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株式会社ノークリサーチ

第5回は「文書管理」を取り上げる。もはや文書を「紙」だけでなく「電子化」して、管理、活用することが前提になっていることは言うまでもない。紙文書ならばカテゴリー別に分類、ファイリングし部署ごとの所定の棚やロッカー、もしくは専用の倉庫などに保管することになる。一方の電子文書ならば特定のファイルサーバやもしくはパソコンにカテゴリー別のフォルダを用意して階層化して保管することが可能となる。そこで両者に共通する管理とは、必要になった際に迅速に検索し該当文書を取り出せるよう秩序立てて整理整頓すること、一言で言えば「アーカイブ化」である。

さて、この基本作業を再確認しただけで、より効率的なアーカイブ化が可能なのは電子文書であることは明らかである。だが中堅企業における文書の電子化(=e-文書化)とペーパーレス・オフィス化は思いのほか進んでいない。 「e-文書法」による文書保存の規制緩和の追い風や、ベンダ各社が用意する「文書管理ソリューション」といったe-文書化の促進剤が存在するにもかかわらず現実は十分な活用に至っていない。

そこで以下でe-文書法を再度捉え直し、同法を活用したe-文書化が、中堅企業のみならず企業全般にもたらすメリットを紹介していきたい。

e-文書法は文書保存の規制緩和であることを認識すべき

2005年施行のe-文書法は、法は法でも、昨今のブームであるコンプライアンス対応とその準備を迫られるわけでない。 紙文書の保存コスト削減とオフィス内のペーパーレス化を推進しようという、政府主導のe-Japan戦略の一環として施行された法律であることを確認してもらいたい。

図1.e-文書法とは

もともと1998年施行の電子帳簿保存法により 終始コンピュータで作成・処理している文書の電子保存は認められている。e-文書法では、帳簿書類や領収書、注文書など従来紙での保存を義務付けられていた文書をスキャナーなどで電子化して保存することや、取引先から受け取った手書きの文書を電子化して保存することが認められるようになった。もちろん保存が認められるだけでなく、紙媒体の書類と同等の法的な執行力が認められるようになったのである。

e-文書法施行で電子保存が認められた書類は具体的に、契約書、領収書、見積書、納品書、受注文書などの税務関係帳簿書類、カルテ、処方箋といった医療関係書類、定款、株主総会議事録、営業報告書等の会社関係書類などだ。ただし税務関係帳簿書類の中には条件が設定されており、損益計算書や貸借対照表のような決算書類や帳簿、定型的約款がない契約書、3万円以上の領収書などは依然紙での保存が義務付けられている。

ところで、同時期に個人情報保護法の施行があったことで、e-文書法は若干スローダウンの感は否めない。やはりコンプライアンス対応が必至であった個人情報保護法に関しては、ベンダ側も多くのソリューションを用意し、現在もビジネスとしては活況を呈している(しかし情報漏洩は後を絶たないが)。

ようやくe-文書法がベンダ側から注目され、ソリューションが充実してきたのは内部統制の登場からだ。実は文書管理は前回のコラムで取り上げた内部統制と深い関係を持つ分野なのである。つまり、J-SOX法における内部統制の構築には、業務プロセスの文書化作業というものが重要視されている。また文書の提出義務が課されない企業でも、例えば親会社や関連企業からの要請によっては適宜ドキュメントを提供しなければならなくなる。その際適切な文書管理がなされていないと、提出までにタイムロスが生じるなど好ましくない状況に陥ることになる。

保管ルールを設定し、e-文書化のメリットを享受

e-文書法は差し迫ってコンプライアンス対応を求められるわけではなく、むしろ企業の任意によるために、対応への強いインセンティブが働くことはなかった。しかし、次の点に留意し、適切なソリューションを選択することで、e-文書化によって確実なメリットを享受することができる。

e-文書化を成功させるには、「文書保管のルール設定」が最も重要となる。内部統制における業務の効率化を実現するためにも、紙文書中心の業務フローを見直し、紙文書では困難な「一元管理」を行うための取り決めを社員で共有する必要がある。でないと、「文書が個人で別々に管理されて、他人が把握出来ない」「重要書類が一括管理できておらず、必要なときにすぐにみつからない」「個人情報記載文書の把握が出来ずにコンプライアンスに反する」「バックアップ、改ざん防止、アクセス管理などセキュリティ対策が不十分」などの課題が逆に生じることになってしまう。

文書管理システムを導入するということの前にすべきことは、まず文書管理のルール化や社内体制の整備が不可欠である。誰が(個人か代表者か)、どこに(特定のパソコンか共有サーバか)、どういうタイミング(発生時か一日の終わりかなど)でなどといったe-文書保管のルール設定を行ったうえで初めて各種のソリューションを活用できる準備が整ったことになる。文書管理ソリューションは一般的に次のようなメリットもたらすことになるだろう。

図2.e-文書化のメリット

文書所在の容易な把握とアーカイブ化

冒頭に書いたように紙文書は、部署ごとに分散して保管されていることがほとんどだ。それをe-文書化することで、業務上必要な書類から法的な重要書類までルール化して一括して保存、閲覧することが可能になる。 つまりすべての社員が目的の文書に容易にたどりつくことが出来る。またネットワークを介して社外からの文書の閲覧も容易になり、業務効率の向上にも繋がる。

内部統制における業務効率化

日々、社外からの各種申請や「ハンコ」だらけの稟議書が社内を飛び交っている状況になっていないだろうか。 こういった業務もe-文書化ソリューションを活用することで、スムースで的確、確実な申請、稟議、電子署名が可能となり、それまでのデータ入力作業から受け渡しまでに割いていた手間と時間を大幅に効率化することが可能となる。

セキュリティ強化とコスト削減

e-文書保管用のサーバを堅牢なデータセンターに設置することでセキュリティ強化、地震などの不測の災害から重要文書を守ることが可能となる。 社内のサーバで保管するにしてもアクセス制御などの専用のセキュリティソフトによって管理が可能であり、ストレージ製品と組み合わせてバックアップをとることも可能となる。 また紙文書の保管に使用していた物理的なスペースを多目的に有効活用できるようにもなる。同時にこれは保管コストの削減にも繋がる。コスト面で言えばe-文書ならば当然遠隔地への輸送コストも大幅に削減される上、個人情報保護法との関連で、機密文書や個人情報記載文書の管理・廃棄に要したコストも削減される。

企業内検索システム構築

上記のステップをパスしたら、次は「検索機能」を強化することをお薦めしたい。それを実現するのが「企業内検索システム」である。 検索対象のヒット率と検索速度がこれまでの検索システムと比較しても格段に向上している。e-文書化を徹底することでナレッジマネジメント、つまり企業内に蓄積された情報の有効活用という視点で今注目を浴びる企業内検索システム構築への下地を整えられる。

最後に

今企業は市場経済に対して負うべき責任が、J-SOX法施行をきっかけに強く敏感に求められる時代である。それは、裏を返せば一企業が市場経済に与えるインパクトがこれまで以上に大きくなったということでもある。 訴訟問題や説明責任などの負のインパクトを最小限に防ぐためにも、迅速な情報の摘出と情報の正確性の確保といった点でe-文書化が果たす役割が大きいことは論を待たない。

何よりe-文書化をきっかけにして業務効率の向上を図ることで、より良い商品やサービスを生み出すといった正のインパクトを最大限に引き出すことも目標に据えて頂きたい。

特記事項

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