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HIGHLIGHTS 2004


電力・電機グループ原子力事業部企画本部サイクルプロジェクト部開発炉計画グループの清水 仁主任技師(左)と柏倉 潤主任技師(右)


実規模キャスクの外観
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原子力の使用済燃料中間貯蔵施設に使用される
乾式金属キャスク

 現在,原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理し,ウランやプルトニウムなどを燃料として再利用する「核燃料サイクル」が進められている。その中で,再処理までの間,原子力発電所外の施設で一時的に使用済燃料を貯蔵,管理する中間貯蔵施設の存在が不可欠となる。日立製作所は,原子力発電所から使用済燃料を搬出し,かつ数十年にわたって適切に貯蔵できる,輸送貯蔵兼用乾式金属キャスクの開発に取り組んでいる。


使用済燃料中間貯蔵施設に使用される
金属キャスクとは

 原子力発電所から発生する使用済燃料を輸送,貯蔵するための容器のことです。現在,原子力エネルギーについては,資源の有効活用のために,核燃料サイクルが進められています。使用済燃料は,核燃料サイクルの柔軟性を確保するために,再処理されるまでの一定期間,適切に貯蔵,管理する必要があります。このため,2010年をめどに,中間貯蔵施設の建設が計画されています。
 使用済燃料の主な貯蔵方式には,水プールによる貯蔵と乾式キャスクによる貯蔵がありますが,中間貯蔵施設では,保守・管理がしやすく,経済性に優れているといった理由から,乾式キャスクを用いた貯蔵方式の検討が進められています。そこで,日立製作所は,すでに実績のある輸送用金属キャスクに貯蔵機能を持たせた「輸送貯蔵兼用乾式金属キャスク」(高さ5.5m,直径2.5m)を開発しました。


乾式金属キャスクに求められる機能とは

 輸送と貯蔵という,大きく異なった二つの機能に対応して高信頼性を保証することです。輸送に関しては,(1)放射性物質の密封,(2)放射線の遮蔽,(3)臨界防止,および(4)除熱の四つの安全機能とともに,貯蔵前の輸送時はもちろん,貯蔵後の輸送時でも,落下事故に伴う衝撃や火災,運搬船の沈没などに際しても損壊することのないような,頑強な設計・製造が要求されます。一方,貯蔵については,前述した四つの安全機能とともに,数十年という長い貯蔵期間に耐えられる堅ろう性が求められます。こうしたことから,性能の信頼性が確保できるように,キャスク本体には炭素鋼鍛造材を使用し,使用済燃料をキャスク内部で支持するバスケット材にはボロン添加ステンレス鋼を,ふたの部分のシール材には太径の金属ガスケットをそれぞれ使用する,「輸送貯蔵兼用乾式金属キャスク」を提案しています。この設計では,各種の要素試験を積み重ね,総合評価の位置づけでスケールモデルによる落下試験,実規模キャスクの製造も実施し,信頼性の向上に努めてきました。


乾式金属キャスクの特徴は

 使用済燃料の漏出を防止するために,二重ぶた構造とし,シール材として金属ガスケットを用いて密閉性を高めています。また,キャスク内をヘリウムガスで満たすことにより,さびの発生や腐食を防いでいます。内部にバスケット(格子状の仕切)を用いているのは,使用済燃料を一定の間隔に保つことにより,一定量以上のウランが1か所に集まって臨界を起こさないようにするためですが,これを極力溶接を排した「はめあい構造」にすることにより,構造を単純化し,安全性と経済性を高めています。また,落下時の衝撃を低減できる緩衝体の開発も実施しました。
 さらに,放射線を遮蔽するために,キャスク本体にガンマ線遮蔽体と中性子遮蔽体を設け,外表面における放射線量を内部の放射線全体量の100万分の1程度に低減しています。中でも,中性子を遮蔽するレジン(樹脂)については,あらかじめアルミ合金のフィンにブロック状に鋳込んで側部に取り付ける方式を採用することにより,高品質化・多量生産化にも対応できる製造技術を確立しています。


今後の展望は

 現在,わが国の原子力発電所から発生する使用済燃料は年間で約900〜1,000t程度です。今後は発電量の増加に伴い,2010年ころには毎年約1,400t,2030年ころには毎年約1,900tの使用済燃料がそれぞれ発生すると見込まれています。そうした中で,中間貯蔵施設の建設は急務であり,高い信頼性と経済性を備えた輸送貯蔵兼用金属キャスクの開発に鋭意まい進していきます。

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