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  • ノジマ × GlobalLogic Japan 協創事例 お客さまに満足と感動とわくわくを届ける
    新たな顧客体験価値創造に向けた協創プロジェクト

    2023-06-28

    「何より驚いたのは、その圧倒的なスピード感です――」。独自の接客スタイルで高い顧客満足を実現する家電“質”販店・ノジマ。さらなる進化をめざして常に挑戦を続ける同社のデジタル家電専門店では、日立グループのGlobalLogic Japanとの協創による、新たな顧客体験の創造に向けたDXプロジェクトを開始しました。ここではアイデアの有効性を検証するPoC*1を中心に、現在も進行中の協創活動をご紹介します。

    *1
    Proof of Concept

    さらなる顧客満足をめざす協創プロジェクトが始動

    「家電量販店」ならぬ「家電“質”販店」、「売り場」ではなく「買い場」、「販売員」ではなく「販買員」――。量や数字ではなく、何よりも顧客体験のクオリティを追求し、どこまでも顧客の立場からビジネスを考える株式会社ノジマ(以下、ノジマ)には、その姿勢と企業文化を象徴するいくつかの言葉があります。

    同社のデジタル家電販買店の最大の特徴であり強みとなっているのが、店舗にメーカーの販売員を置かず、自社スタッフのみで接客対応する「コンサルティングセールス」です。メーカーにとらわれず、フラットな立場から顧客にベストな商品を提案するノジマ独自のこの接客スタイルは、顧客一人ひとりの潜在ニーズまでも引き出し、高い顧客満足を生み出してきました。

    しかしこのノジマ独自の接客には、多岐にわたるメーカーの商品に関する店舗スタッフの豊富な知識が欠かせません。また、その独自の接客スタイルの優位性は同業他社の知るところとなり、近年これに追随する動きも見られるようになりました。

    こうしたなか、「現状維持は退化」と考え、より高い顧客満足を追求してきたノジマは、GlobalLogic Japan株式会社(以下、GL Japan)との協創を通じた店舗内DXプロジェクトに着手。GL Japanは2021年に日立グループの一員となったデジタルエンジニアリングのリーディングカンパニーである米国GlobalLogicの日本法人で、本プロジェクトは2022年4月に設立された同社にとって初めて*2の本格的な協創活動となりました。

    *2
    2022年6月発表

    専門力と権限の両輪で価値を協創するチーム体制


    株式会社ノジマ
    取締役兼執行役販買推進部長
    國井 弘文 氏

    2022年6月にスタートしたプロジェクトには、ノジマからITシステム部長の山根 純一氏、販買推進部長の國井 弘文氏、サービスイノベーション部長の石原 彩子氏、さらに販買推進部 首都圏常磐地区長の内田 武志氏など、店舗運営やサービス開発、IT部門など関係各部の権限を持つ責任者をはじめ、現場を担う店舗従業員も多数参加。一方、GL Japan側はビジネスをハンドリングする「ストラテジスト」、ユーザーエクスペリエンスを構想する「デザイナー」、システム面を設計する「アーキテクト」、さらにはプロジェクトをマネージする「プログラムマネージャ」という4つのロールを核にスタッフが編成され、フロントアプリケーション開発で豊富な実績を持つGlobalLogicのインドチームをはじめとしたグローバル拠点からも多くのスペシャリストが招集されました。


    株式会社ノジマ
    執行役サービスイノベーション部長
    石原 彩子 氏

    そして、同じ機能・役割(ロール)を担う日本側のスペシャリストとグローバルのスペシャリスト同士でペアを組む「2 in the box」というチーム体制のもと、GlobalLogicによる先進的な技術やノウハウを、日本の市場特性や商習慣などに適応させながらプロジェクトを推進。さらに、日立からもデジタルエンジニアリングビジネスユニット Data & DesignのDXスペシャリストが参加し、協創空間Lumada Innovation Hub Tokyoの機能を活用しています。

