ページの本文へ

Hitachi

HITACHI 特別対談 日本IBM

日立製作所 & 日本IBM 協業の狙いと未来 JP1×Instanaが切り拓く、次世代IT運用の姿

クラウドネイティブ化、マイクロサービス化、AI活用の進展により、IT運用はかつてない複雑さを迎えています。
運用現場では「見えていないこと」が最大のリスクとなり、障害対応の長期化やサービス停止が、
顧客体験・収益・ブランドに直接影響する時代です。

こうした環境下で、国内運用管理市場を長年けん引してきた
株式会社 日立製作所(以下、HITACHI)の統合システム運用管理「JP1」は、
アプリケーションの可観測性(Observability)を強化するため、フルスタック・オブザーバビリティを備える
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)の「Instana」をOEM導入し、JP1の新サービスとして展開します。

本記事では、本協業を推進する両社の部門長が、協業に至った背景、提供価値、
そして日本市場に与えるインパクトと将来像を語ります。

この記事で分かること
  1. 監視から「可観測性」へ ― アプリケーション爆発の時代、運用の主戦場が変わる。
  2. JP1の「統合運用」にInstanaの洞察を組み込む ― 既存運用を活かしながら、原因特定と予兆検知を加速。
  3. HITACHI×日本IBMの協業は"製品提供"に留まらない ― 日本市場の知見とグローバル先進技術で、次世代IT運用を共創する。
吉田 雅年
マネージド&
プラットフォームサービス事業部
JP1 事業責任者
株式会社 日立製作所
上野 亜紀子
テクノロジー事業本部
理事
オートメーション・
プラットフォーム事業部長
日本アイ・ビー・エム株式会社

01いま、IT運用に何が起きているのか− 「見えない複雑性」が最大のリスクに

HITACHI 吉田

JP1は1994年にお客さまへの提供を開始し、昨年(2025年)で30周年を迎えました。その間、お客さまのミッションクリティカルなシステムを安定的に支えてきたという自負があります。一方で、ここ数年でITの世界はものすごいスピードで変わってきています。

具体的には、システムがどんどんクラウドにリフト・シフトしており、その結果、従来の監視運用だけでは閉じなくなっています。オンプレミスだけでなくクラウドの監視も必要になるなど、複雑性がどんどん高まっているのが現在のお客さまの課題です。

もう一つ大きな変化がスピード感です。従来は数年かけてシステム開発をするのが一般的でしたが、最近では半年程度でシステムを構築するケースも増えています。その結果、監視の設定や運用プロセスを設計しきってからシステムを使い始めるという従来のやり方が、なかなか難しくなってきています。これらがまさにいま、お客さまの事業課題そのものだと感じています。

日本IBM 上野氏

吉田さんがおっしゃったことに加えて、アプリケーションの視点でも大きな変化があります。IT環境を取り巻くアプリケーションの数が、これまでとはまったく異なる次元で増えており、IDCは2028年までにAIの台頭などによって10億を超える新規アプリケーションが生まれるという見通しを示しています[1]。アプリケーションが増えるほど、アプリケーション間・インフラとの依存関係も複雑化します。

そうした中、従来型の監視の限界が近づいています。「いま何が起きているか」をリアルタイムに瞬時に把握することが、現状の運用では難しい。だからこそ、これからの時代にはObservability(可観測性)を実現していくことが、運用にとって不可欠になっていると感じています。

[1] 出典:IDC 10億の新しい論理アプリケーション:その他の背景、2024年4月、US51953724

02なぜいま「JP1×Instana」なのか− 協業の出発点

HITACHI 吉田

JP1は「統合運用」を軸に進化してきましたが、アプリケーションがビジネスの中心になるにつれ、アプリ内部の状態をより精緻に捉える必要が高まりました。運用の設計をしきってから運用を始めるというやり方が難しくなっている中で、設計しきれていない部分も含め、スピード感を持ってシステムの内部状態を監視できることが重要だと考えています。そのケイパビリティをJP1としてお客さまに届けることが、この時代において非常に重要と判断したところが、JP1×Instanaという協業の出発点です。

日本IBM 上野氏

Instanaは、クラウドネイティブ・マイクロサービスといった、構成が頻繁に動的に変更されるような環境を、リアルタイム性と自動化を前提に監視管理するために設計された製品です。エージェントを監視先に導入するだけで、監視対象や監視項目を自動検知し、1秒単位の高粒度データを継続的に収集します。

一方、HitachiさんがJP1で培ってこられた堅牢性と幅広い運用の網羅性は、日本市場で確固たる基盤を持っています。このJP1の実績・知見とInstanaの特性を組み合わせることが、運用の現場を次世代へと変えていく重要な起点になると考えたのが協業のきっかけです。

