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企業情報研究開発


Cyber-PoC for Citiesでは、多様なデータをもとに まちの状況を可視化していく。

文/今村玲子

日立独自の「Cyber-PoC」

「PoC」とはProof of Conceptの略で、「概念実証」を意味します。アイデアの実現性や事業効果などをシミュレーションするもので、実際の機能を備えたプロトタイプでの検証よりも前に行うプロセスです。日立ではPoCをデジタル上で行う「Cyber-PoC」の研究開発と実践を進めてきました。協創パートナーと現状を共有し、プロジェクトの将来像について話し合うための事業シミュレーターとして活用しています。交通や金融など事業領域によって見るべき情報が異なるため、かつては個別にCyber-PoCを開発してきました。しかし、複数の領域にまたがる社会課題を解決するためには、より統合的に情報を扱う必要があります。そこで開発したのが「Cyber-PoC for Cities」です。

必要な情報を可視化

Cyber-PoC for Citiesは、日立の協創手法であるNEXPERIENCEのなかで、まちづくりに関わる多種多様なステークホルダーをつないで議論を活性化し、合意形成を支援するためのツールです。デザイナーと研究者が一緒になって「どのような情報をどう見せるか」というアイデアから仮説を立て、自ら試しながら開発を進めてきました。

1枚の地図上に人の動きや統計データなど、緯度経度に紐付く情報を重ねることができるユーザインタフェースであり、3段階の使い方を構想しています。例えば、商店街の活性化について考える場合、(1)現状把握・課題の共有:商店街周辺の人の流れなど、現状把握に役立つデータを可視化 (2)将来のまちのビジョンを描く:地図上に商店街までの新しい交通手段を描いたり、施設を置いたりしながら、さまざまな施策を皆で議論 (3)効果の試算・比較:施策によって人の流れがどのように変わり、市民の買い物のしやすさや商店街の収入、まちのにぎわいなどがどう変わるかをシミュレーションして、施策案を比較する。

これら一連のプロセスがデジタル上でスピード感をもって進めることができますが、重要なのは立場が異なる人々が共通認識を持つということ。それぞれへの影響を可視化するだけでなく、個々の立場に寄り添った議論を通して、誰もが自分ごととして考え、共感を得ていく。この一連のプロセスをサポートしていかなければならないのです。

松山市のまちづくりに試験導入


ワークショップでの Cyber-PoC for Cities使用イメージ。

現在、愛媛県松山市の公民学連携によるまちづくり組織「松山アーバンデザインセンター」で、Cyber-PoC for Citiesが活用されようとしています。同センターは松山市の次世代都市像を考える組織として2014年に設立され、公共空間の利活用に関する社会実験や、松山市が行う都市整備事業における計画策定および合意形成支援などに取り組んでいます。2017年からは、日立と東京大学によって東京大学内に設置された「日立東大ラボ」も加わり、データを活用したまちづくりの共同研究を行っています。

まちづくりにおいて重要なのは合意形成。例えば、まちの仕組みや空間を変えるという計画がある場合、それに対してさまざまな声が上がります。このとき、建設的な議論を進めるためにも、それぞれの意見の根拠となるデータが必要となるのです。試験導入されたCyber-PoC for Citiesに市民や観光客の動き、交通路線図、高齢者の分布、「暮らしやすさ」の指標といった情報を重ね、市民や市職員に使ってみていただいたところ、「スマホのような直感的な操作感で敷居が低い。リモートでも参加でき、市民がまちづくりに関わる方法が増えそうな予感がある」という感想もいただきました。

今後、松山市駅およびJR松山駅の駅前開発が同時に行われることになっており、大規模なエリアマネジメントにCyber-PoC for Citiesを活用していくことも考えています。

ツールとプロセスをセットで

これからは、全国の都市でスマートシティ化が進むなかで、現状を可視化して施策のアイデアをシミュレーションするニーズが高まっていくと考えられています。一方で、人々に関するさまざまなデータを使うことへの理解を得ることも重要です。そのためにも、関係者間の共感を醸成できるツールに成長させていくだけではなく、市民と一緒に考えるプロセスも設計し、セットで合意形成を支援する手法を確立していく必要があります。

日立では、まちづくりに関わるさまざまな人たちに、Cyber-PoC for Citiesを使ってもらいながら、これを使って何ができるのか、何を知りたいのかということを実証しつつ、さらなるバージョンアップを図っていきます。

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