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コラム・インタビュー

データ集約だけでなく制御も行うMES「FactRiSM」がもたらす価値

2つ目の障害として荒木氏が挙げるのが「自動化工程に関するダイナミックな制御が難しい」ことだ。そして、この課題を解決に導くソリューションとして日立が提供するのがMESパッケージの「FactRiSM」である。

日立は、過去40年にわたって国内のプロセス産業や自動車業界にMESを導入してきた実績がある。自動車業界向けの「NXAUTO」*1)、医薬業界向けの「HITPHAMS」、食品業界向けの「ProductNEO」*1)など、業界別に特化したMESもパッケージ化して展開してきた。FactRiSMは、これらのMESに関する日立の知見やノウハウを結集して開発した統合MESパッケージとなっている。

FactRiSMは、SOP(標準作業手順)に基づく製造管理と4Mデータを収集/活用する情報基盤であり、データに基づく迅速かつ精度の高い製造活動を実現する。これまでの人によるアナログな管理をデジタル管理に替えることで、工場のスマート化につなげられるようになる。また、一般的なMESが現場から情報を収集する機能に重点が置かれているのに対して、FactRiSMはSOPに基づいて現場への制御を行える点が大きく異なっている。「管理系の機能だけでなく制御系の機能も備えるFactRiSMであれば、モノづくりの現場からデータを集約するとともに、各設備に指示を出すことも可能です。そしてその指示の結果がフィードバックされることが非常に重要なポイントであり、これによってリアルタイムにモノづくりの動態を把握しつつ、4Mデータに関する情報を蓄積していくことで、スマート工場の効果を最大化し続けていけるのです」(荒木氏)。

「FactRiSM」の特長「FactRiSM」の特長

「FactRiSM」の特長「FactRiSM」の特長(クリックで拡大)

ラインの問題を見つける4M分析など、トータルでソリューションを提供

そして3つ目の障害になるのが、スマート工場で陥りがちな問題である「データからラインの問題や要因を捉えられない」だ。

ここで重要な役割を果たすのが4Mデータである。日立は、それぞれ異なるデータである4Mデータを横串でつなげてモデル化することで、これまで熟練技術者だけが気付くことができた現場のムダを客観的に可視化/分析する「4Mデータ解析ソリューション」を提供している。デジタル化が難しい人(huMan)のデータについても、カメラやAI(人工知能)を用いて分析できるようになっている。

「4Mデータ解析ソリューション」の概要「4Mデータ解析ソリューション」の概要

「4Mデータ解析ソリューション」の概要「4Mデータ解析ソリューション」の概要(クリックで拡大)

荒木氏は「工場のスマート化に向けて、協創型ラインビルドやFactRiSM、4Mデータ解析などをトータルサービスソリューションとして提供できるのが日立の強みです。『Sense』『Think』『Act』のサイクルを回して、価値創造に結び付けていきます」と強調する。

FactRiSMの導入で原料や中間製品のAGVによる自動搬送を実現

日立はスマート工場を実現するための提案を拡大しており、既に多くの実績が出始めている。ここからは、国内非鉄金属メーカーのFactRiSMの導入によるスマート工場の事例を紹介しよう。

日立製作所 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 主任技師の奥薗雅也氏

日立製作所 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 主任技師の奥薗雅也氏

グローバルで多拠点展開するこのメーカーでは、これまで工場内の原料や中間製品の搬送にフォークリフトを使用していた。非鉄金属ということで、これらの原料や中間製品は重量物であり、その取り扱いは慎重に行う必要があるため現場作業者にとって大きな負担になっていた。日立製作所 産業第1ソリューション本部 産業第1ソリューション部 主任技師の奥薗雅也氏は「また、フォークリフトを運転する現場作業者の業務に合わせて、原料や中間製品をまとめて搬送するため、一時的に現場在庫が積み上がり、そのための保管スペースも取っておく必要もありました」と述べる。

そこで、この原料や中間製品の搬送を、人が操作するフォークリフトからAGV(無人搬送車)に切り替えて、AGVによる無人搬送と自動化と、製造工程のタイミングに合わせたジャストインタイムに近い供給を実現するためにFactRiSMを導入したのだ。

新たな搬送工程は以下のようなプロセスになっている。まず原料準備工程では、この原料を使用する製造工程のタイミングに合わせて、搬送用パレットを搭載したAGVを所定の場所に自律移動させるための指示をFactRiSMから出す。続く製造工程に向けて、AGVに原料を載せた上でFactRiSMのSOPに基づく操作でAGVによる自動搬送を実施する。製造工程を経て出てくる中間製品の搬送についても、FactRiSMのSOP操作によってAGVで自動搬送を行う。

「FactRiSM」による原料や中間製品のAGV自動搬送の事例「FactRiSM」による原料や中間製品のAGV自動搬送の事例

「FactRiSM」による原料や中間製品のAGV自動搬送の事例「FactRiSM」による原料や中間製品のAGV自動搬送の事例(クリックで拡大)

FactRiSMがもたらした具体的な効果としては、AGVによる自動搬送を1日当たり約80回行うことで現場作業者の負担を大幅に軽減することができた。また、工程に合わせたタイムリーな搬送により、これまで必要だった現場在庫の保管スペースも削減できている。「FactRiSMであれば、例えば特に搬送の回数が多かった日に、実際にどういうものを運んだのか、情報をドリルダウンしながら搬送に関する詳細な情報を確認できるので、さらなる改善へとつなげることができます。導入先の非鉄金属メーカーにとってここまでの取り組みはステップ1であり、今後は工場内の他ラインに適用を広げるステップ2や、他拠点との連携やAGVにとどまらないアームロボットの活用も行うステップ3に進めていくことも視野に入れています」(奥薗氏)。

製造業のDXにおける頼もしいパートナーに

このように、スマート工場の障害を取り除くためのソリューションや顧客との協創を力強く進める体制をそろえる日立は、製造業のDXにおける頼もしいパートナーといえるだろう。

中村氏は「次世代のスマート工場をお客さまとともに実現するためには、製造業としての日立の経験も最大限に提供していきます。例えば、スマート工場として知られる大みか事業所の知見とノウハウなども、FactRiSMや4Mデータ分析などを通じてお客さまのモノづくりに役立てられるようさまざまなアプローチを考えていきたいですね」と述べている。

左から、日立製作所の奥薗雅也氏、荒木伸明氏、中村和也氏。スマート工場の実現に向けた提案を強化していく

左から、日立製作所の奥薗雅也氏、荒木伸明氏、中村和也氏。スマート工場の実現に向けた提案を強化していく

*1
「NXAUTO」と「ProductNEO」は株式会社日立産業制御ソリューションズの日本における登録商標です。

アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載日:2022年11月15日

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