
映像メディアの世界に
新しい価値をもたらすHDD革命
加速するHDDのデジタル家電への応用
地上デジタル放送の開始によってテレビ放送のデジタル化が本格化し,高画質化とともに,コンテンツの多様化が進むと予想されている。一方,HDDの大容量化や高性能化により,主にレコーダを中心とした家電への応用が進み,HDDとDVDのハイブリッド型レコーダが急速に普及し始めた。日立製作所は,日立グローバルストレージテクノロジーズ社製のHDDを核とした映像情報家電の開発,提供に力を入れている。高画質,長時間録画に加え,HDDレコーダならではの便利な機能と,使い勝手に配慮したユーザーインタフェースにより,快適なデジタル家電ライフを提案していく。
パソコンから家庭用レコーダへ
HDD(Hard Disc Drive)は,これまで,その大半がパソコンなどの大量のデータを保持しておくために使用され,パソコンの普及とともに高速化,大容量化が図られてきました。その一方で,最近では,家庭用のレコーダにも応用され始めています。HDDを記録デバイスとして使用すると,画質のよいデジタル録画,長時間録画,録画済み番組の頭出しや,番組録画中に同一番組を再生する「追いかけ再生」ができるなど,VTR(Video Tape Recorder)にはない便利な機能が楽しめます。HDDにDVD(Digital Versatile Disc)ドライブも備えたハイブリッドタイプのレコーダも急速に普及しています。
HDDの容量は,パソコン用としては十分すぎるほどですが,動画を長時間,しかも高画質で記録するとなると,まだ不足しています。さらに,デジタル家電用には,パソコン用とは異なるデータ読み出し方法や,モバイルや車載といった厳しい使用条件にも耐えられる信頼性も求められます。
日立製作所と米国IBM社は,HDD事業部門を統合し,2003年4月に株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズを設立しました。HDDの専業メーカーとして,パソコン用はもとより,エンタープライズサーバ用やストレージ用,さらにモバイル機器に使用するマイクロドライブなどのさまざまな製品を提供しながら,デジタル家電対応のHDDの充実にも力を入れています。同社のHDDの高い性能が市場でも評価されており,日立製作所も,それらをキーコンポーネントとしたデジタル家電の開発を推進しています。
HDDを活用した,新しい価値を創造する製品
その一つが,120GバイトのHDDと,DVDマルチドライブを搭載したハイブリッドレコーダ“MSP1000”です。2003年9月に発売したこの製品では,「ネットワークとAV(Audio-Visual)との融合」をコンセプトに,HDD・DVDのハイブリッドレコーダとしては初めて,家庭内ストリーミング機能を搭載しました。これにより,例えば居間で録画した映像を,LANを経由して書斎のパソコンで視聴することができます。
今後は,パソコンからの録画予約・検索・遠隔操作や,複数台のパソコンを接続して,それぞれ別々の番組を見られる機能なども提供していきます。将来的には,自宅で録画した番組を外出先でモバイル機器によって再生するなどの連携も視野に入れ,開発に取り組んでいます。そのためには情報基盤の整備も待たれますが,自分の見たいコンテンツを,見たい時間に,見たい場所で自由に見られる世界を,ハイブリッドレコーダとしていち早く切り開いていきたいと考えています。
次にあげられるのが,フラットパネルテレビ“Wooo”への展開です。“Wooo”では,モニタ部とチューナ部であるAVC(Audio-Visual Control)ステーションが分かれていて,自由に組み合わせられるのが特徴です。今回,HDDを搭載したAVCステーションもラインアップに加え,フラットパネルテレビとしては世界で初めて,ハイビジョン放送を録画できるようにしました。160Gバイトの容量で,ハイビジョン放送なら約14時間録画でき,追いかけ再生も可能です。画面を2分割して,片方でライブ放送を見ながら,もう片方にハイライトシーンをリプレイすることもでき,スポーツ番組などでの楽しみが広がると考えています。
ハイビジョン放送の記録再生では,高ビットレートのデジタル信号を扱います。特に,追いかけ再生機能の実現には,HDDの容量だけでなく高度な信号処理技術も要求されます。今回の開発により,高画質とHDDレコーダの利便性という新しい価値を実現できました。
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