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プロアクティブな運用管理の仕組みをITILで構築
「JP1」を活用し、情報システムの高可用性を維持

99.99%級というシステムの高可用性を誇る株式会社損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)。この高可用性を支えているのは、運用管理の国際的なベストプラクティス集である「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」をベースに株式会社損保ジャパン情報サービス(以下、損保ジャパン情報サービス)が作り上げた運用管理の仕組みである。その仕組みを日々実行するために活用しているのが、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」だ。JP1は、分散配置されたシステムと多種多様なアプリケーションに関するイベントおよび稼働情報を一元的に収集/管理して、運用管理者間の情報共有と、問題を事前に発掘して発生前に対処するプロアクティブな運用管理を強力に支援している。

プロアクティブな運用管理を実践する仕組み作りにITILを適用

岸 正之氏の写真
株式会社
損保ジャパン情報サービス
運用部部長 兼
経営企画部部長
岸 正之氏

2002年7月1日、安田火災海上保険株式会社と日産火災海上保険株式会社の合併によって誕生した損保ジャパン。「リスクと資産形成に関する総合サービスグループ」という新しい事業像の実現を目指して、損害保険会社の枠を超えたチャレンジを続けている。

システム運用についても、英国を発祥地とする運用管理のベストプラクティス集「ITIL」をいち早く導入して注目を集めている。

損保ジャパン(当時は安田火災海上)の情報システムの利用形態が大きく変わったのは1990年代後半のことだ。システムの利用者が、社内から、代理店や顧客などの社外へと一気に拡大。社内のミッションクリティカルなシステムもオープン系プラットフォーム上で構築するようになった。1999年には、全社の顧客情報を一元管理して、社内、代理店はもとより、顧客自身による保険プラン立案にも役立ててもらう「総合金融サービス用顧客情報データベースシステム」を構築した。登録されている契約情報は5,000万件にのぼり、1万台を超えるクライアントPCがアクセスして行われる日次更新は約38万件。Windows(R)とMicrosoft(R) SQL Serverをベースにしたオープンシステムは、当時世界でも最大級の規模であった。  顧客にもサービスを提供するシステムである以上、24時間365日のノンストップ稼働が強く求められる。

「障害が発生したら迅速に対応するという従来の運用管理スタイルでは、オープンシステムの可用性向上は実現できません。障害発生そのものを事前に予測し予防するプロアクティブな管理が不可欠です」と、株式会社損保ジャパン情報サービス 運用部 兼 経営企画部 部長 岸 正之氏は強調する。

プロアクティブな管理は運用管理の本質ではあるが、実践するのはむずかしい。

「大切なのは日々の実践。精神論ではなく、明確な方針と目標のもとに具体的な仕組みを確立しなければなりません。2002年にITILを導入したのは、プロアクティブな運用管理という大目標を日常的な実践を通じて達成していくうえで、有効なフレームワークだったからです」と岸氏は語る。

オープンシステムの統合管理を実現して高可用性を支えるJP1

大平 健一 氏の写真
株式会社
損保ジャパン情報サービス
運用部 副長
大平 健一 氏

ITILは、ITサービスの長期的な計画と改善を目的とするサービスデリバリと、日常的な運営に関わるサービスサポートという2つの領域に対して管理基準を示している。損保ジャパン情報サービスでは、前者のサービスデリバリではサービスレベル管理、可用性管理をはじめとする5つの機能、後者のサービスサポートでは、インシデント管理、問題管理など6つの機能を導入。これらをベースにしつつ、独自のプロアクティブな運用管理の仕組みを作り上げた。

ITILをベースにした独自の運用管理を実践するうえで重要な役割を果たしているのが、日立の統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」である。機能分散されているシステムの動きを集中管理して可用性を向上させるためには、統合的な運用管理ツールが不可欠だ。また、運用管理体制を見直してPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを確実に回していくためには、豊富なレポート機能が求められる。「統合管理」こそは、ITIL実践のキーワードである。

統合管理ツールとしてJP1を選んだのは、国内実績が豊富で、特に、SQL Serverをベースにした大規模システムでの稼働実績が評価できたことと、実際のデモを見て、損保ジャパン情報サービスが求める機能を網羅していることを確認できたためである。

日常の運用管理では、統合管理、ネットワーク管理、サーバアプリケーション管理、ジョブ管理という4つの管理機能を活用している。

業務の異常終了、各種障害、ネットワークやサーバの状況など、システム上で発生するすべての事象は、JP1/Integrated Manager(JP1/IM)の統合コンソールで一元管理している。多種多様なアプリケーションのパフォーマンスやアベイラビリティも同一コンソールで監視可能。CPU使用率などのしきい値設定により、アラートが出力されるため、監視コンソールに張り付いている必要はない。

