
企業内に分散する財務情報と、サステナビリティ情報を含む非財務情報を統合管理し、データの収集から有価証券報告書の法定開示までを一気通貫で支援する「WizLabo Synapse(ウィズラボ シナプス)」。これは、2025年12月の宝印刷株式会社(以下、宝印刷)と日立の協業契約の締結を機に、宝印刷が提供する統合型ビジネスレポートシステム「WizLabo」と、日立が提供するESGデータの収集・可視化・分析支援ソリューション「ESGマネジメントサポートサービス(ESG-MSS)」のノウハウを掛け合わせて誕生しました。なぜ宝印刷は日立をパートナーに選んだのか。本協業プロジェクトの立役者である皆さまに、お話を伺いました。

池主 丞
宝印刷株式会社 執行役員 ICT営業部長 兼 デザインセンター担当 兼 コミュニケーションデザイン室担当
2004年に株式会社スリー・シー・コンサルティングに入社。 それ以来20年以上にわたり、開示書類自動作成システムの開発、販売、導入に携わり、 200社超の導入PJに関与。 2015年に宝印刷株式会社にITサービス営業部次長として入社。2019年7月に執行役員に就任。

山口 美寛
宝印刷株式会社 ICT営業部 ICTプロダクト推進課 課長代理
大学卒業後、宝印刷入社。営業部に配属。大手クライアントを中心に提案営業に従事。2025年7月より現職のICT営業部に着任し、「WizLabo」の提案営業に従事する傍ら、「WizLabo Synapse」のプロジェクトに参画。ICTプロダクトの企画・営業に注力している。

萩原 晶子
株式会社日立製作所 金融システム営業統括本部 事業企画本部 ESG推進室 部長代理
日立製作所にて金融機関向け営業に従事。3年前より事業企画部門へ異動し、現在は新規事業や協業プロジェクトの推進に携わる。本協業では、検討フェーズの後段から参画し、ニュースリリースの企画・作成を担当。

