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ミドルウェア

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証券界と金融界を結ぶ日証金ネット。
日立のミドルウェアを組み合わせて、真にミッションクリティカルなシステムを実現

日本証券金融株式会社(以下、日証金)は、1987年から稼働してきた「日証金オンラインシステム」を17年ぶりに全面刷新して、オープン系技術を取り入れた「日証金ネット」を構築した。システム開発にあたっては、業務を熟知したシステムインテグレータである日本電子計算株式会社(以下、JIP)と、メインフレームからJavaTM VMまで自社開発してきた日立が緊密に連携して対応。分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」、Eビジネスプラットフォーム「Cosminexus」、統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」をはじめとする優れたミドルウェアとハードウェアの連携を中心に、オープン環境における真にミッションクリティカルなシステムの基盤確立に成功した。

リアルタイム決済を目指して 日証金の基幹システム全体を一大刷新

川井 康晴 氏の写真
日本証券金融株式会社
システム企画部長
川井 康晴 氏

福島 賢二 氏の写真
日本証券金融株式会社
システム企画部
次長
福島 賢二 氏

日証金は、証券取引に必要な資金や有価証券を市場から調達し、証券会社等に貸し付けることを主業務としており、日本の証券市場の発展に貢献してきた。なかでも、制度信用取引の決済に必要な資金や株券等を証券取引所の決済機構を通じて証券会社に貸し付ける貸借取引業務は、流通市場における株価の透明性・流動性の向上に大きく寄与している。

証券市場と金融市場のパイプ役である日証金において、さまざまなニーズに機動的に対応するうえで「スピード」は重要なテーマである。同社の決済に遅滞・遅延が生じれば、取引先のみならず市場全体の決済に支障をきたすこととなる。そこで同社は早くからコンピュータ化に取り組み、1987年には、証券会社と同社を結ぶ「日証金オンラインシステム」を構築。日立のメインフレームを中核としたこのオンラインシステムは、事故が起きたことがないという長年の実績で、業界から高い評価を獲得してきた。

しかし、証券決済においてはRTGS*1やDVP*2など処理のリアルタイム化が進められており、今後決済期間の短縮(T+1*3)も展望されるなど、スピードアップへの要求は一段と高まっており、自動化を前提としたSTP*4が不可欠な状況にある。

日証金 システム企画部長 川井 康晴氏は「部分的な手直しでは、リアルタイム処理やSTPへの要求に柔軟に対応することはできません。証券・金融市場の急速な変化に遅滞なく対応し、取引先の利便性向上に資するためには、既存システムを抜本的に刷新する必要があると考え、全面的な再構築に踏み切りました」と説明する。

さらに日証金 システム企画部 次長 福島 賢二氏は、「これまで日証金は、システムトラブルを発生させたことのない会社として、その信用力を業界からも高く評価されてきました。これからも証券・金融市場の発展に寄与していくには、信用力に加えてより迅速なサービスの提供が必須であり、証券決済制度の更なるSTP化に向け柔軟に対応していかなければなりません」と、時代のニーズを強調する。

*1
RTGS(Real Time Gross Settlement):取引毎に証券と資金の振替が同時に行われる即時グロス決済
*2
DVP(Delivery versus Payment):証券の引渡しと資金の支払いを相互にリンクさせ行われる決済
*3
T+1:約定日から起算して4日目に決済されている証券決済(T+3)を翌日決済に短縮する動き
*4
STP(Straight Through Processing):証券取引を完了させるまでの数多くのプロセスを、人手を介さず、電子的に一貫処理することを目指す動き。

オープン環境でのミッションクリティカル実現に緊密な協調関係で挑む

伊藤 弘章 氏の写真
日本証券金融株式会社
システム企画部
主任調査役
伊藤 弘章 氏

北村 秀樹 氏の写真
日本電子計算株式会社
金融証券事業部
日証金システム部長
北村 秀樹 氏

新しい「日証金ネット」構築は、2001年にスタートし、規模としても950画面、650帳票を超える、一大プロジェクトとなった。

信用取引・貸借取引は日本独自の取引形態であり、その中枢を支える日証金の基幹システムは、必然的に世界で1つのシステムとなる。システム構築は、長年日証金のシステムを手がけてきたシステムインテグレータであるJIPが担当した。証券取引は複雑で特殊な処理も多く、豊富なノウハウと経験をもつスペシャリストとしてのJIPの手腕が不可欠だったのである。そしてアーキテクチャ面でのバックアップは日立が一手に引き受けた。メインフレームからオープン系システム構築に欠かせないミドルウェア群まで、安定したトータルソリューションを提供できるメーカーとしての期待が日立に寄せられた。

「最近ではどのベンダーもミッションクリティカルということばを使いますが、当社のシステムは、真の意味でミッションクリティカル。この意味が業務面で理解できるJIPと、アーキテクチャ面で理解できる日立に支援を依頼しました」と、日証金 システム企画部 主任調査役 伊藤 弘章氏は言う。

さらに、JIPと日立は、プロジェクトの立ち上げに際して緊密な協調関係を築いた。プロジェクトを成功させるため、日立はハードおよびソフトの製品開発スケジュールを明確に示し、技術者による強力なサポートを行った。

「ミドルウェア機能などに要望がある場合、次期バージョンを待たずに、最短時間での改善も可能とするような、緊密な関係を構築できました。広域イーサネット、IP-VPN、ICカードなどの最新の技術基盤を取り入れながら、ミッションクリティカルな大規模システム構築を成功させることができたのは、この協調関係のおかげです」と、JIP 金融証券事業部 日証金システム部長 北村 秀樹氏は言う。

