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メインフレームを「変化即応型」のオープンシステムへ
〜既存資産を活かす日立オープンミドルウェア〜

顧客ニーズの多様化やIT革新を背景に、さまざまな業務分野で経営環境が激変しています。こうした中、経営の根幹を担う基幹システムにも、変化に対する迅速さと柔軟性、TCO(Total Cost of Ownership)削減への視点が強く求められる時代となりました。そこで、「名古屋地区生コン卸商協同組合」と、そのシステム構築を担うSI企業「株式会社シーライン」は、変化に即応できるIT基盤の確立をめざし、メインフレームからオープンシステムへの移行を決断しました。既存資産の有効活用を図るため、移行性が高いCOBOL2002やXMAP3といった日立オープンミドルウェアを活用。現行のビジネスロジックを活かし、実質3か月という短期間で、HA8000プラットフォームへのマイグレーションを実現しました。

メインフレームからPCサーバへのダウンサイジングを図る

森正三氏の写真
名古屋地区生コン卸商協同組合
理事長
森正三氏

村田昭雄氏の写真
名古屋地区生コン卸商協同組合
総務部長
村田昭雄氏

武知俊男氏の写真
株式会社シーライン
代表取締役社長
武知俊男氏

名古屋地区において、建設資材として不可欠である生コンクリートの共同販売事業を展開する「名古屋地区生コン卸商協同組合(以下、名古屋卸商協組)」。そのモットーは、「組合員とお取引先との密接な連携を維持することで、良い品質の生コンを安定供給することにあります」と、理事長の森正三氏は語ります。

同組合では、ユーザーである商社やゼネコンと、約40社の組合員との間で交わされる受発注業務を、これまで日立のメインフレームMP5400モデル110(VOSK/FS)で処理してきました。しかし、システム保守費用の低減やエンドユーザーの操作性向上、さらにはビジネス変化に柔軟に対応するIT基盤の確立も視野に入れたオープンシステムへのマイグレーション(プログラムやデータの移行・変換)を決断。同組合のシステム構築を担当してきた「株式会社シーライン(以下、シーライン)」とともに、2004年12月から大規模なリニューアルプロジェクトに着手しました。その経過を、名古屋卸商協組の総務部長である村田昭雄氏は、次のように振り返ります。

「オフコンからメインフレームへと長年受け継いできた日立さんのシステムですが、導入してすでに8年を迎えたことや、クライアントであるWindows®95端末の老朽化も含めて、早急に新しい基盤へと移行する必要性を感じていました。そこに、取引先での商品コード体系が4桁から6桁に変わるタイミングが重なったこともあり、信頼性や性能面でも進化が著しいPCサーバへと、思い切ってダウンサイジングすることにしたわけです」

プロジェクトのポイントは大きく4つあったと語るのは、シーラインの代表取締役社長武知俊男氏です。

「まず1つ目は既存資産を活用すること。ハード老朽化への対応とメンテナンスコストの削減を図るため、コストパフォーマンスの高いオープンシステムに移行するというのは当然の判断としてありました。しかしプログラムの多くは、新たなコード体系への対応を除けば、現時点では変更する必要がまったくありませんでした。そこで既存のロジックや操作性も含めて、いかに短期間でスムーズに新環境へと移行できるかが最も重要なポイントとなりました。

2つ目はオープンならではの柔軟性と拡張性を活かし、取引先との電子商取引やEDI (Electronic Data Interchange:電子データ交換)などの要望にも積極的に応えられる環境を整備すること。3つ目は、これまでオペレーター集中型だった入力業務を改善し、エンドユーザーにも業務を分担させること。4つ目はPCサーバでもメインフレームと同等の信頼性と可用性を確保するため、サーバの分散化やディスクのRAID化を図ることでした」

既存資産を活用できるCOBOL2002とXMAP3

神谷尚人氏の写真
株式会社シーライン
システム部
システム営業課課長代理
神谷尚人氏

杁本敦志氏の写真
株式会社シーライン
システム部
課長代理
(いりもと)
杁本敦志氏

システムのリニューアルに際し、最もシビアな要件となったのが移行期間でした。「2005年4月からの稼働を目標として、残された期間は4か月にも満たなかったのです」と語るのはシーラインシステム部システム営業課課長代理の神谷尚人氏。そこでシーラインは、新たなプラットフォームとして選定されたHA8000( Windows Server™ 2003)へのマイグレーションツールとして、「COBOL2002」や「XMAP3」といった日立のオープンミドルウエアをフルに活用しました。

COBOL第4次国際規格にいち早く対応したビジネスアプリケーション開発環境「COBOL2002」は、VOSK/FSなどのメインフレーム上で稼働しているCOBOL85資産を、ほぼそのままの形でオープン環境へ移行できる機能を提供しています。これによりシーラインは、対話系、バッチ系双方のアプリケーション移行作業を大幅に効率化することに成功したのです。

また、画面系の移行で威力を発揮したのは「XMAP3」でした。メインフレームで使っていた画面定義を流用できる「XMAP3」の活用により、従来のオンライン業務と同様のCUI(Character-based UserInterface)画面をオープン環境へとスピーディにリライト。「お客さまからのご要望どおり、画面レイアウト、カラー対応およびキー入力のタイミングまで、従来環境と互換性のあるインタフェースを実現しました」と、シーラインシステム部課長代理の杁本敦志氏は笑顔で語ります。

