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多様なメンバーとのコミュニケーションを通じ、
AI活用による成長型事例創生に取り組む

2023-03-31

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國友 正人

株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.

主任技師

株式会社日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回話を聞いたのは、LDSLの主任技師、國友正人です。半導体事業時代に培ったデータ活用スキルと、その後のデータ分析の経験を武器に、AIを活用した成長型事例創生の最前線に身を置く國友は、どのような課題に取り組んでいるのでしょうか。自身がリーダーとしてけん引する3つのチームと、これからめざす3つのテーマについて語ってもらいました。

日立製作所ではどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?

日立入社から約20年間は半導体の製造工場で勤務し、製造プロセスや生産技術の開発運営に携わりました。そこでデータを活用した品質維持・向上業務に従事した後、2013年頃に半導体の業務から離れ、新設されたビッグデータを取り扱う部署へ異動しました。半導体事業は業務の中でデータを取り扱うことも多かったので、ビッグデータと親和性が高いと判断されたのだと思います。

異動後は鉄道の線路の劣化分析や鉄道利用のお客さまの声分析など、主に交通系のデータ分析を担当し、これをきっかけに交通系のお客さまへ出向し、データ分析組織の立ち上げ・運営支援をしました。現在の部署に戻った後は、Lumada事業の拡大を目的としたAI活用による成長型事例の創生と、その推進に欠かせないデータサイエンティストの育成などに携わっています。

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現在関わっているAI活用による成長型事例創生プロジェクトについて教えてください。

「Lumada事業をけん引する成長型事例創生をめざす」ことが部署のミッションです。その実現に向け、15名を超えるメンバーで構成する3つのチームでプロジェクトを進めており、私は横断リーダーとして全体を取り纏めています。

一つ目がスマートシティや社会インフラの強靭化など、Lumadaの重点テーマとなる成長型事例創生に取り組むチームです。自治体や、鉄道会社・電力会社といったインフラ系企業などの課題に対し、AI活用やコンサルティングを通じて解決に取り組んでいます。

二つ目が先進AIを活用した成長型事例創生に取り組むチームです。例えば、お客さまのエンドユーザーに対する営業活動を日立が開発した先進AIを用いて支援するなど、技術を起点としたビジネス推進に取り組んでいます。

三つ目が事業ドメイン知識とAIを融合して成長型事例創生に取り組むチームです。例えば鉄道分野では、車両製作や電力設備を手掛けている日立の知見を活用し、パンタグラフの損傷を画像AIで検知するような仕組みを作ったりしています。

このようにAIを活用したビジネスチャンスをさまざまなところに見いだせるのは、社会基盤を支える"もの作り"を続けてきた日立ならではの強みです。この優位性は我々の武器ですので、今後も強みを生かせる分野には積極的に進出していきたいと思っています。

多くのチームメンバーをまとめ上げるコツはありますか?

メンバーには非常に個性豊かな面々が揃っています。ベテランはキャリアに裏打ちされた知識や発想力があり、若い方は大学で学んだデータサイエンスのスキルが高く即戦力として活躍中です。メンバーに安心して実力を発揮してもらうためには、心理的安全性が高い職場環境が必要不可欠であると考えています。

一般的な取り組みではありますが、毎週金曜日にミーティングを設定し、メンバー同士が交流する時間を設けています。話が盛り上がった日には、その勢いのままチームで食事に行くことも珍しくありません。昔ながらのコミュニケーションかもしれませんが、誰も孤立せずに誰かが一緒にいてくれると感じられる関係を作るように心がけています。

一方で、修羅場を乗り越えるような濃密な経験は、心理的安全性を優先しているだけでは積めないのも事実です。若手からは、もっと成長できるチャレンジングな取り組みをしていきたい、という声も聞こえてきます。3つのチームともキャリアの中でピンチを乗り越えてきた経験を持つ人がリーダーになっていますので、成長にはある程度プレッシャーも必要であるのは間違いないでしょう。チームを信頼して働きつつ前向きなプレッシャーを受けられるようなバランスのとれた環境を作っていくことは、人財育成における大きなポイントと考えています。

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コミュニケーション重視のチームマネジメントはビジネスにいい影響を与えていますか?

3つのチームは、それぞれ先進的で正解がないものを追い求めています。チームの単位がレポートラインになっていますが、全てにおいて縦割りになっているわけではなく、技術的な部分では横断し補完しあえる環境になっていると感じています。

これまで独立していた技術を横断して掛け合わせ、社会課題の解決に取り組むことがLDSLの役割です。日立創業の「和・誠・開拓者精神」を体現しているという点においては、我々の存在はよい影響を与えているのではないでしょうか。

國友さんご自身は今後どのような取り組みをされていくのでしょうか?

私自身に求められる取り組みの方向性には【ヒト】【モノ】【カネ】の3つのテーマがあると考えています。

【ヒト】は魅力あるチーム作りです。若手のもつデータサイエンス力は、LDSLにおける大きな財産です。我々ベテランがキャリアの中で培ってきたコンサル力に、若手のデータサイエンス力を価値として加えれば、あらゆるビジネスに貢献できる魅力的なチームが実現できると思っています。それぞれの世代が持つ武器を生かしたチーム作り、それを実現できる人財育成は、私に求められている重要なミッションのひとつです。

【モノ】はお客さまに求められるAI活用ツール・システムの提供です。それぞれの課題に応じて、ゼロからツール・システムを構築するには、ある程度のコストが必要です。そのため全てのお客さまに受け入れていただいているわけではなく、時には既存の他社製ツールを指定されることもあります。この点は我々の課題だと感じていまして、案件の引き合いにつながるようなキラーコンテンツを持ちたいと常々思っています。

【カネ】はAIの価値の周知です。近年はAIが持つ高い価値が広く認識されはじめていますが、まだまだ価格の大部分はシステム本体の価格であり、AIの価値が価格に反映されません。AIそのものの価値を価格で評価していただけるようなビジネスモデルの構築は、今後の日立にとって大きな課題の一つだと考えています。

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価格を気にして効率化ばかりを求めると、どうしても先進的な技術は生まれにくくなります。もちろん、お客さまに安価で品質のよいものを提供するのはビジネスの基本姿勢ですので、良質なシステムの提供と効率化によるコストダウンのバランスを取りながら、3つのテーマの実現に取り組むことが目下の課題です。

さまざまな分野におけるDXの実現は、多くの事業を対象としてきた日立の強みが生かせると考えています。このような背景の中で、私自身、多様なメンバーとのコミュニケーションを通じ、AI活用による成長型事例創生に取り組み、その先にある社会貢献をめざしていきたいです。

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