    プロジェクトではまず、ビジネスの方向性を見極め、マーケットや顧客の分析を進めるために、店舗訪問や販買現場の課題発掘・抽出のための店舗スタッフへのヒアリング、そして、各部門の責任者も交えたアイデア検討のためのワークショップなどを複数回実施。そこで得られた知見やインサイトをもとに、GL Japanはまず計20ほどの施策アイデアをノジマに提案しました。ここからさらにその効果や実現性などが厳密に吟味され、それぞれのアイデアのエッセンスを取り込む形で、最終的に4テーマ・5案の店舗内デジタル施策案に集約。こうして2023年1月、「接客営業の生産性向上」や「顧客満足のさらなる向上」などに向けた一連のPoCがスタートしました。

    アジャイル開発を前進させた迅速な意思決定


    株式会社 日立製作所
    デジタルエンジニアリングビジネスユニット
    アプリケーションサービス事業部
    GLJapanビジネス推進本部
    主任技師
    赤時 秀典

    吟味された各施策アイデアが店舗で実際にどのように機能するか、店舗スタッフ自らその価値を試行・検証するPoCのデモは、メイン顧客層の異なる首都圏の2店舗を舞台に実施されました。

    各PoCではまず、GL Japanがクリックで画面が遷移する簡易的なクリッカブルUIを用意。店舗従業員に実際に操作してもらうデモを繰り返し、その操作感や機能性などに関する意見や要望を収集しました。さらに、これらすべてのフィードバックを「バックログ」として蓄積したうえで、対処すべき事項の優先順位を決め、機能ごとの小さなサイクルで工程を回すアジャイル開発によってPoCアプリケーションの制作とアップデートを反復。その成果をもとに、顧客のニーズを満たす最小限のプロダクトであるMVP*3の制作に向けて作業内容・範囲・期限などを明確化したスコープ定義への落とし込みを重ねていきました。

    GL Japan側で共にプロジェクトのマネジメントを担った赤時 秀典と初田 和子は、PoCにあたって、優先すべき事項に対する回答をノジマ側から明確に引き出すための「精度の高いコミュニケーション」に留意したと言います。さらに赤時は具体的な開発手順について、「変更の影響が少ない領域から開発に着手し、クリッカブルUIの作成・アップデートやそれに基づくPoCアプリケーションの開発・アップデート、それらをデモで検証した結果のフィードバックを管理するバックログの作成・確認・アップデート・洗い出しといった異なる階層のタスクを並行で進めました」と説明。加えて、「2 in the box」による国境を越えたリアルタイムコミュニケーションによる迅速で細やかな意見交換や、各業種に特化した基本部材「Digital Accelerators」の活用などで開発の生産性を向上させました。

    一方、ノジマ側もGL Japanのコアメンバーであるストラテジスト、デザイナー、アーキテクトの各ロールに対応した各部門の責任者による迅速な意見集約と責任ある意思決定で即応。初田は「トライアンドエラーで改善を重ねるアジャイル開発の場合、各自の意見にプロジェクトの方向性がブレないよう、決定権のある責任者に迅速かつ明確な意思決定をしていただくことが必要です」とアジャイル開発の要点を強調します。

    こうして開始から4か月後の2023年5月中旬、予定していたすべてのPoCが完了。その成果をもとにMVPの開発フェーズに移行し、さらにMVPを早期に本番環境で稼働させて改善を繰り返しながら、プロダクトの価値を最大化していく計画です。

    *3
    Minimum Viable Product


    GlobalLogic Japanとノジマの協創プロセス

    よきDNAを継承しながら、新たな顧客体験価値の創造へ


    株式会社 日立製作所
    デジタルエンジニアリングビジネスユニット
    アプリケーションサービス事業部
    GLJapanビジネス推進本部
    初田 和子

