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新たな協創のカタチ

シンポジウムタイトル

Z世代 ×日立研究員 協創ワークショップ
「世代を越えて描くトランジション」を開催
未来の担い手が望む2050年とは?
対話の場に寄せる研究員の想い

2022年11月26日、日立製作所 は「Z世代に寄り添うのではなく、未来を一緒に作る」ことを目的としたワークショップ「世代を越えて描くトランジション」を開催。企画の狙いと、ワークショップで用いられたトラジションのデザインという手法について、企画に携わったメンバーの1人、日立製作所 研究開発グループ プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任デザイナーの池ヶ谷和宏に話を聞いた。

(2023年5月29日 公開)

Z世代に寄り添うのではなく、
未来を一緒に作る

学生と日立社員の協創ワークショップ「世代を越えて描くトランジション」は、日立製作所 研究開発グループに発足した「プラネタリーバウンダリープロジェクト」が開催しました。

ワークショップ画面ワークショップは日立製作所 研究開発グループの「協創の森」(東京・国分寺市)で開催された

プラネタリーバウンダリー(Planetary Boundaries=地球環境の限界)はもともとスウェーデンの環境学者、ヨハン・ロックストローム博士らが提唱した概念で、「人類が地球上でこれからも安全に生存するための限界点」を考察し、昨今の気候変動やSDGsにも多大な影響を与えています。

日立製作所 研究開発グループもまた社会イノベーション事業を実現すべく、脱炭素の実現・循環型社会の実現・生物多様性の回復などの環境課題の解決をめざし、技術開発や顧客協創、将来像の検討に取り組んでいます。

研究開発グループが扱う環境関連のテーマにおいて、かつては研究開発や顧客協創が個別に活動しており、ハブになる組織が存在しませんでした。そこで2020年4月、環境関連のビジョン発信と研究戦略策定を一貫して担う『環境プロジェクト』が発足。2022年4月には日立製作所が発表した中期経営計画で『プラネタリーバウンダリー』という言葉が対外的に発信され、チーム名も『プラネタリーバウンダリープロジェクト』へと刷新されました。

我々が担当する業務は、技術研究の戦略立案やビジョンの策定・発信などが主ですが、並行して、日立の考える望ましい“トランジション”(=移行・変化)を深掘りするために、さまざまな領域の方との対話を促進し、その成果を公開する活動も行なっています。特にトランジションを核とした活動では、青年層とともに未来について考える機会が多く、昨年度中も複数のオンラインフォーラム等を通じ、学生たちとの対話を重ねました。今回のワークショップもその延長線上にあります。

企画の狙いは「Z世代に寄り添うのではなく、未来を一緒に作る」ことです。エネルギー問題や社会課題解決への強い関心を持つ大学生・大学院生が全国から集まり、日立からはプロジェクトメンバーに加え、普段は別のプロジェクトに従事する若手研究者も参加。立場も世代も活動テーマも実に多様なメンバーが集いました。

大人が考える2050年と学生が考える2050年は「違う姿をしている」

日立製作所は2021年11月、イギリス グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約 締約国会議)に、日本企業では初となる「プリンシパルパートナー」として参画しました。また翌22年11月、エジプト シャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27でも、ジャパンパビリオンにて展示・登壇し、プロジェクトメンバーもここに参加しています。

COP27で示された世界の温室効果ガス削減に向けた取り組みは『これまで大量のCO2を排出してきた先進国が、CO2排出量が比較的少なかった新興国に協力を要請する』という構図です。もちろん日本もそんな先進国の一つに入りますが、実は日本国内に生きる“若者”と“大人”の間にもこれと似たようなギャップがあるのではないでしょうか。
すなわち、私たち大人がこれまで排出してきたCO2が原因で、若者たちが脱炭素などについて考えなければいけない状態になっています。2050年の日本がどのような社会になっているのか。大人が考える2050年と、若者が考える2050年は必ず違う姿をしている。ワークショップでは、参加いただいた学生たちに今思い描いている未来の世界を聞きました。