日本IBM 上野氏

03“選んだ理由”− Instanaに決めた背景

HITACHI 吉田

Observabilityの重要性を認識し、JP1でその価値を提供しなければならないと考えた時、我々は複数の選択肢を検討しました。その中で最終的にInstanaを選んだ理由は、総合的な優位性です。具体的には、導入のしやすさ、リアルタイムな状況把握の精度の高さ、AIを活用した異常検知の完成度など、次世代運用に必要な要素がひとつの製品に集約されていました。

さらに重要だったのが、JP1をご利用中のお客さまがこれまでの運用資産をそのまま活かしながら、シームレスにInstanaの深掘り機能へ移行できる絵を描けたことです。JP1での監視からInstanaへシームレスにつながり、トランザクションの詳細まで確認できる統合体験。これを実現できると確信できたことが、最終的な決め手になりました。

日本IBM 上野氏

Instanaの特徴は、監視の立ち上げが速いことだけではありません。アプリケーションを構成するさまざまなコンポーネント間の依存関係を自動的にマッピングし、全リクエストのトレースを相関付けて、利用者にコンテキストとして提供できます。

こうした機能によって、障害発生時に「どこに問題があるか」の当たりをつけ、深掘りして原因を追究し、アクションにつなげるまでの初動を大幅に迅速化できます。運用現場のリソースは有限で、システム問題はビジネスに直結します。まさに現場の意思決定に欠かせないテクノロジーだと確信しています。

04“統合運用”としての価値 − JP1の運用フローの中で可観測性を扱える

HITACHI 吉田 HITACHI 吉田

ポイントは「運用者の動線」です。何か異常が検知されたら、影響範囲を把握し、原因を絞り込んで対処する − この一連の流れがシームレスにつながるかどうかが、運用のしやすさに直結します。

今回の取り組みでは、JP1で検知した事象からそのままInstanaへ遷移し、特定のトランザクションの詳細まで確認できるよう設計できました。これが障害時の原因究明スピードを大きく高める核心部分だと考えています。

日本IBM 上野氏

運用に必要なのは「点」ではなく「相関」です。Instanaはアプリケーションとインフラの依存関係を自動で可視化し、1秒単位の粒度でデータを更新し続けます。これにより、運用担当者がシステムを俯瞰しながら管理でき、問題発生時も影響範囲の特定やボトルネックの絞り込みが格段に速くなります。

さらに、InstanaとJP1がシームレスに連携することで、お互いの補完関係が生まれます。JP1利用者が確立した運用の中で、Instanaの深い可観測性が加わることで、運用をひと段階高いレベルへ引き上げることができます。

05キーワード解説:Observability(可観測性)と「Four Golden Signals」

日本IBM 上野氏

Observabilityとは、単にメトリクスやパフォーマンスデータを集めることではありません。システムの内部状態をリアルタイムに見える化し、俯瞰的に把握できる状態を実現することです。

GoogleのSRE(Site Reliability Engineering)では、サービスの健全性を捉える代表的な指標として、「Latency(遅延)」「Traffic(トラフィック)」「Errors(エラー)」「Saturation(飽和)」という、「Four Golden Signals(4つのゴールデンシグナル)」が紹介されています。

この4つのシグナルを軸にメトリクス・ログ・トレースを相関付けることで、アプリケーションシステムの状態をリアルタイムに的確に把握し、運用に活用できます。AIを活用した運用高度化への道もここから始まります。

HITACHI 吉田

JP1はこれまで、主に設計した閾(しきい)値による監視が中心でしたが、そこに多様なデータを組み合わせることで見える範囲が飛躍的に広がります。それがまさに、運用現場の意思決定を大幅に速めることにつながると考えています。これからは「統合運用」に可観測性の視点を深く組み込み、運用の意思決定をデータで支える領域を広げていく必要があります。

HITACHI 吉田,日本IBM 上野氏

06日本市場で勝つための“共同づくり”− ローカライズとReadinessの重要性

HITACHI 吉田

JP1のお客さまが求めているのは、単に機能があることだけではありません。使い始めやすさ、導入後のスムーズな利用、そして何かあった時の手厚いサポート体制。こうした「Readiness(運用即応性)」が揃って初めて、広いお客さま基盤に展開できます。提案資料、導入ガイド、運用手順書、QA体制まで含めた総合的な整備を今回、IBMさんと一緒に作り上げることを進めてきました。

