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日立ワークスタイル変革ソリューション

【緊急対談】「在宅勤務」を要する不測の事態、どう乗り越えるのか。

【第3回】緊急テレワーク。この大きな経験を活かしたい

株式会社テレワークマネジメントの田澤由利氏と鵜澤純子氏、日立製作所の荒井達郎と津嘉山睦月による座談会。
最終回では、緊急テレワーク実施による意識の変化や見えてきた課題、さらに、今後テレワークが大都市と地方にもたらす効果など、これからのテレワークの在り方について語ります。

在宅勤務が生み出す、自分のための時間

田澤: 今回在宅勤務をやらざるをえなくなり、実は最初に思うのが「通勤しなくていいって、こんなに快適だったんだ!」。

鵜澤: 毎朝満員電車に揺られていた時間を、自分のために使えるようになる。最高ですよね。空いた時間で家事をやってもいいし、本を読んでもいい。

津嘉山: 会社にいるとどうしても、めいっぱい残業してしまう人っていると思うのです。でも在宅勤務になることで、例えば、朝食と夕食を決まった時間に家族と一緒にとるという生活のリズムをつくりやすい。わたし自身、実体験からそう感じています。

鵜澤: 家でWeb会議をやると、子どもに仕事を邪魔されるのではないかという心配はあります。でも小学生になると「今から会議だから、静かにね」と説明すればだいたいわかってくれる。

田澤: 子どもにとっては、普段は会社勤めで見ることができない親が働く姿を間近で見られる貴重な機会かもしれないですね。

津嘉山: 少し課題点をあげるとするならば、多くの方が在宅勤務をし始めると、ネットワークトラフィックの問題が起きたり、Web会議に幼児の声が聞こえるとか、子どもがまだ小さいと仕事中であることを理解してもらえないこともあり、IT面だけではなくこれから社会全体で解決していかなければならない問題もみえてきていますね。

荒井: 仕事というのは毎日同じように忙しいわけではなくて、波がありますよね。でも、急ぎの仕事がない日でも定時までは会社にいないといけない。在宅勤務なら、自分が一番集中できる時間帯に仕事をして、空いた時間は自分のことに使うという働き方もできるわけです。逆に、気持ちが乗ってきたら働きすぎてしまうという危険もあるので要注意ですし、Web会議の時間は自分の自由になりませんけどね。

鵜澤: でもWeb会議は、会議時間を短縮できる感じがします。会議室で顔を突き合わせて「どうしようか……」なんてダラダラ過ごしちゃう時間は、Web会議ではあまり起こらない。あとは、「付き合い残業」も在宅勤務だと皆無です。

自分の時間を作れることによるメリットとして、例えばある飲料メーカーの社員さんは、在宅勤務の日はお昼休みに普段行かないスーパーに行って、自社の商品がどんなふうに陳列されているか、その時間帯にどんな人が何を買っているのかを観察することで、仕事のヒントを得ているそうです。通常の会社勤めでは得られない情報です。

「快適なオフィス」の意味を問い直す

荒井: わたしは、今回のパンデミックを機会に「オフィス」の意味を問い直す時期に来ているのではないかと思います。今までの概念だと、社員全員に自分の席があって、毎朝出勤して夜までいるのが当たり前でした。でもこれからは、わざわざオフィスに来る目的を明確にする時代が来ると思います。重要な案件のミーティングはオフィスでやって、それ以外の業務や打ち合わせは在宅で行うとか。そうすれば、企業が大きな建物を持つ必要はなくなりますよね。これからは、快適すぎて社員が一日中いたくなるようなオフィスにはしなくてもよくなるかもしれません。一方で、ITで解決できるであろうバーチャルなオフィスを快適にしていくことが求められるのではないでしょうか。

