下絵制作者:北村春一氏
約一三〇〇年前に編纂された「出雲国風土記」には、出雲国の成り立ちを語る「國引神話」が記されている。
巨大な神、八束水臣津野命は、小さかった出雲の国土を広げるため、遠く離れた地から島を太い綱で引き寄せ、「国来い、国来い」とつなぎ合わせた。
こうして今日の島根半島が形作られた。この神話は、大地に新たな命を吹き込み、圧倒的な生命力を感じさせる壮大な物語である。
ねぶたは八束水臣津野命が力強く島を引き寄せる場面。
太い綱を握りしめ国を広げるその姿には、天地を動かす神の力強さが宿る。
そして今、青森は開港四〇〇年を迎える。かつて港が開かれ、人と文化が行き交う地となったように、これからも多くの人を引きつけ、新たな可能性を広げていく。人々に幸せをもたらし、未来の子どもたちへとつないでいけるよう願いを込めて。
参考資料:『出雲国風土記』(山川出版社)
『青森市公式ホームページ』(青森県青森市)
北村 春一(きたむら しゅんいち)
1981年(昭和56年)生まれ
ねぶた師、北村蓮明の長男として青森市に生まれる。
地元の企業や東京での就職経験を経て、2007年帰郷し、父に弟子入り。
2011年にねぶた師としてデビュー。伝統を守りながらも、型にとらわれない「挑み続けるねぶた」をめざしている。