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大きな組織への信頼が全体をつなぐ社会

近い将来、個人の活動内容を含むさまざまな情報が記録・管理・活用されるようになるといわれています。この社会では、人と人、人と組織の関係がいまとは変わることが考えられます。そこで、TRUST/2030ではこれらの関係の異なる3つの社会像を設定し、そこで生まれる新しい「信頼のかたち」を探索しました。そのひとつ"Centralised & Curated"の社会では、中央となる大きな組織を信頼し、自分の大切なデータを託していく信頼のかたちを描きます。
企業や国家による個人情報を活用した便利なサービスはますます増えていき、人々は利便性と引き換えにサービス提供者に対して日々の行動データを渡す生活が当たり前になっていきます。こうした状況は日々の生活を送る街と市民の間にも起こり始めるでしょう。情報収集のため、街のいたるところにセンサーが配置されるようになり、あらゆる場面で個人のデータは収集されていきます。そうした中で、許可なくデータが収集されているケースが明らかとなれば、人々は自分のデータが見えない所で利用されることに不信感を抱くようになってしまいます。
このような社会では、どのようにして街のサービスを運営する大きな組織に対して、自分の大切なデータを託せるような信頼関係を築いていくのでしょうか。

少しずつ価値を実感しながら、やがて多くの大切なことを街へ託していく

受けたいサービスにあわせて、自分で提供する情報をひとつずつ選択する

自分の行動データの何が街に提供され、何に活用されるのかを市民が把握できない状態で、街を信頼できるでしょうか。Your Reliable City は、はじめから市民のデータを大量に取得するのではなく、限られたデータを少しずつ受け取り、その効果をわかりやすい形で還元することで、データ活用を通じた市民との信頼構築を大切にする街です。
はじめに市民は位置センサーを受け取ります。このセンサーを使って、どのようなデータを街へ渡すかは、受けたいサービスにあわせて市民がひとつずつ選びます。常に持ち歩く必要があるスマートフォンと違い、位置センサーだと情報を出したくないときには、センサーを家に置いて外出することもできます。

自分の託したデータがわかりやすい形で還ってくる

Your Reliable Cityでは、最初は個人を特定できない限られたデータ(例えば、位置情報と年齢)を取得します。位置センサーを持ち歩くことで街の信号や標識が市民のデータをもとに切り替わり、市民は安全を手に入れます。自分の渡したデータが、「安全」というわかりやすい形で還ってくる効果を実感することで、人々のなかに街に対する信頼が徐々に芽生えていきます。
市民と街との間の信頼が築かれるのにあわせて、市民が街に提供する情報を少しずつ増やしていくようになります。また、位置センサーのレシーバーを設置するお店が街中に増えていくことで、市民の位置情報が細かく取得され、例えば、行きつけのパン屋に行こうとすると、ちょうどいい時間にバスが走るなど、移動が次第に便利になっていきます。「安全」から「便利」へと、市民が実感できる効果の質が少しずつ変わってくるのです。

より多くのデータを託せるようになることで、利便を超えた人々のつながりが生まれる

こうして市民と街との間の信頼が築かれはじめ、Your Reliable Cityには街を巡回するロボットが現れます。ここでは、市民は名前や交友関係など、プライバシーにかかわる情報も街に託し始めています。それができるほどに、市民と街との間の信頼関係が育ってきているということです。すべての市民と「知り合い」のロボットは、位置センサーのデータをもとに、市民同士のコミュニケーションを促し、コミュニティが良い状態になるよう働きかけます。ロボットをきっかけに人々のつながりが強くなることで、街はより安心できる場所に変わるかもしれません。
どのようなデータをどのくらいのペースで提供し、どんなサービスを受けることができれば、市民は街という大きな存在に信頼を抱くことができるでしょうか。市民が街に対して大きな信頼を寄せることに、市民や街のデータが貢献できたとき、人々のつながりはより深まり、街はもっと便利で住みやすい場所になるはずです。やがて、自分たちの街に対する意識も変わっていくのではないでしょうか。