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急拡大のデスクトップ仮想化 その理由と導入成功のポイントとは

特集記事:HITACHI USER -ITビジネスNavi Vol.12-

デスクトップ仮想化とは、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのクライアント環境(アプリケーション、データ)をサーバ側で集中管理する技術です。 クライアント装置側には必要最小限の機能だけを持たせ、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するため、情報漏えいの防止やセキュリティの高いテレワーク環境の実現を目的として、導入する企業が増えています。

本稿では、デスクトップ仮想化が注目されている背景、複数ある導入方式のうち自社にはどの方式がよいのかなど、導入のポイントについて解説します。

急拡大するデスクトップ仮想化市場

図1は、デスクトップ仮想化の市場規模を、シンクライアント端末の出荷台数とデスクトップ仮想化ソフトウェアのライセンス数から見た調査結果です。端末の出荷台数では年平均で20%超の伸びが予測されています。 2012年以降は導入案件の大型化や、旧O Sのサポート終了を受けて導入を検討するユーザーが増えるためです。また、仮想化ソフトウェア市場の出荷ライセンス数を見ると、年平均で39%増と高い伸び率を示しています。

図1:急拡大するデスクトップ仮想化市場
図1:急拡大するデスクトップ仮想化市場

今、デスクトップ仮想化が注目されるわけ

 デスクトップ仮想化は、シンクライアントなどの端末を使い、仮想化技術を用いて実現するソリューションであり、2000年以前から導入する企業はありました。日立製作所でもPCに業務情報が存在する限り、PCの紛失・盗難時に『情報漏えいはない』と断言できないと考えて2004年に社内プロジェクトを発足し、業務情報を保持しない「セキュリティPC」の社内利用を推進し、さらにノウハウを蓄積して製品化してきました。

このように、デスクトップ仮想化の黎明期には、セキュリティ対策強化やサーバ等のIT資産集約による運用コストの低減が、導入企業の主な目的でした。

近年では、ワークスタイルの多様化に対応するためのセキュリティの高いテレワークや、さらに東日本大震災を受けて事業継続性の確保を目的として導入するケースも増えています。また、仮想化技術の急速な進歩によって導入が容易になった点や、スマートフォンやタブレットなどの急速な普及によって時間と場所を問わず、業務に応じた最適な機器でデスクトップ仮想化環境に接続できるようになった点も、企業の導入を後押ししているようです。

図2:デスクトップ仮想化はなぜ注目されているのか
図2:デスクトップ仮想化はなぜ注目されているのか

自社に最適なデスクトップ仮想化技術とは

デスクトップ仮想化を実現する技術として現在主流なのがバ側でデータやアプリケーションを集中管理し、画面イメージだけをクライアント端末に転送する画面転送方式です。その実現手法は次の3つに大別されます。

1つ目は、コールセンターなどの定型業務向けに考案された「ターミナルサービス方式」です。1つのサーバOSを複数ユーザーで共有することから、管理工数を大幅に抑え、集約率を高めた効率的な運用ができることがメリットです。その半面、OSが1つであるため、多様なアプリケーションや周辺機器の利用が想定される業務では利便性が低下します。

こうした問題に対応しているのが、「仮想PC方式」と「ブレードPC方式」です。1つのクライアントOSをひとりのユーザーが専有しているため、業務に応じたアプリケーションを使用できるといった柔軟性がメリットといえます。

クライアントOSを仮想環境で稼働させる「仮想PC方式」は、サーバのハードリソースを複数人で共有するため、ユーザーの同時利用率が低いほどリソースの有効活用が可能で集約効果が出る一方、同時利用率が高いとシステムが高額化するなどの問題があげられます。

「ブレードPC方式」の特徴は、OSだけでなくハードウェアまで占有して利用する点にあります。物理的には1台の通常PCなので、従来使っていたアプリケーションを容易に移行できます。 また、ユーザーごとに独立したブレードが割り当てられるため、他ユーザーの異常動作の影響を受けない点もメリットです。ただし、ターミナルサービス方式や仮想PC方式に比べると、1ラックあたりのユーザー数が少ない(集約率が低い)という点がデメリットといえます。なお、この「ブレードPC方式」を提供可能なのは国内では日立だけです。

図3:3 つのデスクトップ仮想化の方式
図3:3 つのデスクトップ仮想化の方式

導入のポイントは「適材適所」の環境整備

いずれの手法や製品を用いてもデスクトップ仮想化には特有の課題が残されています。たとえば、従来のPCに比べると使い勝手や自由度が制限される、動画や音声の編集といったリッチコンテンツに対応できるほどのパフォーマンスが出ないなどです。この場合、現場のニーズに合致した導入手法を採用するとともに、システムの一部に通常のPCを残すといった工夫が必要です。

上述したとおり、日立では約10年前から自社でもデスクトップ仮想化の利用を推し進めてきました。現在、ユーザー数は日立グループ内で7.5万を超えます。そこで得られた教訓は、複数のデスクトップ仮想化方式の混在が避けられないということです。つまり、部門、用途、目的によって適した方式があるため、各手法を柔軟に組み合わせてユーザーの要望に沿った環境を実現する"適材適所"の統合環境の整備が必要になるということです。

また、デスクトップ仮想化では、ネットワークが必須であるため、十分な帯域確保が欠かせません。多数の仮想マシンが稼働するだけに、システムの安定稼働は業務上重要です。さらに、仮想化基盤の検証(構成する物理サーバの台数や適切なサイジングなど)が必要になります。このように、仮想デスクトップ環境の整備に当たっては考慮すべき課題が多くあります。

日立ではこうした課題に対して、"適材適所"の統合環境を整備できる「セキュアクライアントソリューション」を提供し、幅広い製品ラインアップでお客さまのニーズにこたえます。これまでの運用ノウハウや見込まれる効果などを踏まえた、最適な統合環境の見極めや構築、そのためのベンダーとの共同検証作業にも取り組み、今後も最適なソリューションを提供していきます。

図4:日立なら端末と実行環境の選択肢が豊富で、適材適所の活用が可能
図4:日立なら端末と実行環境の選択肢が豊富で、適材適所の活用が可能

特記事項

  • この記事は、「会報誌 HITACHI USER 2013年3月」に掲載されたものです。
  • 記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標もしくは登録商標です。