本文へジャンプ

ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

事業継続のための省電力化とリスク対策

特集記事:HITACHI USER -ITビジネスNavi Vol.2-

東日本大震災から3か月。いまだ各地で復興活動が続く中、多く の企業ではBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画) やBCM(Business Continuity Management:事業継続管理)、 省電力(節電)への対応の重要性が改めて叫ばれています。

震災以降、BCPに関する問い合わせや相談が急増していま す。BCPは、これまでも企業のIT部門にとって必要な取り組みで したが、広域に甚大な被害をもたらした震災を目の当たりにして、 逼迫(ひっぱく)感や当事者意識を持った、本格的な取り組みに 変わりつつあります。

IT投資の対象も、当初の計画から大幅に変更せざるを得ない 状況のようです。

2011年度のIT投資が回復基調に転じたと言われ、戦略投資の 増加が見込まれていましたが、震災によって、情報システムの新 規開発や刷新よりも今はBCPに投資すべきだという機運が高まっ ています。

経営者のIT投資に対する考え方(優先順位やバランス)が変 わってきたといえます。

ただし、すべての企業に当てはまるというわけではなく、業界に よってばらつきがあります。例えば、金融業は本腰を入れ早くから BCPに取り組んでいる一方で、他の業種では取り組みはあるもの の、業界によって受け止め方に温度差があるのが現状ですが、省 電力(節電)への取り組みは社会全体の共通な認識と言えます。

人、もの、組織視点での正確な状況把握と見える化

では、これらの市況や動きを捉え、企業は具体的にどのような BCP対策に取り組むべきか、二つのポイントを挙げて説明します。

一つ目が「コミュニケーション」におけるBCP対策です。災害 発生直後の緊急時には、社員および設備に関する正確な被害情 報の把握と、状況の見える化が重要です。特に拠点を複数持って いる企業は、並行して復旧作業に当たる必要があるため、より被 害状況を見える化するとともに、対策手順をアシストするITの仕 組みが不可欠です。

これを支援するITツールとしては、社内ポータルを始めとして、 安否確認システム、ITインフラシステム、資産管理システム、社内 SNS(Social Networking Service)、企業の公式Twitterなどが 挙げられます。特に今回の震災では、一時的に電話通信が機能ス トップする中で、Twitter、Facebookといったソーシャルメディアを 使った被害情報収集や安否確認が目立ちました。これらのツール の有効性を実感し、非常時のコミュニケーション基盤として取り入 れた企業も少なくないでしょう。今後の災害対策として、こうしたコ ミュニケーションツールの整備は多くの企業において喫緊の課題 です。

二つ目は、「業務」におけるBCP対策です。例えば、災害によっ て社屋が損傷したり、交通網が寸断したりして出勤できない場合 でも、企業存続のためには経済活動の歩を止められません。そ こで暫定的な処置として、在宅勤務や遠隔地でのテレビ会議な どによるオフィス業務の代替が必要となってきます。在宅勤務や テレワークについては、これまで主に仕事と家庭の両立を目指す 「ワークライフバランス」の観点で語られることが多かったのです が、震災以降はBCPの色合いが強まりつつあります。

在宅勤務に関して、IT部門の多くが重視するのが、セキュアな リモートアクセス環境の構築です。オフィスと遜色ないレベルで業 務を遂行するためには、当然、ファイルサーバなどの社内システム にアクセスする必要があります。その際、ユーザー認証の仕組み や企業データの漏えい防止を実現するためのITツールとして、仮 想デスクトップやシンクライアント、データ暗号化、媒体利用制御 の技術が再評価されています。

BCP対策の具体例
BCP対策の具体例

BCP を支援するリスク分散の考え方と備え

東日本大震災では、津波によって自治体および企業の業務 データや顧客データが物理的に消失してしまうという事態が起き ました。このことから、企業データの保護、データセンターの分散、 ディザスタリカバリなどの災害対策も改めて見直されています。

