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日立ワークスタイル変革ソリューション

株式会社 日立製作所 働き方改革ソリューション本部 主任技師 駒井 章子

株式会社 日立製作所
働き方改革ソリューション本部
主任技師
駒井 章子

  • * 所属・役職はセミナー配信時点のものです

ニューノーマルへ向けRPA*1がクリアすべき4要件

コロナ禍により多くの企業で「出社対応をしない」働き方が前提となった今、オフィスワークには、新常態に即した最適化が求められている。その対応策の1つとして期待されるのが、オフィスワークの自動化を可能とするRPAだ。

「ニューノーマルに向け、RPAの適用拡大が効果的ですが、そのためにクリアすべき4つの要件があります」

そう指摘するのは、日立製作所 働き方改革ソリューション本部の駒井章子だ。

「1つめの要件が利用環境です。つまり、自動実行の高度化を図り、リモートでもユーザーがRPAを意識することなく業務に取り組める環境を整えること。2つめが業務選定・設計。非対面での業務手順の把握や、ロボット設計の容易化を図ることです。3つめが適用拡大。ハンコレスやペーパーレスなどに対応するため、既存のEUC*2(マクロ)との連携やOCRの活用などにより、自動化の適用範囲を拡大することです。そして4つめが安定運用。すなわち、RPAの構築数が増えても統制がとれ、かつ安定した稼働を実現することです」

*1
RPA:Robotic Process Automation
*2
EUC:End User Computing

以下では、この4要件を満たすニューノーマル時代のRPA運用を、適用例を交えて解説する。

適用例@:全国数百拠点で行ってきた検索業務を、リモートで自動化

まず、全国組織全体へのRPAの適用例を紹介する。ある企業では毎年、数週間で計数十万件の情報を検索しダウンロードするという定型業務を全国数百の拠点で行っているが、コロナ禍でリモートワークが本格化したことで、業務の大胆な見直しを迫られるようになった。この課題に対する解決策が、「サーバー拠点にRPA環境をつくり、各拠点の業務を集約してロボットに代行させる」というリモート構成の構築だ。

「まず、各担当者は検索対象の情報を自宅からファイルサーバーにアップロードします。すると、RPAが検索を行い、その結果をファイルサーバーに出力します。リモートでもユーザーがRPAを意識することなく業務に取り組める環境を整備するとともに、担当者の残業時間を削減できるようになります。さらに、サーバー上ではロボットの同時実行を考慮したライセンス構成をとることで、費用の適正化を図るといった効果もあります」

リモートワークの普及にともない、このように組織全体でRPAを導入し、業務の最適化を図るケースが増えている。

適用例A:自動化すべき業務を効率的に選定

次に紹介するのは、RPAの開発にかかる時間と手間を大きく低減する事例だ。

「RPAの適用拡大には3つの課題が立ちはだかっています。1つめの課題は、リモートワークでは各担当者の業務状況を把握できず、自動化の対象業務を選びにくいこと。2つめは、ロボットのフローや設計書の作成に工数がかかること。3つめは、開発者によるRPAユーザーへのヒアリングに工数がかかることです」

これらを解決するには、RPAの開発をリモートで進めることができ、かつ、設計プロセスの見直しが可能な施策が求められる。そこで駒井が挙げるのが、PCの操作を記録することで、非対面での自動化対象業務の選定やRPA設計を可能にする運用管理ツール、JP1/IT Process Operations for RPAだ。

「JP1/IT Process Operations for RPAは、マウスやキーボード操作、画面遷移操作を記録できる製品です。業務の手順をユーザーのPC上で記録できるため、そのデータをもとにRPAの開発や仕様書作成ができます。従来は対面で行わなければいけなかったユーザーへのヒアリングや作業の様子の見学・撮影が不要になるため、開発者の負担を軽減でき、RPA導入前後の効果検証もできるようになります」

適用例B:他ツールとの連携活用による効果拡大

ロボットの作業を高度化し、業務自動化の拡大を図る上で有効なのが、RPAとEUC(マクロ)との連携だ。EUCによる自動化はExcel上の作業に限定されるが、RPAもあわせて利用することで業務の自動化を拡大し、効果をさらに拡大できると駒井は語る。

「例えば、どの業務においても人間による判断や比較検証という工程が介在します。デスクトップ操作そのものを自動化できるRPAをEUCに組み合わせることで、マクロ処理の前後で人間がやってきた定型的な処理もロボットが代行でき、業務全体を自動化することが可能になります」

「あるコールセンターでは、オペレーターがPCに入力した顧客情報から対象データをAccessマクロでCSVに抽出し、所定の条件にしたがって人手で報告書を作成していました。これにRPAを組み合わせることで、CSVをもとにした報告書作成まで自動化することができ、人手による作業の削減に成功しています」

また、ペーパーレス化にともない導入が進むOCRとRPAの連携も有効だ。例えば、PDF帳票から所定の情報を抽出する定型業務にRPAを適用すれば、PDFからの文字の読み込みだけでなく、読み込んだ情報のCSVへの抽出、所定の管理用ファイルへの記録などといった一連の業務を自動化することができる。

適用例C:RPAは細かく作り、JP1でつなげる。リモートだからこそ、安定稼働の実現へ

RPAの活用が進み稼働ロボットの数が50を超えると、運用が煩雑になるだけでなく、ロボットの稼働が安定せず、結局人手による対応が生じてしまうという課題が顕在化する。

「数多くの工程を1つのロボットに実行させると、当然ですが処理が長くなり、作業が終了するまで時間がかかってしまいます。また、処理中にエラーが発生しても検知が遅くなるうえ、処理工程が長いのでエラー箇所の特定にも時間がかかります。このように稼働が不安定なロボットはいずれ使われなくなってしまいます」

解決のポイントとして駒井が挙げるのが、ロボットを「細かく」作ることだ。

「つまり、業務をリトライ可能な単位、リカバリーが容易な単位に細分化し、それぞれのジョブを実行する細かなロボットを作成するのです。日立の運用管理ミドルウェア『JP1』を適用することで、このロボット同士をつなげてスムーズに業務を実行させることができます」

上図のように、まずはJP1で「ジョブ1が終了したらジョブ2を実行し、それが終了したらジョブ3を実行する……」といったシナリオを定義する。次に、それぞれのロボットが割り当てられたジョブをシナリオに沿って順々に実行する。処理の途中でエラーが発生しても、ロボットが細分化されているのでエラー箇所を特定しやすく、リカバリーやリトライにかかる時間が短く済む。その結果、一連の業務を1つのロボットで実行させた場合に比べ、安定的に稼働させることが可能だ。

「今回ご紹介した内容は『働き方改革向けRPA統合ソリューション』として提供しています。RPAの本格導入や既存のRPAの再生など、お客さまの導入段階に応じた解決策をご用意しています。ぜひお気軽にご相談ください」

RPAの安定稼働の大切さを力説し、駒井は講演を締めくくった。

関連サイト

私たちが取り組む新しい時代の働き方 日立テレワークセミナーレポート