田澤: 要するに、成果が上がって、業務が継続できれば、どこで仕事をしてもいい。

荒井: 今回のようなパンデミックが終息すれば、在宅勤務以外のテレワークの形として、サテライトオフィスという選択肢もあります。会社まで行かなくても、自宅の最寄りのサテライトオフィスやコワーキングスペースでも仕事はできますよね。現在は、企業が社員向けのサテライトオフィスを用意したり、主に不動産事業者によるサテライトオフィス提供が中心ですが、運用維持費や利用費は決して安くはない。その解決策のひとつとして、今後は、複数の企業でサテライトオフィスを共同利用しましょうという動きが出てくるかもしれません。

田澤: 先日聞いた話で面白かったのが、マイカーの中からWeb会議に参加するという人がいて、なるほどなあと思いました。音が漏れないし、カーシェアリングの新しい活用方法かもしれない。オフィスの代わりになる場所は、発想次第でどこにでもあると思うのです。

近い将来のテレワーク、大都市のために、地方のために

田澤: パンデミックの状況下で、こういった形でテレワークが必要になってきていますが、本質的に、地方が元気になるためには、もっとテレワークが当たり前にならないといけないとわたしは思っています。大都市に人口が集中する理由というのは、そこに仕事があるからなんですよね。本当は地方で暮らしたいけど、仕事があるから東京に住むという人もいるのです。東京の企業がテレワークを適切に行うことで仕事を分散できれば、地方でもいろいろな働き方や生き方が可能になると思います。

そして、それは大都市が抱える課題の解決にもつながるのです。介護施設や保育所の不足、家賃の高騰など、人口が集中しているから起こっている問題が大都市にはたくさんあるので。テレワークは、さまざまな社会の課題を解決する働き方だと思います。

荒井: 同感です。このままだと都市部はどんどん住みにくくなって、子どもが減ってしまうと思います。地方都市が活性化することと、都市集中による課題が緩和されることで、日本全体の経済にも効果が現れてくるはずです。

今後テレワークが進んで多くの企業でオフィスに空きスペースができたら、そこをサテライトオフィスとして開放するというやり方もあるのかなと。そうすれば、まちづくりの考え方が大きく変わっていくと思います。企業も地方自治体と連携しながら、地方創生に貢献をしていく。日立も、そのためのお手伝いをしていきたいと考えています。

これらからの、一番パフォーマンスを発揮できる働き方

荒井: 繰り返しになりますが、強制的に在宅勤務になっている方、さまざまな理由で在宅せず通勤している方、休業せざるを得ない方といろいろな状況があるかと思いますが、今回をきっかけに多くの人が在宅勤務を経験されているとおもいます。これからは「1日8時間働かなきゃ仕事したことにならない」時代ではなく、1日数時間しか働かなくても、それで成果を出せれば働いたことになる時代がきっと来る。一度在宅勤務を経験すれば、それを実感できると思います。

もちろん、今回のような非常時における在宅勤務の実施ではパフォーマンスが上がらなかった方もいたと思います。しかし、テレワークを多くの社員が経験し、自分たちの働き方について考える貴重な機会になったのではないでしょうか。

鵜澤: そのためには、「テレワークは特別なこと」という思い込みをなくしていけたらなと思います。「非常事態だから、打ち合わせはWeb会議でしよう」ではなく、普段から当たり前のようにWeb会議を、そしてテレワークを行うスタンスが大事です。

津嘉山: 導入したら、一部の組織だけでなく全社的にテレワークを活用する施策も必要かなと思います。そのためにはまずは幹部やベテラン社員もテレワークを経験すること。そこから全社に拡げていく、そのための支援を行うことが大事だと思います。

また、今回やむなくであってもテレワークを体験された方の課題を生かしていければとも思っています。

田澤: テレワークの定義としては、「ICTを活用して時間や場所を有効活用する柔軟な働き方」ですが、それをもう1段深めていくと、「社員がその時、一番パフォーマンスを発揮できる場所で働くこと」だと思うのです。

もし、会社で仕事をした方がパフォーマンスを出せるのなら、出社した方がいい。でも、怪我で通勤できなくなったら、その時は在宅勤務にすればいい。あるいは、今日は在宅がベストだと判断すればテレワークすればいい。

会社にとっても、社員本人にとっても、それが一番いいはずです。そういう柔軟な働き方が、当たり前にできる社会を実現したいですね。

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