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[連載]第6回 RHEVでできること

Red Hat Enterprise Virtualization(以降、RHEV)の最新バージョンである3.2ではGUIの刷新が進み大幅な機能強化を実施した結果、 仮想化ソリューションの利用シーンで想定される構築、運用シナリオのほとんどを網羅できるようになりました。そこで、第6回では その中でも主要な機能を構築、運用のステージに合わせてご紹介します。

RHEVの役割

RHEVはKVM(Kernel-based Virtual Machine)を仮想化ハイパーバイザとして利用するソリューションであるため、KVMとQEMU(Quick Emulator)、 および仮想化関連の機能を利用するためのライブラリであるlibvirtが提供する機能については、ほぼそのままRHEVでも利用可能です。 視点を変えると、KVM、QEMU、libvirtおよびlibvirtを利用するVirt Managerで不足している管理機能を提供するのがRHEV、ということになります。

従って、仮想化ゲストOSを稼働させたまま他の仮想化ホストに移動する「ライブマイグレーション」や、複数の仮想化マシンが利用する物理メモリを共有し、 仮想化ホストに搭載されている実際の物理メモリ量を超えてメモリを利用できる「オーバーコミット」といった機能は、RHEV固有のものではありません。

RHEV構築後のゲストOSセッティング

RHEVそのものの構築後、ゲストOSを実行可能な状態にするには2通りのシナリオが考えられます。 新規にOSのインストールを実施するか、既存のシステムをRHEVのゲストOSとして移行するかのどちらかです。

新規にインストールする場合、RHEVのテンプレート管理機能を活用することで、種類やバージョンが同一であれば 「インストール作業」は1回で済みます。
例えば、ゲストOSとしてRHEL 6.4を最小インストールしてテンプレートとすると、 テンプレートから作成した「インスタンス」をアップデートしてセキュリティの不安がない最新の状態にしたり、インスタンスに 追加でRPMパッケージをインストールして個別のサーバに設定していくことが可能です。

既存のシステムを移行する際には、物理サーバからの移行ではvirt-p2vというツールを、仮想化されたサーバからの移行では virt-v2vというツールを利用して、サーバの「イメージ」をRHEVにインポートすることが可能です。

RHEVの機能紹介(1) 「ライブスナップショット」

ゲストOSが稼働した状態で静止点を作成するライブスナップショット機能を構築段階で利用することで、ゲストOSの設定を追い込んでいくことも容易です。 ゲストOSがRed Hat Enterprise Linux(以降、RHEL)であれば、ソフトウェアのインストール、アンインストールはRPMパッケージで実施できますし、 Linuxの自動インストール機能であるkickstartを用いることで、かなりの部分は自動化できます。
一方で、完全な設定の組み合わせを作り上げるには検証環境でのトライ&エラーが欠かせません。そこで、設定変更の前にスナップショットを作成し、 設定がうまくいかなければリストアすることでトライ&エラーを容易に実施できます。

RHEVの機能紹介(2) 「プール機能」

VDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ)を構築する際には、RHEVのプール機能が便利でしょう。上述のテンプレート機能では、 1つのテンプレートから1つのインスタンスを作成するのですが、プール機能では作成するインスタンス数を指定して同一の構成のゲストOSを同時に 大量に作成することができます。プール機能では次回の起動時にデータの変更を保持しない設定にすることで、情報漏洩を防ぐことも可能なので、 管理者は安心してユーザに仮想デスクトップを利用させられます。

RHEVの機能紹介(3) 「HA機能」

RHEVが提供するHA(High Availability、高可用性)は、運用段階において不可欠とも言える機能です。HAは、RHEV Manager(以降、RHEV-M)に仮想化ハイパーバイザーが 動作するノードを死活監視させ、ノードの健全性が確認できなくなると、仮想マシン上で動作していたゲストOSを他の健全なノード上で再起動する機能です。 OSの再起動を伴うため、アプリケーションのフェイルオーバークラスタと比較するとサービスの復旧に時間がかかる点に注意が必要ですが、仮想マシン上で提供する サービスの種類によっては有用な機能と言えます。
仮想マシン上でRHELを稼働させ、その上でアプリケーションを動作させる場合には、RHELのHA add-onの採用を検討してください(図1)。 HA add-onであれば最短の場合には数秒のレベルでアプリケーションのフェイルオーバーが実施できるるため、サービスの稼働率を向上できます。

RHEVのHA機能およびHA add-on機能の仕組み

次回予告 −IaaS構築ソリューション OpenStackの紹介−

運用環境をタイムリーに低コストで構築する方法として、システムの運用基盤をインターネットを通じて提供するサービスであるIaaSが今話題になっています。
次回は、IaaS構築ソリューション OpenStackについてご紹介します。お楽しみに。