例えば、遠隔地にリモートサイトを設けて、メインサーバが停止し てもすぐにバックアップできる体制を構築するといった動きが活発 になっています。

その中で、クラウドコンピューティング技術に注目が集まってい ます。クラウドサービスは、従来のコスト削減の観点に加え、多くは 堅牢なデータセンターを活用しているので、そこにサーバなどのIT 資産を移行するだけでもBCP対策になります。

また、バックアップ先をクラウドにするという考え方のほかに、今 すぐ始められるデータ保護の観点から、バックアップソフトを使った リモート保管という対策を検討している企業もあります。ただし、迅 速性やデータ完全保障はないため、目的や重要度に応じた選択 が重要です。データ欠落が許されない高信頼なデータ保護を望む なら、ディザスタリカバリ機能を持つストレージによる高速リモート コピーが有効です。その場合のシステム化のポイントは、コストの 最適化と信頼性のバランスであり、既存のストレージデータの容 易な取り込みとリモートコピーでの遅延監視が重要です。

高信頼、高速コピーの具体例
高信頼、高速コピーの具体例

継続的な省電力(節電)への取り組み

多くの企業が夏場の節電に対する検討/対策を進めています。 節電の取り組みは夏場だけの問題ではなく、グリーンITでも言わ れているとおり、継続的な環境問題への取り組みが重要です。具 体的な省電力の対応案として、データセンターにサーバを預ける、 クラウドサービスを利用する、などがあります。また、社内システム では仮想デスクトップ環境の構築やシンクライアントの導入も有 効です。さらには省電力機器の積極的な導入や、広くはテレワー クなどを利用したワークスタイルの変更による省電力対応を検討 している企業も少なくありません。とはいえ、これらの取り組みには 費用と時間がかかるものも多いので、今すぐ容易に取り掛かれる ものからスタートするという考え方が重要です。そこで、導入済み のIT運用管理ツールに、目的にあったツールを導入することによ る節電運用をいくつか紹介します。

(1)効率的なサーバの自動運用

24時間365日、常にサーバを稼働させるのではなく、業務開始 の数時間前にサーバ電源ONとシステムの自動起動、業務終了 後はバックアップが完了したらシステムも自動終了と電源OFF で、無駄な稼働のない効率的な自動運用で節電を支援します。 サーバ台数が多い場合や、繁忙期、閑散期、通常期などシステム 稼働負荷状況を見ながら稼働台数を計画的に制限することで、よ り節電効果の高い運用を支援できます。

効率的なサーバの自動運用の具体例 〜業務と同期を取ったサーバの電源OFF〜
効率的なサーバの自動運用の具体例 〜業務と同期を取ったサーバの電源OFF〜

(2)オフィスにあるPCの利用状況見直しと省電力設定運用

オフィスにあるPCの稼働状況/使用状況を見直して、まずは利 用されていないPC、または使用率が極端に低いPCは返却を検討 する。次に、稼働はしているものの長時間席をはずすときには省 電力モードに設定すると節電効果があります。しかし、社内で統一 するには時間もかかり、一律の適用は難しい。このような場合、IT 運用管理ツールで、一律に、コストを掛けずにPCの一括設定に 対応できます。例えば、日本マイクロソフト株式会社が無償提供し ている「Windows PC自動節電プログラム」をJP1で配布実行す ることで、いますぐ対応が可能です。企業で所有するPCが多けれ ば多いほど有効な手段です。

ITの適用シーン
ITの適用シーン

特記事項

  • この記事は、「会報誌 HITACHI USER 2011年7月」に掲載されたものです。
  • ・Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • その他記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

事業継続/省電力

おすすめコンテンツ

運用管理の自動化に向けて 現場視点で考える、実現の第一歩

運用管理の自動化があらためて注目されているが、属人化したスキルに依存している現状もあり、必ずしも浸透していない。実際にできるところから始められる、現場視点での「自動化」を探る。