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企業情報ニュースリリース

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2022年12月19日

日立と山形県東根市、総合治水対策として、リアルタイム洪水予測と
避難・緊急活動へのシミュレーション技術活用に関する共同研究で有効性を確認

[画像]本共同研究で検証したシミュレーション技術のシステム概念図
本共同研究で検証したシミュレーション技術のシステム概念図

  株式会社日立製作所(以下、日立)は、山形県東根市(以下、東根市)とともに、総合治水対策として、リアルタイム洪水予測と避難・緊急活動へのシミュレーション技術活用に関する共同研究(以下、本共同研究)を、2022年6月から9月まで実施し、その有効性を確認しました。
  具体的には、「令和2年7月豪雨」における最上川流域の浸水被害を例に、日立グループのリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood*1」(以下、DioVISTA)で東根市周辺の浸水を予測し、その結果と実績を比較しました。さらに、日立がプロトタイプ版として開発した「避難・緊急活動支援システム」(以下、本システム)をDioVISTAのデータと連係させ、浸水に伴う影響の確認や避難誘導計画の検討を行いました。その結果、DioVISTAが発生の6時間前に予測した浸水の再現率は97%*2で、浸水原因が特定できたこと、および本システムが避難・緊急活動計画の立案支援に活用できることを確認しました。
  今後、日立は、東根市とともに本共同研究結果を総合治水対策の事例として周知を図るとともに、今回活用したデジタル技術を総合治水対策ソリューションとして実用化し、自治体へ広く展開することで、大規模水害による被害の軽減への貢献をめざします。

*1
水害をシミュレーションするための(株)日立パワーソリューションズのソフトウェア。「DioVISTA」は(株)日立パワーソリューションズの日本における登録商標です。
*2
国土地理院が実際の浸水状況などを元に作成した浸水推定図(最上川水系最上川、2020年7月29日20時作成)と、日立が発生の6時間前に予測した浸水域について、25mメッシュでの浸水の有無で比較。実際に浸水した範囲に対し、浸水すると予測した範囲(再現率)は97%、浸水すると予測した範囲に対し、実際に浸水した範囲(適合率)は56%だった。なお、浸水予測には当時の予測降雨データを用いたが、実績降雨データを与えた場合、再現率97%、適合率は78%に高まった。

本共同研究の背景

  近年、日本では気候変動などの影響から水害が激甚化・頻発化する傾向にあり、2021年11月には、インフラ整備の加速化・充実、治水計画の見直し、流域全体を俯瞰した水害対策などの治水対策強化を目的に、「流域治水関連法」が全面施行されました。このため、自治体にはハード面およびデータなどを活用するソフト面の対策強化が求められています。
  東根市では「令和2年7月豪雨」当時、地形や天気予報などの情報をもとに最上川からの浸水被害に備えて対策をしていましたが、実際の浸水は最上川の支流から発生しており、従来方法での予測の難しさがありました。これを受け、水害発生時の被害軽減に向けて、西部防災センター(避難所)を新設するなど、ハード面の整備を進める一方で、浸水被害予測などのソフト面の強化を検討していました。
  こうした中、水総合プロバイダーとして長年培ってきたプロダクト、OT*3、ITとLumada*4ソリューションを提供する日立は、東根市とともに、最上川流域の被害軽減対策に向け、デジタル技術を活用した総合治水対策に関する共同研究を開始しました。

*3
OT(Operational Technology): 制御・運用技術
*4
Lumada: お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。

本共同研究の内容

(1)「令和2年7月豪雨」のデータを活用したDioVISTAによる洪水予測の精度検証

  国土交通省東北地方整備局、山形県が保有する最上川流域の河川データ・水位データと、2020年7月27日から4日間の予測降雨データを活用し、浸水を予測する再現実験を行いました。その結果、東根市内の浸水は発生の約1.5日前から予測できたこと、および実際の浸水域と高い整合性があること*2がわかりました。また、「令和2年7月豪雨」による浸水が支流から発生したこと、さらにその原因は、最上川と支流の合流部でバックウォーター(背水)現象が発生し、支流の水位が上がったためであったことがわかりました。本流と支流のデータをシステム上で統合し、最上川流域全体を一体的にシミュレーションしたことで、こうした詳細な分析が可能になりました。

[画像]「令和2年7月豪雨」のデータを活用したDioVISTAによる洪水予測の精度検証

(2) 洪水・浸水シミュレーション結果を活用した、「避難・緊急活動支援システム」の有効性検証

  本共同研究にあたり、日立はデジタルツイン*5などのデジタル技術や防災・インフラ分野で培ったデータ解析などのノウハウを生かして、災害時に自治体担当者の避難・緊急活動を支援するシステムのプロトタイプ版を開発しました。本システムは、河川テレメータや各種地図情報とDioVISTAによる洪水・浸水シミュレーションデータを連係させることで、浸水曝露人口*6の推計や道路の通行規制箇所の予測、避難所情報などを画面上に表示し、避難・緊急活動を支援するものです。「令和2年7月豪雨」に関する本システムの提案内容を東根市の担当者にて検証した結果、各種施設情報を浸水予測と合わせて流域自治体関係者で共有することにより、災害対応行動の検討に有用であることが確認できました。

*5
現実世界から収集したデータをもとに、その現実世界をコンピュータ上の仮想空間に再現する技術
*6
浸水が発生した時に、影響を受ける人口

東根市総務部危機管理室からのコメント

  「令和2年7月豪雨」では、市内の一級河川の一部が破堤し、一部地域が浸水するなどの洪水被害が発生しました。災害発生時は、現地が暗くなっていたこともあり、水位計の情報や気象台からの情報により避難指示などの準備をしていましたが、水位情報の急変により避難指示を急遽、発出することとなりました。
  その後、最上川の水位の急上昇が支流へのバックウォーターをもたらし、堤防が破堤し、住宅地や農地の浸水被害が発生しました。幸い人的被害はなかったものの、避難行動の呼びかけのタイミングと、さらなる高度な情報入手の重要性を実感させられました。同時に、近隣市町での避難指示と本市のそれには、多少のタイムラグがあり、市民からの苦情もあったことから、もっと広い範囲で時系列に浸水状況などの情報を収集することが必要であると痛感しました。
  本共同研究で実施したシミュレーションは、雨雲レーダーや雨量情報から河川の水位予想を立てることができ、また洪水が発生するエリアを予測できることで、行政として避難指示などの避難情報を発出するためのトリガーの一つとなるという有効な結果となりました。また、地図情報と連係することで、避難が必要となる人数や通行規制箇所の予測ができるなど、避難者支援に大きく寄与するものと思います。

日立製作所について

  日立は、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進しています。金融・官公庁・自治体・通信向けITサービスやお客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、産業流通、水インフラ、ヘルスケア、家電・空調システム、計測分析システム、ビルシステムなどの幅広い領域でプロダクトをデジタルでつなぐ「コネクティブインダストリーズ」と、自動車・二輪車の分野で先進技術を提供する「オートモティブシステム」の事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用するLumadaソリューションを通じてお客さまや社会の課題を解決します。グリーン、デジタル、イノベーションを原動力に、お客さまとの協創で成長をめざします。2021年度(2022年3月期)の連結売上収益は10兆2,646億円、2022年3月末時点で連結子会社は853社、全世界で約37万人の従業員を擁しています。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 水・環境ビジネスユニット

以上

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