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意思決定デザインと最適化のパワーが導くビジネス変革(第2回)

平井 伸幸

株式会社 日立コンサルティング マネージャー

みなさんこんにちは、日立コンサルティングの平井です。

本コラムでは、ビジネスにおける計画や意思決定の瞬間を最適化問題(イシュー)として捉え、そのイシューを計画最適化ユースケースとするための情報整理手法についてご説明しています。

第1回ではSCM領域における典型的なイシューを例に、弊社にて開発した意思決定デザインフレームワーク(FW)を使い最適化ユースケース化するための情報整理手法についてご紹介しました。

第2回では意思決定デザインFWを使う際のコツや、最適化技術をコアにしたビジネス検討アプローチについてご説明したいと思います。

また、本コラムの趣旨を日常の意思決定を題材に説明したコラムをこちらに掲載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。

※SCM:
Supply Chain Management

忙しい方のための論旨まとめ

  • 価値とアクションを先に、ルール・前提条件と情報・データを後から定義する
  • 本当に必要なルール・前提条件を設定する
  • イシューは現実に解くことが可能なレベルまで分解する
  • 意思決定デザインFWを通じたイシュー可視化こそ最適化技術の社会実装の第一歩
  • OODA(Observe Orient Decide Act)サイクルを回せるようテクノロジーを組み合わせ、デジタルツインユースケース生み出す

意思決定デザインFWを使うときのコツ

ここでは意思決定デザインFWを使ったイシュー可視化のコツを3つご紹介します。

1つ目は「価値とアクションを先に、ルール・前提条件と参照情報・データを後から定義する」ということです。

価値やアクションを先に定義することで、外部環境に依らず最大化・最小化したい価値とそのために計画しなければならないアクションを定義できるため、より本質に迫るイシュー定義ができるようになります。そのうえでアクションを縛る外部環境たるルール・前提条件と参照情報・データを定義すると、筋のいいイシューがデザインできます。

2つ目は「本当に必要なルール・前提条件を設定する」ということです。

人間の頭の中には暗黙の前提やルールが多く存在します。生産計画などは熟練した職人の暗黙知によってアクションの候補が絞られることで、複雑な計画を立てることができています。しかし、最適化のパワーを使うにはそれらが明文化されていなければならず、不完全なルールの下ではイシューの質が下がり、従って解の質も不完全となり「犬の道」に堕ちてしまいます。ただ、暗黙知を最初からすべて明文化することは難しいため、最適化モデル検証の中で明らかにしていくアプローチが有効です。逆に、明文化されているルールが人間の手で計画を立てる都合上設定されているということもあります。それはアクションを絞り筋のいい解に早くたどり着けるメリットがある一方、現状以上のアクションを選び取れないというデメリットもありますので、目的に応じ必要なルールを検証の中で見極めていくとよいでしょう。

3つ目は「イシューは現実に解くことが可能なレベルまで分解する」ということです。

図2-1をご覧いただきたいのですが、いきなりSCM計画の全体最適をめざそうとしてもほとんどの場合現在のコンピューターでは解けないイシューとなります。しかしSCM計画は多くのサブイシューに分解できます。例を挙げればラストワンマイル配送や生産計画もSCM計画のサブイシューの1つであり、ラストワンマイル配送には配送順や積み荷に応じた積み付け計画などのサブイシューが存在します。それらをビジネスプロセス単位など現実的に解くことが可能なところまで分解し、さらにサブイシュー間の関係性(ストーリーライン)を定義、その中からクリティカルなイシューを選びそこからモデル化を進めることが最適化技術によるビジネス変革を成功に導くコツになります。

当然SCM計画も経営計画のサブイシューの1つになりますので、経営計画・戦略のような抽象度の高いイシューに対しても同様にイシューの構成とストーリーラインを可視化し、クリティカルイシューからアプローチを始めるという手法が有効なのではないでしょうか。

意思決定デザインフレームワーク
図2-1

意思決定デザインで人間の認知を解釈する

ここでは人間の認知プロセスを意思決定デザインから解釈してみましょう。

図2-2をご覧ください。五感や教育・学習を通じ外部からの情報やルールが脳にインプットされ、脳の中にすでに存在する情報やルールと統合し状況を理解、自身の世界観や価値観に照らし合わせて、意思決定がなされ、アクションが取られます。こうした自身の認知を客観的に捉えることを「メタ認知」と呼びますが、意思決定デザインFWを通してみなさんが取り組んでいるイシューを可視化することが、最適化技術によるビジネス変革の第一歩となります。

意思決定デザインで人間の認知を解釈する
図2-2

OODAサイクル、デジタルツインと意思決定デザイン

次にお見せする図2-3は、OODAサイクルに対し要素となるテクノロジーと意思決定デザインFWの4エレメントをプロットしたものになります。

OODAサイクル、デジタルツインと意思決定デザイン
図2-3

このサイクルはデジタルツインやCPS(Cyber Physical System)といった概念と密接に関わっています。つまり、左象限=フィジカル空間、右象限=認知・サイバー空間であり、フィジカル空間から取得されたデータをサイバー空間にインプット(Observe)、サイバー空間上でモデル化されたイシューの状況を理解し意思決定(OrientおよびDecide)、意思決定に基づきフィジカル空間に対しアクション(Act)を取ります。ここから言えることは、最適化技術はOODAサイクルの中のOrientおよびDecide象限を担うテクノロジーであり、意思決定デザインはみなさんの認知空間上のイシューをサイバー空間上にデザインする手法であるということです。認知空間上からサイバー空間上にデザインされたイシューは最適化技術のパワーを借りることで、人間から機械への意思決定の権限委譲が可能になります。そのことでみなさんがより抽象的・戦略的なイシューに取り組めるようになることが、ビジネスにおける意思決定デザインの最大のメリットなのです。また、現代のプロダクトやサービスはさまざまな要素技術の組み合わせで成り立っていますが、OODAサイクルを回せるように組み合わせると、デジタルツイン・CPSの有望なユースケースを生み出せるでしょう。

結び

いかがだったでしょうか?本コラムでは、前後編を通して人間の認知を最適化問題(イシュー)として捉え、イシューに対して最適化技術の適用を進めていくための入り口となるノウハウについて説明しました。

みなさんは本コラムを通じて、意思決定デザインFWの使い方を学び、最適化ユースケースとしてのイシューの可視化ができるようになったと思います。

本コラムにてご紹介した意思決定デザインやそのFWが、みなさんのビジネスイシューの可視化や改革の一助になれば幸いです。

今後も本サイトにて最適化技術のビジネス適用に向けた実践的なコンテンツをお届けしたいと考えてますので、引き続き日立の計画最適化にご注目いただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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