ページの本文へ

Hitachi

日立ワークスタイル変革ソリューション

株式会社 日立製作所 人財統括本部 シニアエバンジェリスト 兼 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ長 本 真樹

株式会社 日立製作所
人財統括本部
シニアエバンジェリスト 兼
ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ長
本 真樹

  • * 所属・役職はセミナー配信時点のものです

社員が生産性高くイキイキと働けているかどうかを可視化する、2つのサーベイ

日立は2021年4月からジョブ型雇用に移行する方針を打ち出した。

「これは今回のコロナ禍を受けて急きょ決めたものではなく、10年近くにわたる日立グループ・グローバル共通の人財マネジメント改革の集大成として、3年ほど前から準備を進めてきたものです。ニューノーマルの時代に企業が持続的に成長するには、社員がどこにいても常に高い生産性の意識をもってイキイキと働けることが重要です。加えて、ジョブ型雇用に移行する日立にとって、多様な人財一人ひとりが能力を最大限発揮するために、会社としてしっかりと『個』に伴走することがよりいっそう重要になると考えています」

そう語るのは、日立製作所 人財統括本部 シニアエバンジェリストを務める本真樹だ。ここではまず、社員一人ひとりが生産性高くイキイキと働けるために日立が行ってきた働き方改革を紹介する。

「我々は社員一人ひとりがどんな意識で働いているかを測るため、2つのサーベイを筑波大学の先生の学術指導を受けて開発しました。1つは、生産性の意識を高く持って働けているか、所属組織はそれを後押ししてくれているかを測る『生産性サーベイ』。もう1つは、今“ご機嫌な”状態で働けているか、配置配属のフィット感はどうかを測る『配置配属サーベイ』です。と言っても、一般的なエンゲージメントサーベイとは大きく異なります」と本は言う。

一般的なサーベイでは上司にフィードバックされるのは組織全体の平均値のため、個々の社員まで行き届いた改善策を打つことは難しい。一方で、本が挙げるこの2つのサーベイは記名式で、結果は回答した社員本人と上司に同じ内容がフィードバックされるのが肝だ。なお、このサーベイ結果は社員の処遇や評価には一切適用されない。

次に示すのは、2つのサーベイの因子の構造モデルだ。

「生産性の個人因子には、『創造性』『効率性』『心身の調整』の3つの側面があります。また一人ひとりの生産性には組織の特性や風土も影響しています。この図で言う組織因子(図の左側)のうち『自律尊重性』『目標明確性』の2つの因子が、個人の生産性に強く影響していることがわかって来ました」

「配置配属のフィット感には、組織から働きかけられる『業務内容の適合性』『人間関係の適応性』『処遇・環境の適切性』の3つの側面が影響しています。図の中心にある個人因子は、『特性希望適合度』→『対人関係安心度』→『評価処遇納得度』→……というように循環的に影響しながら、らせん状に高まっていく関係にあります」

見えてきた、上司と部下の意識のギャップ

2つのサーベイを日立社内で実施したころ、社員たちの意外な状態が見えてきた。次の図は、生産性サーベイの結果を、社員本人の生産性に対する意識の高さを縦軸に、上司から見た部下の意識の高さを横軸にとりプロットしたものである。

「だれもが一番『こうありたい』と思うのは図の右上の@、本人は生産性の意識が高く、それを上司からも認められている状態です。しかし、社内で多かったのは右下のC、つまり上司からの評価は高いが本人は生産性の意識が低いという状態でした。上司からすれば、『仕事ができて、ご機嫌に働いている部下』。ところが部下からすれば、『どんどん仕事を振ってくる嫌な上司』で、すでに相当ストレスがたまっている状態なのかもしれません」

こういった職場におけるストレスの1つでもある上司と部下の意識のギャップを埋める方法として、本は「サーベイの結果を使った1on1ミーティングでの質の向上」を挙げる。

「上司と部下が、同じデータを見ながら一緒に部下の成長へ向けた改善策を考えることができます。サーベイのさまざまな因子がその際の共通言語になるので、お互いの理解が深まり具体的な施策や会話に落とし込みやすくもなるのです」

また、この意識継続のサーベイ結果と実際の勤休データを掛け合わせてみると、ある職場では意外な結果として「金曜日に残業をする社員の生産性意識が低い」ことがわかった。そこでその組織では、昼間に集中して仕事ができるように金曜日をノー会議デーとする施策を実行。これがズバリと当たり、残業時間が10%削減。一方で年休取得数が増加し、生産性の意識と配置配属のフィット感も向上したという。

「会議をやらない曜日を設定しただけですから、施策としてはかなりシンプルです。大きな投資も一切していません。単に、データという事実をもとに社員の意識に働き掛けをしただけなのです。でも結果として社員の行動が変わり、よい変化に結びつけることができました」

日立はこうした社内で培った知見を活かし、「日立人財データ分析ソリューション」としてお客さまにサービスも提供している。特に昨今のコロナ禍における非対面でのマネージャーと部下とのコミュニケーションを支援するツールとしても、多くの企業に活用され始めている。

ジョブ型人財マネジメントで日立がめざす、会社と社員の新しい関係

冒頭のジョブ型雇用に日立が移行するねらいを、本はこう語る。

「これまで、会社と社員は『雇う側』『雇われる側』という関係でした。日立がジョブ型移行によって実現したいのは、両者の間に緊張感のある対等な関係を新たにつくり上げていくことです。日本の製造業はこれまで製品やシステムを同質の集団で継続的に開発することで、仕事の効率を高め利益を上げてきましたが、変化の激しいグローバル市場で成長するためには、多様な発想でスピーディーに事業を拡大していかなければなりません。社員も労働時間や経験値だけで仕事価値を出すのは難しくなるので、自ら学び続けキャリアを積み仕事の成果を高めていくことが一層重要になります。ジョブ型雇用とはポストの役割とそれに必要なスキルを明確にし、人に仕事を充てるのではなく、仕事に最も適切な人をアサインしていく考え方です。このような取り組みが社員一人ひとりの自律やキャリア意識を高めることにつながると思いますし、おそらくこれから多くの業種でも求められていく考え方だと思っています」

最後に本は、こう言って講演を締めくくった。

「これまで、企業の成績は財務諸表を中心として公開されてきました。これからは企業の未来価値を示す『人財諸表』の公開こそ必要になっていくのではないでしょうか。そのためにも、今まで把握が難しかった企業の人財の価値をできる限り可視化して定量化し、オープンにしていくことが重要になると考えています。それが、株主や投資家、経営者や社員といったステークホルダーだけでなくこれから迎える新しい仲間のリクルーティングにおいても非常に重要になると思います。こうした流れの中で、日立がこれまで進めて来た人財マネジメントの知見やノウハウがお客さまにもお役に立てると信じております」

関連サイト

私たちが取り組む新しい時代の働き方 日立テレワークセミナーレポート