未来を描くアプローチ “トランジション” をデザインする

今回のワークショップにおける「将来像の検討」では、カーネギーメロン大学のテリー・アーウィン氏が提唱するトランジション・デザイン(Transition Design)の手法をベースに、日立独自の解釈を加えたフレームワークを設計しています。
社会人・学生の垣根を超えた対話から、まず現在の社会システムに対する問題意識を共有し(STEP1)、理想的な社会システム・社会インフラなどサステナブルな将来像を描く(STEP2)。そしてSTEP1からSTEP2へトランジションするために考えられる障壁と、それを乗り越えるためのアイデアを議論する(STEP3)ことで、将来像の解像度を高めていきます。

テリー・アーウィン氏が提唱するトランジション・デザインに独自解釈を加えたフレームワークテリー・アーウィン氏が提唱するトランジション・デザインに独自解釈を加えたフレームワーク

コロナ禍で学業に専念した学生たちは、私たちとはまったく異なる発想を持っています。今回のワークショップは、アウトプットの実現可能性よりも、Z世代独自の観点で捉えた方向性・キーワードが生まれてくることを期待して設計しました。

将来を担う世代と“責任を共有”しながら対話したい

ワークショップの参加メンバー(総勢20名)を、日立の研究開発テーマに深く関連する、移動・エネルギー・衣食住の3チームに編成。

ワークショップで取り上げた三つのテーマワークショップで取り上げた三つのテーマ

参加メンバーが事前に用意した「課題カード」を起点にした問題意識の共有からスタートしました。会場内のホワイトボード一面にはたくさんのカードが掲示され、各々が自分の課題カードを前にプレゼン。メンバーはプレゼンに対する自分の気づきを付箋でメモし、それらを起点に「望ましい2050年」のビジョンを議論していきます。

課題カードには「日常的に問題視すること・疑問に思うこと・取り組んでいること」を写真とテキストで各自が表現課題カードには「日常的に問題視すること・疑問に思うこと・取り組んでいること」を写真とテキストで各自が表現

ワークショップの後半では、自分たちにとって望ましい未来像「2050年に望ましい社会インフラ」について、政治・経済・テクノロジー・社会・自然の5つの観点から考えていきました。このプロセスの中で見えてくる「現状の社会インフラ」を「理想とする社会インフラ」にしていくまでにある“ギャップ”こそが、次なるソリューション開発のヒントに繋がっていきます。
今回のワークショップでは、参加者それぞれの立場に関係なく自由闊達に意見・疑問が引き出され、特に学生たちが日常生活・学生生活から感じている「自分ゴト化」した問題意識・課題を社会人に忌憚なくぶつけることを期待しました。

COP26に参加したとき、ある高校生が日立ブースまで一人でやってきて、再生エネルギーについての疑問をぶつけてくれたことがありました。再エネのプラスの面だけでなく、難しさやデメリットまで捉える思慮深さにも驚きましたが、何より彼の眼差しは、大人が顔負けになるほど真剣そのもの。そんな若者の姿を見たら、自分たち大人も行動を起こさないわけにはいきません。将来を担う世代と地球環境の回復や現在の暮らしの変革のあり方について“責任を共有”しながら対話を行うことが、とても大切だと感じています。

ワークショップでの対話の内容やZ世代の学生が考えた「望ましい未来像」については、下記のレポートもしくは「Linking Society」でお読みいただけます。

レポート:世代を超えて描くトランジション

Linking Society記事:

プロフィール

池ヶ谷 和宏

池ヶ谷 和宏
日立製作所 研究開発グループ サステナビリティ研究統括本部
プラネタリーバウンダリープロジェクト 主任デザイナー

日立製作所入社後、エネルギー、ヘルスケア、インダストリーなど多岐にわたる分野においてUI/UXデザイン・顧客協創・デザインリサーチに従事。日立ヨーロッパ出向後は、主に環境を中心としたサステナビリティに関わるビジョンや新たなデジタルサービスの研究を推進している。

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