    PoCに対してノジマ側はまず、思い描いていたイメージがカタチになってすぐに出てくるアジャイル開発のスピード感を評価します。「クリッカブルUIは1週間後、PoCアプリケーションでも2週間後には、こちらの指摘や要望を反映した改良版が出てくる。そのスピードは圧倒的でした」と振り返る石原氏はさらに、「販買現場の意見を重視する当社は、煩雑な稟議(りんぎ)や迂遠(うえん)な根回しなどを省いた迅速な意思決定を実践してきました。今回のプロジェクトでは、GL Japanのスピード感と当社本来の企業風土がうまくマッチしたのだと思います」と分析。また、國井氏は「アイデアの一つひとつが、間違いなくお客さまに喜んでいただけるものになると思います。今からお客さまの驚かれる表情や楽しそうにお買い物をされる様子が目に浮かぶようです」と本格導入への期待を膨らませます。

    さらに両氏は、当初は別々のものととらえていた5つのPoCがデモなどを重ねていく過程で「実はすべてつながっていることが分かった」と口をそろえます。「お客さまが来店され、欲しい商品を探して、検討し、ご購入いただく、その一連のエクスペリエンスを要所要所で支える仕組みができあがったように思います。お買い物をすることの楽しみや喜び、わくわく感をより一層感じていただけるのではないでしょうか」と石原氏。そして國井氏も今回の店舗内DX施策が店舗従業員のコンサルティング能力の底上げにも寄与する点に触れて、「的確なコンサルティングを通じて、お客さま自身も実は気づいていなかった潜在的なニーズを発掘できたりするものです。今回の施策でネットにはないリアル店舗の強みをさらに高めていけると思います」と語ります。

    何よりもお客さまの満足と感動を最優先してきたノジマ。長年培ってきたその経営哲学は、新たな店舗内DX施策にもしっかりと継承されているようです。

    新しい価値の創出をめざして、挑戦と協創は続く

    PoCの成功を受けて、ノジマ側の各部門を取りまとめるキーパーソンの強いコミットがあったからこそ、GlobalLogicのスピード感に並走してもらえたと赤時。「日本とインドの、そして、GlobalLogic側とノジマさま側の各ロールが有機的に機能する“ワンチーム”の力を最大限発揮できました」と、その結束力を次なる開発フェーズでも発揮していきたいと意欲的です。

    一方、初田は最初に正解を決めるのではなく状況に応じて柔軟に対応できるアジャイル開発という手法の価値を再認識できたと振り返ります。「GlobalLogicでよく言われる“Fail fast, learn quickly”(すぐに失敗し、素早く学ぶ)や、“Market is the laboratory”(市場が実験場)といった言葉の意味を、身をもって実感しました」と、試行錯誤と創意工夫を重ねた初めてのPoCから、多くの学びと気づきを得られたようです。

    これまでノジマは、店舗という現場を最重視し、従業員一人ひとりが自ら考える企業文化を育んできました。だからこそ、これから開発するMVPに対して多くの現場からたくさんの意見や要望が寄せられるだろうと石原氏。「作って終わりではなく、より便利で進化したやり方を探求しながら、常に一歩先の新しいことに挑戦していきたいですね」という言葉どおり、新たな価値創出に向けたノジマの取り組みに終わりはありません。現場を革新し、お客さまに感動をもたらすアイデアを一つひとつ実現しながら、それまでにない顧客体験価値を追求するノジマとGL Japanのチャレンジは、これからも続いていきます。

    首都圏を中心とするデジタル家電専門店運営事業や全国での携帯電話キャリアショップ運営事業のほか、インターネット事業や海外での店舗運営事業などを展開。主力のデジタル家電専門店では、メーカー各社から派遣される販売員を置かず、自社従業員がフラットな立場で幅広い選択肢から一人ひとりの顧客に最適な商品を提案する「コンサルティングセールス」を通じて、高い顧客満足を実現している。

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