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文/今村玲子

クリエイティブとロジカルの融合

「NEXPERIENCE」はパートナーとの協創を通じて、新しいアイデアを発想し、新たなサービスをつくり上げていく手法のことです。もともと日立では、クリエイティブな発想を得意とするデザイナーと、ロジカルに先端システムやサービスを設計するサービス工学の研究者が、それぞれの切り口から新しいビジネスを生み出す手法を研究してきました。2015年の組織再編で東京社会イノベーション協創センタが発足したことをきっかけに、両者の手法を融合して体系化したのがNEXPERIENCEです。

NEXPERIENCEは課題の発掘、アイデア創出、仮説検証といったプロセスを円滑に進めるためのフレームワークやITツールから成り、パートナーとのワークショップを通じて顧客価値、収益性、実現性をともなう事業プランとしてまとめ上げていきます。さらに、そこでは、幅広い領域を手がける日立の豊富な事例と知見が生きてくるのです。

未来への洞察

NEXPERIENCEではプロジェクトパターンによってプロセスが変わります。ひとつは業務効率化や顧客サービス向上といった直近の課題を解決するパターン。もうひとつは、少し先の未来を考えて進むべき道を描くパターンです。先行きが不透明な現代においては「将来の提案につながるようなアイデアを考えたい」「先端技術を使って何かできないか」といった抽象度の高いニーズが増えてきています。

例えば、日立では、保険会社との協創でNEXPERIENCEを実践しています。まずはPESTLE手法に基づいて作成されたコンテンツ「25のきざし」を使い、将来の企業を取り巻く環境を洞察。5年後、10年後の世界をイメージしながら、どんな価値観の変化や社会課題がありそうかを議論します。そして、そのニーズに対して企業として何ができるか、サービスのアイデアを発散し、出し切るのです。

NEXPERIENCEのポイントは、ワークショップ形式で意見を出し合うこと。それによって、ひとりでは思いつかないような発想が生まれます。

ポイントは“五感を使う”

アイデアを出し切ったら、次はそれを絞り込んでいきます。絞り込むための観点で最も重要なのは顧客価値。2番目が収益性、そして実現性です。この順番でアイデアを評価し、どれが有望か絞り込んでいきます。

サービスのアイデアを絞り込んだら、いよいよNEXPERIENCEの最終段階、ビジネスモデル設計です。そのサービスに関わるすべてのステークホルダーを洗い出し、金と情報、人のやりとりを図式化。行き詰まりがないかを確認しながら、全員にとってウィン・ウィンとなるようにモデルを練り上げていきます。ここで使うツールは、日立が開発し、長く活用してきた「ビジネスオリガミ」です。そのポイントは“五感を使う”こと。ビジネスオリガミを使って仲間とビジネスモデルを組み立てることで、頭や視覚以外の身体感覚が開放されて、ビジネスの見え方も変わり、ステークホルダーやバリュー、実現策に新たな発想が生まれます。

デザインシンカーの育成

現在、日立では、事業部をはじめ、さまざまな部門においてNEXPERIENCEを取り入れはじめています。社内により広めていくため、手法とITツールの進化を図りながら、それを使いこなすデザインシンカーの育成にも力を入れることで、日立全体にNEXPERIENCEの浸透を加速させています。

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