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日立ワークスタイル変革ソリューション

【緊急対談】「在宅勤務」を要する不測の事態、どう乗り越えるのか。

【第2回】初めてでも、今できる、在宅勤務の実施ノウハウ

急な在宅勤務でも円滑に仕事をするための、上手なITの使い方とは?
その疑問に、さまざまな企業のテレワーク導入をコンサルティングしてきたテレワークの専門家と、社内のワークスタイル変革を支えてきたITエンジニアが、実体験をもとにお答えします。
株式会社テレワークマネジメントの田澤由利氏と鵜澤純子氏、日立製作所の荒井達郎と津嘉山睦月による座談会、第2回。

Web会議ツールで、仮設の「クラウド上のオフィス」を実現

鵜澤: 在宅でも普段どおりに仕事をするためには、思い付いたらすぐ対話できる気軽なコミュニケーションのしくみが必要だと、第1回で田澤が申し上げました。

そんな「離れていてもいつもと同様にコミュニケーションが可能なインターネット上の仕事場」を、私たちは「クラウドオフィス」と呼んでいます。テレワークでも「一緒に仕事をしている感覚」を大切にしています。

このクラウドオフィスに、自宅や全国の複数のオフィスから社員が毎日出社します。そして、勤務時間中は、できるだけ同じ部屋で仕事をします。ただし、Webカメラやマイクをずっとオンにしていると、常に雑音が聞こえてさすがにうるさいですし、顔をアップで映し出されるのはちょっとキツイという人もいる。そこで、カメラもマイクもオフにして、スピーカーだけはオンにしておきます。

そして社員に話しかけたい時だけカメラとマイクをオンにするという使い方です。そうすると、リアルなオフィスのように他の社員同士の会話が聞こえてきます。電話だと1対1のコミュニケーションですが、このしくみなら気になった話題に誰でも割って入ることができる。リアルなオフィスなら普通のシーンですが、それが在宅勤務で実現できます。

全員がパソコンを持っていなくても、スマートフォンでもこうしたクラウドオフィスのようなしくみは実現可能です。「うちは紙の仕事が中心で、パソコンはほとんど開かないんです」という職場でも、手元にスマートフォンを置いてみんなとコミュニケーションをとりながら仕事を進めることができます。

また、クラウドオフィス専用のソフトが無くても、今お使いのWeb会議ツールで仮設のクラウドオフィスを用意することができます。

田澤: 街が自然災害などで自宅に住めなくなったら、自治体は仮設住宅を用意することがありますよね。それと同じように、緊急で在宅勤務を導入しなければいけなくなったら、経営者は仮設のクラウドオフィスを用意するのも対応策の1つではないでしょうか。

津嘉山: 日立でも約20万人*がMicrosoft® Office 365®を活用して、時間や場所に捉われない柔軟な働き方を実現している(第1回)と申し上げましたが、コミュニケーション用のツールとしては主にMicrosoft Teamsを使っています。チャットやオンライン会議などの機能をシーンに応じて使い分けられるので、気軽に自分の意見を発したり、チームで意見をまとめたり、活発でスピーディーなコミュニケーションを実現しています。

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2019年11月時点

データはクラウドへ。情報共有のルールを作るべし

津嘉山: またMicrosoft Teamsにはファイル共有の機能もありますので、情報をチーム単位で一元化できます。みんなでファイルを共有して、会話しながらリアルタイムに共同作業ができるので、関係者との資料レビューの時間と場所を確保する必要もないですし、資料の先祖返りといった課題も解決できますね。

鵜澤: はい。スムーズに情報共有できる環境の整備も在宅勤務には不可欠です。また、紙資料を自席の引き出しに入れておくとか、データを自分のパソコンのハードディスクに入れておくのではなく、常にクラウドに保存して社員全員で共有する。そのしくみを普段から作っておくことで、いざ在宅勤務という事態になっても慌てずに済みます。

津嘉山: これまで紙で保存していたデータについては、必要に応じて閲覧制限をかけるなどの対策を施した上で、クラウド上のストレージに格納するようルール化する必要がありますね。他に大事なこととして、格納場所やファイル名の付け方などもルール化し、データが必要になった時に第三者がなかなか見つけられないなんてことがないようにしなければいけません。