日本IBM 上野氏

InstanaはIBMが海外の開発部門で開発している製品であり、元はベンチャー企業から買収した経緯もあり、必ずしも日本のお客さまの考え方やカルチャーに100%合致しているとは言えない部分もあります。ドキュメントの内容や表現ひとつとっても、日本のお客さまの期待値に合わない箇所が生じ得ます。

Hitachiさんとの協業では、日本のお客さまの運用現場に即した貴重なフィードバックをたくさんいただいています。実際にエンジニア間で多くのフィードバックをやり取りし、それをもとに改善も進んでいます。

こうした現場目線のフィードバックは、IBMの開発部門にとっても貴重な学習機会です。製品を一緒に日本のお客さまが求める価値に育てていける − それがこの協業の重要な価値だと、強く感じています。

日本IBM 上野氏

07目指す成果− 運用のKPIをどう変えるか

HITACHI 吉田

JP1とInstanaを組み合わせることでお客さまにもっとも大きな恩恵をもたらすのは、障害対応スピードの劇的な向上です。これまでは、何か起きると人が一生懸命ログを探して原因を特定していましたが、Instanaによって状況が「丸見え」になります。障害対応に費やす労力が大幅に削減され、運用担当者が本質的な「運用改善」に時間を振り向けられるようになることを期待しています。

日本IBM 上野氏

Instanaの世界観では、MTTR(平均復旧時間)の短縮とSLO(サービス目標)の達成がKPIの核心です。しかし重要なのはKPIの数値だけではなく、「現場の行動が変わる」ことです。問題判別・障害対応をスピーディに完結させることで生まれた余力を、新たな運用改革に充てる。そうした循環が生まれることで、開発と運用のコミュニケーションもスムーズになり、リリース頻度の向上や品質改善にも波及していきます。

08協業の“その先”− Instanaを皮切りに、IT Automationの共創へ

HITACHI 吉田 HITACHI 吉田

今回のInstanaを起点とした協業は、ある意味スタート地点です。Instanaによってアプリケーションやシステムの状況が見えるようになったその後、見えてきた課題にどう対処するか、が次のテーマになります。

見えた後の対処を、いかに楽にしていくか。それはつまり自動化であり、AIの活用です。Observabilityとオートメーションは表裏一体の関係にあります。見えたものをどう自動化して解決するか。ここが、次に我々が取り組むべきテーマです。

日本IBM 上野氏

IBMはハイブリッドクラウド・AI・自動化を技術戦略の中核に据え、Instanaをはじめとする運用管理ツールへの投資を続けてきました。その価値を日本市場でスケールさせるには、IBMのツールだけでなく、JP1のような強い顧客基盤と運用の知見を持つパートナーとのデータ連携が不可欠です。各ツールが持つデータをサイロ化させず一緒に活用し、AIで運用をさらに高度化していく。Instanaを皮切りに、両社の製品を組み合わせたより広範な共創を進めていきたいと考えています。

HITACHI 吉田

AIはものすごい勢いで進化しています。その可能性を活かし、お客さまの運用を楽にすることをIBMさんと共に取り組んでいきたいと思います。両社の組み合わせで生み出せる新しいお客さまへの価値は、まだたくさんある。そう確信しています。

09読者へのメッセージ「運用の未来」を一緒に実装する

日本IBM 上野氏

可観測性とは、単なるツール導入で終わるものではありません。今回の取り組みは、お客さまの運用変革へ向けたファーストステップです。セカンドステップ、サードステップと、AI活用や運用高度化を進めていく中で、HitachiさんとIBMが一体となり、日本のお客さまがAI・マルチクラウド・ハイブリッドクラウドの世界に対応した「変化に強い運用」を実現できるよう、共に伴走していきましょう。

HITACHI 吉田

いま、運用はかつてないスピードで変革の局面を迎えています。技術の進化、特にAIに代表される進化は従来にないものです。その進化を活かした次世代の運用の姿をスピード感を持ってお客さまに届けていくことが、JP1の使命でもあります。IBMさんとともに、お客さまに新たな価値を届け続けてまいりますので、ぜひこれからもご期待ください。

HITACHI 吉田,日本IBM 上野氏

※本記事は両社の対談動画をもとに、Webページ掲載用に再構成・編集したものです。

お問い合わせ

フルスタック・オブザーバビリティ「JP1 Cloud Service/Observability」についてもっと詳しくお知りになりたい方は、ぜひお気軽に、下記お問い合わせフォームにてご相談ください。

お問い合わせ内容の記載例:

【お問い合わせ対象】

  • JP1 Cloud Service/Observability

【お問い合わせ内容】

  • JP1 Cloud Service/Observabilityについて詳しく知りたい内容をご記入ください。
  • Google Cloud および関連するサービスは、Google LLC の商標です。
  • その他記載の会社名、商品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

×