OpenTP1、Cosminexus、JP1連携でリアルタイム処理を実現

日証金ネットは、2004年5月、本稼働を開始した。約定・決済関連のデータ処理件数は日々数万件にもおよぶ。

システムは、DBサーバ/Web APサーバを含む基幹サーバから成り、DBサーバにはオープン連携に優れた日立のエンタープライズサーバ・メインフレーム「AP8000」とデータベースに「XDM/RD」を、Web APサーバにはAIXを搭載した「EP8000「(正系670、待機系630)を採用している。メインフレームとUNIXサーバならではの信頼性を活かしつつ、最新技術を存分に取り入れ、将来のインターネット取引にも対応できるIT基盤を確立した。

メインフレームとWeb APサーバのリアルタイム連携を実現するために、分散トランザクションマネージャ「OpenTP1」を採用。基幹業務を担うWeb APサーバは、OpenTP1との親和性が高いEビジネスプラットフォーム「Cosminexus」で構築した。

統合システム運用管理ソフトウェア「JP1」は、大規模なミッションクリティカルシステムを維持するために、おもに、2つの役割を果たしている。

第1は、5,000本に達するバッチジョブの管理。JP1を介してAPサーバ上のアプリケーションからメインフレーム上のバッチ処理を自在に起動することによって、STPの基本的な思想でもある業務のスピードアップとオペレーションミス撲滅を実現している。

第2は、サーバ稼働状況の監視。サーバ、ネットワークなどすべて二重化してその制御を行っているほか、自動処理される大量データの中からその発生に注意を要する特定データのみ抽出し、エンドユーザーにアラートで通知するというユニークな使い方にも活用されている。

STP実現に向けた最新IT基盤構築に成功

関口 純一 氏の写真
日本電子計算株式会社
金融証券事業部
証券システム部
情報サービスグループマネージャー
ネットワークスペシャリスト
関口 純一 氏

OpenTP1、Cosminexus、JP1という3つのミドルウェアを中核に、堅牢で信頼性の高いオープンシステム・プラットフォームを構築できた意義は大きい。日立は、レスポンスに問題があればミドルウェア間の連携を作り変え、テスト段階で不具合がみつかれば一夜でパッチプログラムを用意するなど、「スピード」を重視したきめ細かい対応で、「真のミッションクリティカル」を実現した。

「レスポンスが上がらない原因がどこにあるかわからなかったとき、日立はJavaVMが原因であることを短時間で突き止め、即座に修正してくれました。通常なら、JavaVMではなく業務アプリケーションを作り直すケースです。隅々まで自社開発をしている日立が、パートナーでよかったと痛感しました」と、JIP 金融証券事業部 証券システム部 関口 純一氏は語る。

Javaアプリケーションの性能はJava VMの性能に左右されるが、日立は、自社でJava VMをサポートできる数少ないメーカーのひとつである。したがって、CosminexusのJava VMも、必要に応じて即座にチューンアップすることができた。

「オープン系でありながら、これだけ大規模なシステムを高い信頼性のもとに構築できたのは、ミドルウェア間および業務アプリケーションとの間にも、ブラックボックスが存在しなかったため」と福島氏も評価する。

日証金ネットでは、数多くの新機能も搭載した。機関投資家などオンライン接続先を拡充する一方、一括ファイルによる大量申込機能やデータダウンロードによる照会機能の拡充も図った。一方で、約定から決済実行までのタイムラグを極小化するため、外接機関との決済照合の徹底した自動化、貸付条件充足状況の自動判定化を実現した。これにより、取引先・日証金双方の信用リスクや流動性リスクの削減が可能となった。

「バブル崩壊後、金融機関を取り巻く環境の変化から、証券決済に時間がかかることはリスクとして認識されるようになってきました。決済制度改革も道半ばですが、今後さまざまな要求にも柔軟に対応できるような、安全、確実かつスピードを実現できるインフラができました」と川井氏は強調する。日証金は、日証金ネットの構築により、取引先および社内ユーザーへの高い利便性を実現したうえに、STPに向けた取り組みに大きな一歩を踏み出したのである。

「日証金ネット」システム概念図

USER PROFILE

日本証券金融株式会社

[本社] 東京都中央区日本橋茅場町1-2-10
[設立] 1927年7月
[創業] 1950年2月
[資本金] 100億円
[売上高] 218億円(2004年3月期)
[従業員数] 236名(2004年3月末現在)

1950年、証券市場の安定と振興を目的に証券金融会社として発足。制度信用取引の決済に必要な資金、株券等の貸付(貸借取引)で圧倒的シェア。

PARTNER PROFILE

日本電子計算株式会社

[本社] 東京都中央区日本橋茅場町1-8-1
[設立] 1962年12月3日
[資本金] 24億6,000万円
[売上高] 311億円(2004年3月期)
[従業員数] 1,269名(2004年3月末現在)

IT技術のプロ集団として「対話と尊厳(Dialog & Dignity)」を基本精神に、証券・金融、官庁・自治体、科学技術、一般企業、教育分野に対し、情報処理サービス(アウトソーシング)、ソフトウェア開発、インターネットサービス、システム販売等を提供。

特記事項

  • この記事は、「日経コンピュータ 2004年10月4日号」に掲載されたものです。
  • JP1CosminexusOpenTP1の詳細については,ホームページをご覧ください。
  • AIXは、米国における米国International Business Machines Corp.の登録商標です。
  • JavaおよびすべてのJava関連の商標およびロゴは、米国ならびに他の国における米国Sun Microsystems, Inc.の商標または登録商標です。
  • UNIXは、X/Open Company Limited が独占的にライセンスしている米国ならびに他の国における登録商標です。
  • その他記載されている会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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