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コラム・インタビュー

人手不足時代の物流をどう変えるか
日立が考えるSCM全体最適化

改正物流効率化法を背景に、物流現場では自動化・最適化への対応が急務となっていますが、個々の物流現場での改善は限界に来ており、サプライチェーン全体をふかんした対策が必要となっています。日立が考える生産・販売・物流(生販物)連携でのサプライチェーンの未来像と改革に向けたアプローチを通じて、これからの物流の在り方を解説します。

株式会社日立製作所 トータルシームレスソリューション統括本部 TSSコンサルティング本部 松井 邦彦
変化するSCMへの期待と要望

人手不足や労働時間規制の強化により、物流現場は従来のやり方では立ち行かない状況にあります。いわゆる「2024年問題」に加え、物流コストの上昇や環境配慮への対応など、課題は複雑化しています。2025年施行の改正物流効率化法では、「物流統括管理者」Chief Logistics Officer(CLO)の設置や中長期計画の策定などが求められ、荷主企業にも主体的な関与が必要となりました。このような状況に対応するためには、個々の作業を効率化するだけでは不十分です。現場に蓄積された経験やデータいわゆる「現場の知」を活用し、業務全体を最適な形へと見直していく視点が欠かせません。



現場の知を起点に価値を生む「HMAX」という考え方

現場の知を起点に価値を生む「HMAX」という考え方

日立が掲げる「現場の知をAIで進化させる」という考え方を象徴するのが、HMAXです。HMAXは、フィジカル・デジタル両方のアセットから得られる膨大なデータを活用し、先進的なAIを日立ならではの深いドメインナレッジで強化することで、社会インフラが抱える最も複雑な課題に挑み、お客さまと社会に最大の成果と価値を提供します。

産業・流通分野におけるHMAXでは、「Sense・Store・Think・Act」というサイクルを重視しています。現場からデータを取得し(Sense)、お客さまナレッジの抽出(Store)、OTナレッジと生成AIを組み合わせて分析・判断し(Think)、その結果を現場の行動やオペレーションに反映する(Act)。この循環を回し続けることで、安全性と生産性の両立、さらには業務の標準化や平準化を実現していきます。

物流分野においても、ドライバー不足や輸送制約といった課題を単なるリスクとして捉えるのではなく、働きやすい環境づくりや業務構造の見直しにつなげることが重要です。HMAXは、こうした持続可能な物流への転換を支える基盤となっています。



改正物流効率化法が求める、CLOの新たな役割

CLOが実施すべき内容

2025年施行の改正物流効率化法に基づき、物流統括責任者(CLO)に期待される役割は大きく、待ち時間の短縮や荷役作業時間の削減、積載率向上といった法令対応のKPI管理にとどまりません。同法では、荷主企業にも主体的な関与が求められ、物流を経営課題として捉えた中長期的な改善が求められています。

その中でCLOには、ROIC(Return On Invested Capital)やCCC(Cash Conversion Cycle)といった経営指標と物流KPIを結びつけ、物流コスト削減に加え、在庫圧縮や資本効率の向上までを視野に入れた判断が求められます。物流は単独で最適化できるものではなく、調達・生産・販売と連動させて初めて、全体としての効果を発揮できるからです。

そのためには、物流コスト、人員配置、設備投資の状況を一元的に可視化し、課題がどこに集中しているのかを把握することが重要です。現場の負荷軽減とサービスレベルの維持を両立させる施策を選択し、経営判断へとつなげていくことが、改正法時代のCLOには求められています。現場の実態を理解した判断力と、数値に基づく説明力を併せ持つことが、物流改革を推進する中核人材として不可欠です。



将来ビジョンから始める改革アプローチ

サプライチェーンの課題に対する日立のアプローチ

改正物流効率化法への対応を考えるうえで、重視しているのが「将来ビジョンから逆算する」改革アプローチです。目の前の法令対応に追われるのではなく、10年先の社会や産業構造を見据え、サプライチェーン全体をどのように進化させていくかを構想することが重要だと考えています。

課題解決のためには、システム導入だけではなくその前段として業務改革が必要になるケースも多く、日立では業務改革から併走し将来ビジョンに向け実効性のある進め方をご提案しています。

製造業との共創事例では、高度なシステム導入に先立ち、商慣習の見直しから着手しました。受注締め切りを一日前倒しすることで配車計画の自由度を高め、自動配車や生産計画との連動を可能にしました。この「一日のバッファ」が物流の平準化とコスト削減を連鎖的に生み出しています。

物流効率化を阻む要因の1つは、こうした従来の商慣習です。設備やシステムだけでなく、納品条件やリードタイム設定そのものを見直し、荷主や取引先とデータを共有しながら改革を進めています。



日立が描くサプライチェーンの未来像

SCMのありたい姿の仮説

日立が描くサプライチェーンの未来像は、サイバーとフィジカルを融合したサイバーフィジカルシステムです。調達から製造、物流、輸配送に至るまでの現場の動きをデータとして収集し、サイバー空間上で最適な計画を立案します。その結果を再び現場へフィードバックすることで、全体最適を実現していきます。
重要なのは、製造物・生産・販売・物流をそれぞれ個別に最適化するのではなく、相互に連動させて生販物を同期化することです。どの計画で回せば、在庫、コスト、サービスレベルのバランスが取れるのかを事前に検証し、変化に強いサプライチェーンを構築します。人手不足や需要変動といった制約を前提としたうえで、データと現場をつなぎ、継続的に改善を重ねていく。生産・販売・物流まで一気通貫のサプライチェーンマネジメント(SCM)のありたい姿を描き、サプライチェーンでの価値創出に加え、お客さまやサプライヤーにとってのうれしさを明確化することが必要だと考えています。



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