その一方、操作性や保守性の向上に関しては、見えない部分で新たな工夫がこらされています。

「例えば漢字入力の項目にカーソルが来ると自動的に日本語入力が起動されるとか、項目のデータ入力が終了すると自動的に次の項目へカーソルが移動するといった、これまでのオンライン画面にはない機能を加え、エンドユーザーの操作性向上を図りました。これはXMAP3を使うことで簡単に実現できる機能です。また、VOSKですとOSの標準機能でバッチ処理などのメッセージログを自動取得できるのですが、PCサーバではそれが難しい。そこでXMAP3で作ったメニュー画面の裏側で走っているジョブを、端末単位でロギングする仕掛けを提供し、これまでと変わらない保守性の維持に努めています」(シーライン杁本敦志氏)

画面例
画面例


入力端末として利用されているFLORA 310W

EURでメインフレームの連続帳票も単票化

マイグレーションの1つのきっかけとなった商品コード体系の変更も、COBOL2002とXMAP3の活用で問題なくクリアすることができました。

「今回、4桁から6桁に変更されたのは、プラント側に発注する際に必要となってくる、さまざまな用途別に配合パターンの異なるセメント商品のコードでした。プログラム変更や画面定義自体は容易な作業でしたが、どうせなら、従来は選任のオペレータが行っていたコード入力ではなく、現場の営業スタッフが日常的に使っている配合パターンで入力できるようにしようと、インタフェースを変えたのです。これにより、オペレータの手をわずらわせることなく、営業サイドのPCからも引き合いや見積りの入出力がダイレクトに行える環境が実現しました」(シーライン神谷尚人氏)

さらに、豊かな表現力で定評のある帳票システム構築支援「EUR」の活用により、メインフレーム時代の連続帳票を、管理しやすくコストも安いA4サイズの単票化にシフトすることができたのも、TCOの削減を実現する大きなポイントとなりました。

「従来はプレ印刷したB4サイズの連続帳票を20種類以上も用意して、さまざまな帳票印刷を行っていましたが、このコストと管理の手間がかなりの負担となっていたのは事実です。それがEURの導入によって、ほとんどすべての帳票をA4サイズの普通紙印刷に切り替えることができました。ランニングコストと保管の手間が大幅に減ったのは、非常にうれしいメリットです」(名古屋卸商協組村田昭雄氏)

こうした日立オープンミドルウェアの活用と、顧客業務を知り尽くしたシーラインのSI力によって、新システムは予定通り2005年3月にカットオーバー。テストを経た4月から本番稼働を開始しました。


従来のメインフレーム帳票とEUR帳票の比較。
複雑で精密な罫線も表現できるEUR帳票で、コストと管理負担が大幅に削減した。

期待以上の処理性能とコストメリット

加[トウ(藤の異体字)]健司 氏の写真
名古屋地区生コン卸商協同組合
総務部
加[トウ(藤の異体字)]健司 氏

HA8000という最新のPCサーバ導入による処理時間の高速化も「期待以上のものだった」と語るのは、名古屋卸商協組総務部の加[トウ(藤の異体字)]健司 氏です。

「処理時間は間違いなく、数倍は速くなりました。特に月末の月次更新処理時間などは、従来20分はかかっていたのが、わずか5分程度に短縮されたので驚いてます。入力系、バッチ系ともに待ち時間が大幅に減少したことで、スタッフのストレスも半減したのではないでしょうか」

シーラインの測定によれば、処理時間は平均50%程度に短縮できたとのこと。これは、メインフレームと同等以上の処理性能と可用性を確保するため、同社と日立とが事前に機器構成の最適化を検討し、HA8000の3台構成(AP/DBサーバ、XMAP3サーバ、EURサーバ)による負荷分散を図ったことによるもの。RAIDディスク化による信頼性の向上も含め、「当初少なからず抱いていた、メインフレームからPCサーバへのダウンサイジングの不安は解消されました」と、名古屋卸商協組の村田氏は笑顔を見せます。


コンパクトなラックに収められたHA8000サーバ

TCO削減に関しても、保守管理費だけで約35%のセーブとなりましたが、帳票コストの削減や処理能力の向上、エンドユーザー入力の実現による経営効果などを含めれば、「それ以上のコストメリットが出てきている」と村田氏は満足げに語ります。

クライアント端末のOSもWindows®XPとなり、Officeソフトを使った統計処理や、取引先とのファイル交換も格段にスムーズとなりまた。オープンシステムへの転換は、幅広い側面で業務改革の推進をサポートしているようです。

外部環境の変化に迅速に対応できるオープンなITインフラが整ったことで、「今後は取引先からの要望に対応した電子商取引 やEDI、あるいはメールやWebを使った情報提供などにも積極的に取り組んでいきたい」と語る村田氏。既存資産を有効活用することで、コストとリスクをミニマムにしながら、新たなビジネス基盤をスピーディに構築した名古屋卸商協組。その決断は、マイグレーションやダウンサイジングを検討している多くの企業に、ストレートな指針を示したモデルケースといえそうです。


広々としたオフィスでは、さまざまなFLORA PCが活躍している。

USER PROFILE

名古屋地区生コン卸商協同組合

[事務所] 名古屋市中区錦一丁目8番8号(生コン会館4階)
[理事長] 森 正三
[組合員] 40社
[組合設立] 1980年6月
[従業員数] 職員6名、出向4名
[事業内容] 生コンクリートの共同販売
[出資金] 252,220,000円

PARTNER PROFILE

株式会社シーライン

[本社] 名古屋市中区栄二丁目9番3号(伏見第一ビル7階)
[代表取締役社長] 武知俊男
[設立] 1964年8月
[資本金] 20,000,000円
[従業員数] 50名
[事業内容] システムコンサルティング、ビジネスアプリケーション開発・販売、システム設計&プログラム開発、情報処理サービス、コンピュータ関連機器・ミドルウェア販売、その他

特記事項

  • この記事は、「はいたっく2006年4月号」に掲載されたものです。
  • COBOL2002XMAP3EURの詳細については,ホームページをご覧ください。
  • Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標、または登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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