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組み込みデータベース「Entier」の採用で
開発効率の向上と施設情報のタイムリーな更新を実現。
効率的な情報循環で豊かなカーライフを提供

パイオニア株式会社(以下、パイオニア)は、カーナビのハイエンドモデル「サイバーナビ」の最新 機種に、日立製作所と日立ソフトウェアエンジニアリングが共同開発した組み込みデータベース 「Entier(エンティア)」を採用。高度な検索機能と電源断対策などの高い信頼性、国内開発データベース製 品ならではの手厚いサポートを評価。開発効率の向上と施設情報のタイムリーな更新を実現し、 効率的な情報循環で豊かなカーライフを支えていく。

カーナビ開発にRDBを導入し 柔軟な検索方法を提供

矢野健一郎 氏の写真
パイオニア
株式会社
モーバイルエンタテインメント
ビジネスグループ  事業企画部
ナビゲーション企画部
企画二課
副参事
矢野健一郎 氏

カーナビのリーディングカンパニーであるパイオニア。同社が、カーナビ市場に投入しているのが、「カロッツェリア」ブランド製品だ。2008年5月、同ブランドのハイエンドモデル「サイバーナビ」の最新機種が発売された。

「パイオニアは、2006年にスマートループ構想を打ち出しました。これは、ドライバーの一人ひとりが発信した走行状況や駐車場などの情報を還元し、ユーザー間で共有しようという、次世代カーライフの基幹ビジョンです。今回の新製品は、この構想を一歩推し進めて、カーナビとパソコンとのシームレスな情報循環を実現しました」と矢野氏は語る。

サイバーナビは、HDDとCPUがセットになった「ブレインユニット」を取り外すことで、音楽データを一括転送したり、テレビにつないでドライブプランを練ったりと、家庭での利用を拡げてきた。さらに、今回のモデルではパソコンとの親和性を高め、USBで簡単に接続するだけで音楽データの転送も、ナビゲーション操作もできるようになった。

もうひとつの新機能が「マルチ検索」だ。

従来の製品ではジャンル、名称(ヨミ)、住所、電話番号などの手がかりごとにメニューが分かれていて、分かっている情報に応じてメニューを選ぶ必要があった。新製品ではインターネットの検索機能に近いイメージで、わかっている情報をダイレクトに入力するだけで検索できるようになった。独自の辞書を持つ日本語入力システムが採用されており、たとえば、入力された文字が地名であれば住所検索、一般名詞なら名称検索、連続する数字なら電話番号検索であると、自動的に判断して検索してくれる。

利用者の利便性を格段に向上させるマルチ検索機能は、この日本語入力システムと同社がカーナビ開発に初めて導入したRDB、日立の「Entier」との連携によって支えられている。

国内メーカーならではのサポートと電源断対策を高く評価

安達 肇 氏の写真
パイオニア
株式会社
技術開発本部
開発センター
MS第一開発部
第一開発室
副参事
安達 肇 氏

松本令司 氏の写真
パイオニア
株式会社
技術開発本部
開発センター
MS第一開発部
第一開発室
主事
松本令司 氏

垂井伸夫 氏の写真
パイオニア
株式会社
モーバイルエンタテインメント
ビジネスグループ
川越事業所
技術統括部
ソフト開発部
主事
垂井伸夫 氏

「RDBの導入を検討したきっかけは、楽曲管理機能の開発において、工数削減と品質維持を両立させたかったからです」と垂井氏は説明する。

これまで同社は、独自技術で楽曲管理機能を開発してきたが、開発のたびにプログラムを書き直すのは大変な開発負荷がかかる。そこで、「楽曲管理はRDBに任せて、その部分の開発パワーを新機能の開発にシフトさせたい」(垂井氏)と考えた。

さらに、ナビゲーション機能の開発チームもRDBの導入検討に合流。ナビゲーション開発では、頻繁に変わる施設情報をタイムリーに更新するために、RDBに注目したのだ。

「従来は、カーナビ向けデータ・フォーマットを使って施設情報を管理してきました。このデータ・フォーマットはカーナビに特化しているだけに柔軟性に乏しく、データ更新の際は、まとまった単位で丸ごと差し替えなければなりません。ところがRDBを使えば、1件単位で差し替えることができます。最新の施設情報をタイムリーに反映させることが可能になるのです」と安達氏は語る。

