ページの本文へ

Hitachi

2020年3月18日
株式会社日立製作所

  日立は、ロボットなどの限られたスペースに搭載可能なサイズで、振動や人との衝突などの外部要因に対して、反射的な動作制御を可能とする高速性を備えたコントローラシステムを開発しました。開発したコントローラシステムは、深層学習処理で獲得した動作制御を実行する小型エッジコントローラ、センサやモータ等の入出力処理を行う小型I/Oコントローラ、これらをつなぐリアルタイムネットワークで構成されます。各コントローラに搭載されるFPGA*1内にハードウェア回路を実装することで高速処理を実現し、外部要因に対して1ミリ秒で応答できることを検証しました。これにより、センサやモータなどのモノの近くに実装できる小型化と外部要因に対する反射的な動作で安全性向上を実現します。今後日立は、ロボットをはじめとする機械システムの自律化への本技術の活用を通し、少子高齢化で深刻化する人手不足の解消への貢献をめざします。



図1 開発したコントローラシステムの構成

背景および取り組んだ課題

  • 各種作業の自律化に向けて、ロボットの動作制御を深層学習で獲得することでプログラミングレスでロボットを導入する動きが加速
  • 環境認識や動作計画など従来の深層学習を用いた動作制御は、その制御周期が数百ミリ秒オーダのため、安全に動作するための瞬時の判断に必要な1ミリ秒オーダの動作制御への適用は困難

開発した技術

  • アプリケーションに応じて最適なシステムを構築できるリアルタイムネットワーク
  • リアルタイム処理を実現するソフトウェア・ハードウェア協調制御

確認した効果

  • 試作した評価システムで本技術を検証した結果、人の反射速度より速い制御遅延1ミリ秒で、反射動作制御が可能なことを確認。
  • 小型エッジコントローラ演算基板および小型I/Oコントローラ入出力制御基板を、それぞれ40mm×60mm、20mm×30mmのサイズで構築でき、ロボットアーム/ハンドに搭載可能な手のひらサイズの小型化を実現。

開発した技術の詳細

1. アプリケーションに応じて最適なシステムを構築できるリアルタイムネットワーク

  ロボットシステムは、アプリケーション毎に入出力の数が異なり、最大数に合わせるとコントローラのサイズが大きくなります。入出力数が可変なネットワーク型では、ネットワーク制御による遅延でリアルタイム処理が難しくなります。そこで、制御向けに簡易化した独自プロトコルを開発し、これを実行するネットワーク制御を、各コントローラにハードウェア実装することでリアルタイムなネットワーク処理を実現しました。また、I/Oコントローラは必要最低限の機能のみ搭載する上下2枚基板構成(図2の上:通信基板+下:I/O基板)でそれぞれ小型化しました。リアルタイムネットワークと小型コントローラにより、対象とするアプリケーションに応じて最適なシステムを構築できます。


図2 リアルタイムネットワークの仕組み

2. リアルタイム処理を実現するソフトウェア・ハードウェア協調制御

  深層学習による制御処理は、従来のプログラミングによる処理より多くの計算を行う必要があり、ロボットなどに搭載する小型のCPUではリアルタイム性に課題があります。そこで、小型エッジコントローラには、CPUとFPGAが1チップ化された半導体(FPGA SoC*2)を搭載し、ソフトウェア(CPU)とハードウェア(FPGA)の双方で協調制御する仕組みとしました。FPGA上には、新たに開発した深層学習を処理する集積回路とリアルタイムネットワークの通信処理を行う集積回路を搭載し、CPU上のソフトウェアからこれらの集積回路を制御します。反射動作制御に必要な処理はハードウェアのみで高速フィードバック制御する構成で、リアルタイム処理を実現します。


図3 ソフトウェア・ハードウェア協調制御する小型エッジコントローラの仕組み

*1
Field Programmable Gate Array(FPGA): 回路構成の書き換えが可能な集積回路。
*2
System on Chip(SoC): 1つのチップ上に、CPUほか他の機能も集積し、連携してシステムとして動作する集積回路。
*3
Open Source Software(OSS): ソースコードが無償で公開され、改良や再配布が誰に対しても許可されているソフトウェア。

照会先

株式会社日立製作所 研究開発グループ