「メインフレームとオープンシステムを同一の管理者が兼務で運用管理できているのは、JP1のおかげ。最小限の要員体制で最大限のITサービスが提供できます」株式会社損保ジャパン情報サービス 運用部 副長 大平健一氏は語る。

JP1はジョブ管理機能も充実しており、極めて長期間のスケジュール管理もできる。総合金融サービス用顧客情報データベースシステムにおいては、1日約38万件のデータ更新をJP1/Automatic Job Management System 2(JP1/AJS2)を使用して管理し、メインフレームとの連携バッチジョブを自動運用しているが、2000年からの利用で一度もトラブルが発生していない。

JP1からの情報の活用でプロアクティブな運用管理に成功

ITIL実践のために、日常のサービスサポートのサービスデスク、インシデント管理、問題管理、構成管理、変更管理、リソース管理という6つの機能すべてで、JP1が収集する情報を活用している。

たとえばインシデント管理。損保ジャパン情報サービスでは、オープンシステムに関する障害情報データベースを構築し、JP1が出力した警告イベントなどの情報とそれに対して実行した処理を詳細に記録し、蓄積している。問題を発見したときにはこのデータベースをキーワード検索することで、迅速な対応と回復までにかかる時間の短縮を実現してきた。

また問題管理においては、サーバアプリケーション管理JP1/AppManagerを通じて入手される豊富な統計情報を分析して、障害発生につながる問題の発掘を行っている。

問題管理をさらに深めるために、プロアクティブ推進会議を毎月開催して問題発生を未然に防止するための方策検討を行っている。そこでも、JP1の各種レポート機能が担当者間の情報共有に役立っている。

「会議で使う情報はあくまでも過去の情報ですが、JP1を駆使することで、過去の情報を通して未来を予測することが可能になってきました。そのおかげでトラブルが非常に少ないのですが、安定稼働しているときこそ情報収集が重要。油断がトラブルを生むような事態を避けるうえでも、継続的な情報収集と共有を支えるJP1の存在は重要です」と大平氏は語る。

ITILを具体的に実践していくためには、運用管理ツールが不可欠である。その意味で岸氏は、2003年に出荷を開始した「JP1 Version 7i」にも大きな期待を寄せている。

「『ITサービスマネジメントの完成度を高める』という目的指向を運用管理ツール自体が持っているという点で、非常に興味深い。また、ITILを意識し、ITILが記述している考えかたを、ソフトウェアの機能として取り込んでいる点も斬新だと感じます」と岸氏は言う。

ただし、いくら良いITサービスマネジメントの仕組みを構築しても、それを実際に動かすのは人である。人の動きを支え、情報を提供して、ITサービスマネジメントのPDCAサイクルがうまく回る環境を作るのが運用管理ツールの役割なのだ。

損保ジャパンのシステムは、99.99%級の可用性を維持している。ITILを利用して損保ジャパン情報サービスが作り上げた人の行動の仕組みと、優れた統合システム運用管理ソフトウェアであるJP1の両輪が、この高可用性を今後も支えていく。

損保ジャパンの総合金融サービス用顧客情報データベースシステム概念図

USER PROFILE

株式会社損害保険ジャパン

[本社] 東京都新宿区西新宿1-26-1
[創業] 1888年
[設立] 2002年7月1日
[資本金] 700億円
[総資産] 47,858億円(2003年3月末)
[従業員数] 15,815名(2003年3月末)

リスクに関するプロフェッショナルとして、損害保険事業、生命保険事業、アセット・マネジメント事業を通じ、最高品質の解決策を提供していくことで社会に付加価値を提供する企業を目指している。2004年1月に発売したニーズ細分型自動車保険「ONE-do」は、業界初のシンプルで新しい契約プロセスを採用して話題になった。

PARTNER PROFILE

株式会社損保ジャパン情報サービス

[本社] 東京都西東京市新町6-3-5 損保ジャパン事務本部ビル
[設立] 1968年8月
[資本金] 1億円
[売上高] 53億円(2003年度)
[従業員数] 1,389名

損害保険契約に関する審査・照合および保険証券作成・発送などの事務処理と、システム運用管理、コンピュータオペレーション、データエントリー管理等のシステム運用サービスを損害保険ジャパンに提供。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ」2004年8月9日号・Open Middleware Report Vol.27に掲載されたものです。
  • SQL Serverは、米国法人Sybase,Inc.の商標です。
  • Microsoft、Windowsは、米国およびその他の国における米国Microsoft Corporationの登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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