カーナビが扱う施設は数千万件にのぼり、RDBには高い性能が求められる。同社は、複数のRDB製品でベンチマークを行ったうえで、レスポンス性能や検索機能、そして、サポート体制などを総合的に評価して、日立の組み込みデータベース「Entier」の採用を決定した。

なかでも重視したのは、国内開発データベース製品ならではの手厚いサポートだ。

「初めてのRDB導入ですから、信頼できるメーカーであることを重視しました。実際、開発が始まったら、気軽に相談ができるなど、国内メーカーを選んだメリットを感じました。楽曲管理機能については、設計段階からアドバイスいただき、チューニングに関しては、期待以上に協力していただき助かりました」と垂井氏は言う。

一方、ナビゲーション開発チームは、さまざまな要望が、次の機能アップへきちんと反映された点を評価している。

「最も重視したのは信頼性です。車載製品は、頻繁に電源が入ったり切れたりするため、電源断対策がきわめて重要です。Entierは、ファイルシステムとデータベースの両方のレイヤーでデータを保護しており、データ更新中のいかなるタイミングで電源遮断があっても、データベースを自動回復でき、弊社の信頼性基準を満たしてました」と松本氏は語る。

データの持ち方を変えた 繰り返し列機能や空間検索機能

内田孝之 氏の写真
パイオニア
株式会社
モーバイルエンタテインメント
ビジネスグループ
川越事業所
技術統括部
ソフト開発部
副主事
内田孝之 氏

新製品を特長づけるマルチ検索を実現したのは、ひとつのカラムに複数の値を格納できる繰り返し列機能だ。施設名をキーワードで区切って複数の部分文字列を登録している。

「前方一致検索だけでなく、施設名の途中の文字や、情報の一部分しか思い出せないときでも検索できるようにしたいと考えました。しかし、こういうあいまい検索ができるようにデータを二重三重に持つと、データ量が膨大になってしまいます。Entierの繰り返し列機能により、データ量は抑えながら、さまざまな検索方法が可能になりました」と松本氏は評価する。

大きな施設内のテナントを探したり、地図上にファーストフード店などのロゴマークを表示させるところでは、空間検索機能を使った。

「従来は、施設情報とは別に施設内のテナント情報を持たなければならず、データ更新に手間がかかっていました。Entierを使えば、施設もテナントも一元的に管理して、すばやく情報更新ができて便利です。開発工数も大幅に削減できました」と内田氏は言う。

「今後は、1文字入力するごとにデータを絞り込んで表示する絞り込み検索(インクリメンタルサーチ)機能や全文検索機能なども活用していきたい」と安達氏は意欲的だ。

より柔軟な検索機能の実現で 利用者の利便性をさらに追求

「Entierを採用した最大の効果は、今後の開発の可能性が大きく広がったことだと思います。楽曲管理機能もナビゲーション機能もさらに強化させていきたい」と矢野氏は語る。

Entierの導入は大きな成果をあげた。今後は、他のラインアップにも適用していく計画だ。

「Entierは、GUI開発環境も整っているし、コマンドを直接入力しても使えるので、すぐに使えるようになりました。新人が加わっても、安心して利用を勧められます」と内田氏は語る。

分類項目を変えたり、新しい検索機能を加えるといったことが、テーブル構造を設計し直すだけで容易に対応できるEntier。

開発効率を上げつつ、柔軟な検索方法を提供できるEntierは、パイオニアのスマートループ構想の展開に、さらに大きく貢献して いくに違いない。

自動車教習所システム「MINERVA」システム概要

USER PROFILE

パイオニア株式会社のロゴ

パイオニア株式会社

[本社] 東京都目黒区目黒1-4-1
[設立] 1947年5月8日
[資本金] 490億4,900万円(2007年3月末現在)
[従業員数] 37,622名(連結、2007年3月末現在)

ホームエレクトロニクスとカーエレクトロニクスを事業の2本柱とするメーカー。カーナビの領域では、1990年にGPS(全地球測位システム)搭載機を発売して以来、常に技術革新の最先端を走り続け、AVエンタテインメントとカーナビゲーションシステムの融合を進めている。

特記事項

  • この記事は、「日経エレクトロニクス 2008年5月19日号」に掲載されたものです。
  • 組み込みデータベースEntierの詳細については、ホームページをご覧ください。
  • RDB:Relational Database
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
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