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Hitachi

LDSLを起点につながりを。
データサイエンスが創るニューノーマルと社会イノベーション

2021-03-31

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中川 弘充

株式会社日立製作所 Lumada Data Science Lab.

研究員

日立製作所が2020年4月に設立した「Lumada Data Science Lab.」(以下、LDSL)に集う一人ひとりに光をあてるインタビューシリーズ。今回登場するのは2008年の入社以来、一貫してデータサイエンスの研究に取り組んできたLDSLの中川弘充です。コロナ禍における働き方改革や再生可能エネルギー、ヘルスケアなど時代が求める課題に取り組んできた中川に、データサイエンスが作り出す未来について聞きました。

データサイエンティストとして取り組んだ仕事の事例を教えてください。

コロナ禍におけるニューノーマルな働き方を支援するサービスのための研究開発をしています。具体的にいうと、スマートフォンの計測データを使って、従業員の勤務場所や濃厚接触の可能性を管理できる「勤務場所・濃厚接触管理サービス」のためのシステム開発です。働く場所への関心が急速に高まり、安全な仕事空間の確保や効率的な働き方の支援が企業の喫緊の課題になっています。使用頻度が下がっているオフィスに積極的に投資しにくい状況下に対応すべく、スマートフォンへアプリをインストールして、既存の設備に少量のビーコンを設置する程度で位置の管理が実現できるようなシステムをめざしています。多くの企業から問合せをいただいており、研究開発のスピードを上げています。

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元々推進していた技術開発を新型コロナウイルス対策に転用したのでしょうか?

元々はフリーアドレスなど、新しい働き方に対応するためのサービスを見据えて技術開発をしていました。働き方をAIで認識して管理するという世界観をめざしていましたが、コロナに対応するために角度を変えました。フリーアドレスどころか在宅勤務が進んでいるので、会社の中の自由というところから、自宅など多様な場所で働くという世界観にまで広げています。

ニューノーマルな働き方を支援するためには、まず働き方を理解する必要があります。そして、働き方に合わせたオフィス空間の提供など総合的な支援の方向に進めることが必要です。具体的には、オフィスの活用状況を位置のデータから見える化して、空間設計に役立てます。また、感染症が発生した場合には導線の分離をしたり、フロア閉鎖の判断の拠り所にするという観点も出てきます。

個々人の働き方改革も重要なポイントです。キー操作やマウス操作などPCの操作ログを分析して働き方を定量的に把握し、健康面に配慮したり、効率化していく研究もしています。このように、働き方全体に広がっていく話だと考えて、研究開発を進めています。

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印象に残っている仕事について教えてください。

エネルギー分野の仕事は印象に残っているものの一つです。日立は風力発電システムの提供から運用保守までを広く担っていますが、その部品はかなり大きなものなので、調達や保管が容易ではありません。また、風力発電システムは山岳や丘陵に加えて洋上などで稼働しますが、海の上にあるとメンテナンスも一筋縄ではいきません。そこをデータ分析で効率化したいという課題があり、研究開発に関わることになりました。

風力発電機にかかる力や痛み具合などをデータ化するため、物体の伸縮度合いであるひずみを計測するためのセンサーを取り付けます。そのひずみセンサーで取得したデータから風力発電機の稼働状況を分析し、オペレーションの方針やメンテナンスの時期を判断するシステムを開発しました。O&M(Operation and Maintenance)という言い方をしますが、風力発電システムの運用・保全をデータから行う試みです。

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私は元々、サーバーやデータベースなどのプラットフォームやデータ処理のテクノロジーを扱う部署にいました。IT系の研究者です。このプロジェクトではOT(Operational Technology)系の研究者や事業部門の技術者の方々と一緒になって全体のプロジェクトを遂行しました。“One Hitachi”という言い方をしていますが、それぞれ違った立場の人たちが一つのチームになって目的を達成したことに充実感を覚えました。

データサイエンティストとしてLDSLで働く魅力はどこにありますか?

LDSLを起点につながりが生まれるところが魅力ですね。協創という言い方をしていますが、お客さまとの協業の場になっていますし、データサイエンスという側面で日立グループ全体をつなげる役割も果たしています。

LDSLはLumadaによるデジタルイノベーションを加速させるため、データサイエンティストが連携して集まる組織です。先端技術やデータ利活用ノウハウ、OTナレッジの蓄積、活用などをミッションに掲げています。私自身はさまざまな分析の案件に関わり、得られた分析のノウハウを社内で共有する活動をしています。教育の仕組みも充実していて、AIアナリティクス分野の人財強化のために各セクターから実習生を受け入れて、OJTでデータ分析に取り組むプログラムを提供しています。

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もう一つのミッションはオープンイノベーションの推進です。私が研究開発のテーマリーダーとして関わったAIによる歩行解析のプロジェクトでは、産学連携にも積極的に取り組んでいます。日立ハイテクが事業化を推進しているもので、大学との歩行解析の共同研究に、計測・解析技術の研究開発を行う協力者として研究所が参画しています。高齢化が進む中、健康寿命が着目され健康増進の重要性が高まっています。フィットネス業界向けにプロトタイプ開発した歩行解析システムでは、専用のカメラで撮影した個人の歩行動作をAIで分析し、パターンを特定します。そして、AIが運動機能に関わるトレーニングメニュー案を作成します。歩行動作の分析によるトレーニングメニューの作成にはトレーナーの専門的な知識や経験が必要とされていますが、トレーニングメニュー案をAIで自動作成することで、トレーニング効果の確認機能も含めてトレーナーの支援を行えるようにしました。

今後、実現したいことを教えてください。

ニューノーマルな働き方が今後ますます進化していく中で、デファクトスタンダードになるような業務総合支援ソリューションの開発に取り組みたいです。これまでも多くのデータ分析の案件に取り組んできましたが、今後もデータサイエンティストとして、お客さまとの協創を推進し、社会にイノベーションを起こしていきたいですね。