と捉え屋外テラスに活用。既存棟に近接し過ぎており、工事で止む無く伐採した大木は赤丸の2本。

(2)外構(ラウンドスケープ)におけるアプローチ

森との共存をめざし、既存の森への負荷を最小とするエコロジカルな観点で計画、実施しました。

緑に囲まれた棟周辺と「計画地

(3) 湧水・地下水の保全

研究所敷地を含む一帯の地形は多摩川がつくった河岸段丘の構成層である礫層とそれを覆う関東ローム層からなる「国分寺崖線」を形成しています。国分寺市ではこの「国分寺崖線」を重要な地域資産と位置付け、まちづくり条例において緑地の保全、景観の形成、湧水の保全及び活用など独自基準を設け、緑豊かな崖線の保全と再生に取り組んでいます。
敷地内にある「大池」は、敷地内に湧き出る数ヵ所の湧水を利用して1958年に作られたもので、貴重な野川の上流部に位置する水源の一つとなっています。

国分寺崖線と主な湧源
国分寺崖線と主な湧源
国分寺崖線付近の地質断面模式図
国分寺崖線付近の地質断面模式図

計画地の建築物に係る基礎工事おいては、湧水槽に悪影響を与えないためと、地下に埋蔵されている遺跡を残置保存するために地盤掘削は極力行わず、既存棟の地下躯体を新棟の支持基盤として再利用する計画とし、国分寺市の湧水等保全審議会との協議を行いながら実施してきました(下図参照)。

また、基礎工事実施に当たっては観測井戸をあらたに設置し、工事着手前、工事期間中、工事完了後(2年間)の各段階で水質・水位調査を実施しています。

協創棟基礎工事
協創棟基礎工事

4.協創の森カンファレンス

「協創棟」の建設・運用にあたっては、協創棟を利用する従業員の理解を深めることが大切だと考え、「協創の森カンファレンス」と称する全体協議の場を数回にわたり設定しました。カンファレンスでは、既存樹木を傷つけないための鉄骨組立や地下水保全などの施工配慮、樹木の形状を維持したままの移植作業、やむを得ず伐採した2本のケヤキの利用などの説明と意見交換を行いました。これにより、従業員が生態系保全の重要性について理解を深める良い機会となりました。