田澤: もしかしたら在宅勤務せざるを得ない強制力が働いた時が、「情報のクラウド格納」へスタートを切る機会かもしれません。先ごろのパンデミックくらいの大きな出来事がないと、長年、オフィスに山のように積んである資料のデジタル化なんて進まないでしょう。

「今日から、作成した資料の原本は紙ではなくデータとします。決められたクラウド内に格納してください。昔の紙資料はそのままで構いません。必要な場面が来たらその都度、必要な分だけスキャンしましょう」というふうに、変わる時は一気に変わらないと、プロジェクトは前に進まないかもしれません。

在宅でもできる、オン/オフの切り替えとプライバシーの確保

田澤: 「在宅勤務だとオン/オフの切り替えができない」という声も聞きますが、それはルールで規定しないといけませんね。自宅にいるとはいっても仕事なんですから、始業時刻になったら「おはようございます」とチームメンバーにメッセージを送るとか、パジャマではない格好で仕事をするとか、Web会議の時は必ずカメラをオンにするということをルール化しておけば、在宅でも気持ちの切り替えは十分にできます。

鵜澤: 当社ではWebカレンダーを共有していて、一人ひとりがその日の作業の時間割をつけるようにしています。「今日は何時から何時までこの作業をやるぞ!」と社内に宣言するわけですね。お互いがお互いの時間割を把握しているので、在宅でも緊張感を持って仕事ができるようになっています。

また、カメラをオンにすることで自宅が見られるのが嫌という人もいますが、例えば「バーチャル背景」みたいな機能がついたWeb会議システムもありますね。背景を自分が好きな画像に設定できるのです。わたしの場合、ハワイの海岸が背景。お客さまと打ち合わせをするときにも、家の様子が向こうに見えないのがいいですよね。

荒井: お子さまが近くにいる時の在宅勤務は、仕事に集中できないといった心配もありますね。しかし見方を変えると、職場でも業務とは無関係に割り込みが入ることは多いし、それと同じだと思えば、家族と触れ合える時間が増えると前向きに捉えることもできる。お子さまには説明をしたうえで、時間を決めて仕事に集中してメリハリをつけることで、思った以上に仕事がはかどることもあります。

Web会議のハードルを下げるには

津嘉山: そうは言ってもWeb会議に関しては、まだまだハードルを感じている人が多いかもしれませんね。

鵜澤: Web会議システムが社内にあるのは知っているけど、使ったことがない、使い方を知らないという人がすごく多いですよね。多くの企業さんではそれは無理もなくて、「Web会議システムを導入しました。マニュアルはどこどこに置いてあります」というアナウンスだけで、だれもハンズオンの練習なんてしてくれないのです。支社と打ち合わせしたいことがあっても、設定から全部一人でやるのはハードルが高すぎて、途中であきらめて結局内線電話で済ませてしまう。

荒井: 去年のテレワーク・デイズに日立では、「集まって行う会議は一切やめて、すべての会議はWeb会議で行う」という取り組みを社内で行いました。そうしたら、それまでほとんど利用したことのないベテラン社員が「あれ、なかなかつながらないな」「音声が途切れちゃうな」なんてことを言いながらWeb会議システムを操作しているのを見て、いい傾向だなと思いました。

実際に体験することでWeb会議システムのメリットやデメリット、トラブル時の対応方法といった勘所がわかってきて、利用することに抵抗がなくなってくるのです。

津嘉山: Web会議システム以外にも、新しいアプリケーションやシステムを導入したものの組織内での活用が思うように進まず、テレワークの促進や社員のコミュニケーションの向上といった働き方改革の成果に結びついていない、という課題も出てくると思います。実際に、多くの社員が在宅勤務となったときに、これまで十分ツールを活用していなかったチーム内コミュニケーションは、滞りがちになったようなケースも散見されました。緊急事態時は何とか乗り越えるとしても、根本対策としては、外部の力を借りてでも組織内での利用促進と定着化を推進することが、働き方改革を加速するためには重要ではないでしょうか。

鵜澤: もちろん在宅勤務にIT環境の整備は必要ですが、急に在宅勤務を要する事態となった場合、できることは限られています。でもスマートフォンでのコミュニケーションや最低限のファイル共有などでもある程度の業務はできます。やはり、まずは経験すること。その経験をもとに最適なIT環境を見つけて欲しいと思います。

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