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[連載]第2回 KVMを使ってビジネスの仮想化を

KVM(Kernel-based Virtual Machine)を利用することで商用の仮想化ソリューションには無い数々のメリットを享受することができます。すでに大規模に利用されている事例をベースに、KVMのメリットを改めて確認してみましょう。

パブリッククラウド=KVM

第1回でご紹介したようにKVMはスケーラビリティを意識して開発されたことから、大規模な環境での利用、つまりパブリッククラウドでの採用が進んでいます。また弊社が6月に発表したRed Hat Enterprise Linux OpenStack PlatformもISP(Internet Service Provider)などの大規模な仮想化環境を利用するユーザをターゲットにしており、この製品もKVMがベースとなっています。したがってパブリッククラウドではKVMがさらに拡大していくことが予想できます。

SPECvirtベンチマーク上位10位(2013年6月時点)

図1は2013年6月時点でのSPECvirtというベンチマークの上位10位までの結果です。上位6位まではRed Hat Enterprise LinuxのKVMを用いたものです。特に1位の結果は1台のサーバハードウェア上で約550のゲストOSを動作させることができたということで、KVMのスケーラビリティの高さが分かります。

一方で商用ハイパーバイザよりも低コストで利用できるというKVMのメリットも、パブリッククラウドで採用される要因となっています。KVMを管理するにはlibvirtというライブラリや、libvirtを利用するためのシェルであるVirsh(本連載第4回で紹介予定)によるスクリプティングが有効なので、技術力のあるユーザはこれらのツールや他のオープンソースソフトウェアを組み合わせることでクラウドを構築することができます。内製の管理ツールの開発・メンテナンスコストを考慮する必要はあるものの、技術力さえあれば低コストで仮想化したクラウドを入手できることになります。

Linuxの普及はエッジサーバと呼ばれるウェブやメールのシステムから始まり、徐々にアプリケーションサーバやDBサーバ、基幹システムに浸透していきました。KVMの普及をコンピューティングの形態というカットで見るとエッジサーバと同じく個人から企業まで幅広く利用するシステムであるパブリッククラウドから始まっている面が少なからずあり、Linuxと同様の流れで浸透できれば今後はエンタープライズにおける基幹業務などの仮想化でも一般的に利用されるようになるでしょう。

パブリッククラウドでの採用事例

海外の事例も数多くありますが、より身近な国内のパブリッククラウドでもKVMが採用されています。ソフトバンクテレコム株式会社のホワイトクラウド(*1)や、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズのCloudCore VPS(*2)、さくらインターネット株式会社のさくらのVPS(*3)がKVMを採用している好例です。

OpenStack=KVM

前述のRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platform は2013年7月23日に日本国内での提供を開始しました。OpenStackはIaaS(Infrastructure as a Service)環境を構築するソリューションとして俄然脚光を浴びているのですが、高い技術力を持つISP(Internet Service Provider)の中にはOpenStackのコミュニティ版を用いたサービスを開始するところも出てきました。

「萌えキャラ」である「美雲このは」を採用したことで大きな話題となった、GMOインターネット株式会社のVPSサービスであるConoHa(*4)ではOpenStackのGrizzlyというバージョンを用いており、Grizzlyで仮想化ゲストを実行するNova ComputeノードはやはりKVMを利用しています。

OpenStackは他の商用ハイパーバイザを利用することも可能なのですが、ベースOSの主なターゲットがLinuxとなっていることもあり、事実上OpenStackはKVMを用いてIaaSを実現するソリューションとなっています。

KVMのメリットがビジネスをドライブ

上述したように、KVMのメリットが実ビジネスに結び付く段階に入ったことは間違いありません。IaaSのような仮想化による大規模なパブリッククラウドだけでなく、プライベートクラウドやより小規模な仮想化の利用シーンも増えてきています。

次回予告

次回はRed Hat Enterprise Linuxに同梱されているVirt Managerによるお手軽なKVMの利用方法についてご紹介します。お楽しみに。