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HIGHLIGHTS 2004


電力・電機グループ水戸交通システム本部信号システム設計部の網谷 憲晴主任技師(左)と,同本部車両電気システム設計部の和嶋 武典主任技師(右)

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列車制御の新たな時代を切り開く
「デジタルATCシステム」

 1961年の地下鉄日比谷線,そして1964年,わが国が世界に誇る新幹線の開業とともに導入したATC装置は,列車の安全・安定運行に多大な役割を果たしてきた。そして今,ほぼ40年経って,ATCは初めて大きな技術革新を迎えることとなった。東日本旅客鉄道株式会社と日立製作所が8年をかけて共同開発した最先端の列車制御システムが「デジタルATC」である。これにより,将来の新たな高速化,高密度輸送への柔軟な対応が可能になった。


「デジタルATC」とは

 従来のATC(Automatic Train Control:自動列車制御)は,地上の信号機器室からレールに送られるアナログ信号周波数ごとの速度情報に従い,ある区間ごとに列車の速度を一律に制限する「多段ブレーキ制御」というものです。このため,運転効率の向上,過密線区での輸送力増強,列車の到達時分の短縮など,近年の柔軟な輸送ニーズへの対応に課題がありました。これに対して「デジタルATC」は,あらかじめ経路の曲線やこう配,車両性能といったデータを車上のデータベースに車両種別ごとに搭載し,地上からの停止点情報に従って,車両側で自列車の位置や速度などを認識し,個々の車両性能に合わせた最適な「一段ブレーキ制御」を自動で行うようになっています。これにより,安全性と快適性を両立させつつ,高密度運転と到達時間の短縮を可能にしました。2002年12月に開通した東北新幹線盛岡―八戸間に導入され,その後,東北新幹線や上越新幹線,首都圏の京浜東北線,山手線などに段階的に導入が進められています。


「デジタルATC」導入の効果は

 最大の効果は,先行車両と短い間隔で続行が可能な「一段ブレーキ制御」により,運転間隔を短縮することです。列車間隔の制御を最大限に効率よくできることで,高密度な運転が可能になり,列車本数を増やしたいというニーズへの対応が可能です。その一方で,設備を減らしても従来と同程度の性能が出せることから,列車の運行が低コストでできるという利点があります。また,きめ細やかな列車間隔制御ができることから,ダイヤが乱れたときの復旧が非常に速くなり,乗客へのサービス向上に威力を発揮します。
 二つ目の特徴は,「一段ブレーキ制御」によって目標地点への到達時間を短くできることです。従来のATCでは,先行車両が詰まっている場合など,先行車両の位置に合わせて段階的に減速を行っていました。「デジタルATC」では,示された停止点に対応する最適なブレーキパターンを車上の装置が検索し,自動で連続的な一段ブレーキ制御をすることができるので,制動段階ごとの惰性走行が不要になります。時間のロスがなくなった分,新幹線のように高速走行をする運転では,到達時間の短縮になるという利点が生まれます。
 そして三つ目は,目標に対して非常に滑らかな一段ブレーキ制御のおかげで,乗り心地が格段に改良されたという点です。軌道回路を使って列車の位置情報をつかみ,制御する技術としては,最高レベルのものと言えるでしょう。


今後の展開は

 「デジタルATC」は,装置数が大幅に減少することで設備の簡素化・コストダウンを実現します。また,システムの二重化が容易であり,故障率の低減と稼動率の向上に大きく寄与することができます。地上設備も車上設備も,区間ごとに従来のATCと併用しつつ導入を進めることが可能であり,各地の公民鉄,地下鉄,新交通システムの鉄道輸送において中心となる技術と言えます。さらに,中国をはじめとする海外の鉄道システムへ適用するために,RAMS(Reliability, Availability, Maintainability, and Safety)などの国際規格に準拠したフェイルセイフなシステム構成を採用しています。今後も,データを統計処理して一歩進んだ保守サポートを実現するなど,システム全体の管理のコンサルテーション,ソリューションを提供していきたいと考えています。

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