南都 慎弥
株式会社日立製作所 金融システム営業統括本部 事業企画本部 ESG推進室 主任
2024年7月に日立製作所へ中途入社。ESG推進室にて、ESGマネジメントサポートサービス(ESG-MSS)の新規事業開発に従事し、企画から営業まで一貫して担当。宝印刷との協業においては、企画提案や方向性検討を主導し、プロジェクトリーダーとして企画・開発・営業まで幅広く推進している。
今回の協業プロジェクトが始まった背景には、2023年1月の「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正による、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示義務化や、2027年3月期からは、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)基準への段階的な準拠が義務化される予定であるといった外部環境の変化があると思います。これにともない、開示実務にも大きな変革が求められているかと思いますが、企業の開示担当者の皆さまが抱える課題には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
池主:
財務情報の開示であれば、グループ会社からのデータ収集で完結していましたが、非財務情報の開示には、サプライヤーからもデータを収集しなければなりません。そうなると、単純にデータ量が膨大になりますし、それらを取りまとめて開示につなげるには、業務負荷が高まります。 法定開示ですから、当然、非財務情報にもデータの正確性が求められます。その正しさを示すために、これまで経験のない“非財務情報の正しさを示すための第三者保証対応”にも追われることになります。 また、SSBJ基準が原則主義であることも、難易度を上げている要因のひとつでしょうね。一定の原則だけが示されており、実際の設計や適用方法は各企業の判断に委ねられています。自由度が高い分、企業側のリテラシーや判断力が問われるとあって、企業担当者の皆さまは実務上の難しさを感じておられるようです。
南都:
そうですね。私もお客さまの最大のペインは「どのように開示すれば良いのかがわからない」点にあると考えていました。開示の方針が決まらないと、「どんなデータを・どうやって集めるか」を考えられませんから。だからこそ、データは財務・非財務もまとめて、収集から開示までを一体で考えるべきであり、我々に足りない財務情報の開示領域に強みを持つ企業と手を組みたかったんです。
では、協業の検討が始まったきっかけは、南都さんからのお声がけだったのですか?
南都:
そうですね。2024年11月に、私が宝印刷さんのセミナーに参加して、「何か一緒にできませんか」とお声がけさせていただいたのが、最初の接点でした。
萩原:
しかも、ちょうど同じタイミングで、2024年12月に私が登壇したセミナーに宝印刷の別の執行役員が参加されていて、アンケートに「何かご一緒できそうな気がします」と書いていただいたんですよね。それでご連絡しようと思ったら、南都から「あれ?もう打ち合わせの日程、決まっていますよ」と言われて……(笑)
日立からのアプローチをどのように受け止められましたか?
池主:
最初はどんな話になるのか、まったく全貌が見えていなかったので、とりあえず互いにプロダクトのデモをするところから始めました。すると、システム要件が近しいだけでなく、双方の思想が極めて近しいことがわかったんです。 従来のような、単に法令上の義務を果たすための開示から 、投資家をはじめとするステークホルダーに目を向けた“企業価値向上のための開示へ”と、開示が質的に大きく転換していくなかで、「開示を『義務』から『価値』へ」という宝印刷のメッセージと、「開示のための開示ではダメだ」という日立さんのメッセージには、同じ問題意識が込められていると感じました。
そんな運命的な出会いを果たした両社ですが、協業の検討が進むターニングポイントとなったエピソードがあれば教えてください。
池主:
当初は、ESG-MSSからWizLaboへ、APIでデータ連携できるようにしようという話だったんですよね。WizLabo Synapseのような新しいプロダクトを共同開発する話ではまったくなかった。しかし、議論を重ねるうちに、「これは単なる連携ではなく『共同事業』だ」という話になっていき――。
南都:
私としても、セミナーでお声がけした当初は、API連携をイメージしていたんですよ。けれども、議論を重ねるなかで、両社の設計思想や価値観が近しいことがわかったので、「一度フラットに10年先のあるべき姿を描いてみませんか」と提案させていただきました。 そのために必要な機能やロードマップなどもお示ししたところ、「やはり我々は互いを補完し合いながら、ともに社会課題を解決していくべきだ」ということになって。1つのプラットフォームとしてWizLabo Synapseを共同開発していく方針が決まった瞬間は、心底ホッとしたのを覚えています。
池主:
そうだったんですね。日立さんからのご提案は、我々にとって、まさに渡りに船でした。先ほど南都さんもおっしゃっていたように、本来、データ収集から開示までのプロセスは一体であるべきなんですよね。非財務情報まで含んだディスクロージャーに関するデータ周りのプロセスをすべて統合したいと常々考えていたので、「我々の夢を一緒に叶えてくれるのは、日立さんしかいない」という思いでした。
連携ではなく協業のほうが、お客さまに提供できる価値が大きくなるからでしょうか?
池主:
そうです。API連携だと、どうしてもつなぎ作業が必要になり、学習コストが発生します。それはお客さまにとって、何の価値も生みません。それに、第三者保証の観点でも、財務と非財務でシステムが分かれていると、それぞれを監査しなければならず、監査工数が増えてしまいます。 その点、WizLabo Synapseなら、統合された1つのプラットフォーム上で、財務・非財務のデータを網羅的に参照・分析できるようになります。これにより、現在、多くの担当者の方々が苦労されている「非財務のKPIが財務に対してどのような影響を与えているか」を明らかにできるようにもなり、投資家からの期待に応えることができます。その結果、有価証券報告書というドキュメント自体の価値が向上し、さらには持続的な企業価値の向上にも大きく寄与していくはずです。
山口:
従来の有価証券報告書は経理部門が中心となって作成されていましたが、非財務情報も入るようになると、サステナビリティ推進部門や経営企画部門、人事部門など、より広範な部門が関与する必要があります。そうしたなかで、システムで部門やプロセスを横断的につないでデータを一元管理できるWizLabo Synapseの価値は、より一層大きなものになると考えています。
WizLabo Synapseで、どのような価値を提供したいですか?
池主:
企業価値の向上はもちろんなのですが、それだけでなく、開示業務に関わる人たちが正当に評価される世界にしていきたいですね。開示業務に関わる方々は皆さん非常に優秀であるにもかかわらず、減点主義のなかでプラス評価を受けにくい現状があります。 有価証券報告書は、正しくて当たり前。もし間違えば、社長名で訂正報告を出さなければならないという、大きな責任を負っている。WizLabo Synapseを、こうした文化を変えるきっかけにしたいと考えています。
萩原:
まさに。非財務情報の開示にかかわるサステナビリティ推進部門でも、同様のことが言えます。開示内容に対して大きなプレッシャーを負っているにもかかわらず、コスト部門として見られがちで、評価につながりにくいんですよね。労ってもらえても、褒めてもらえるわけじゃない。 開示業務の真価を理解してもらうためにも、WizLabo Synapseで財務・非財務のデータを一元管理し、いつでも経営判断に生かせる環境をつくることが重要だと思っています。
南都:
開示業務にかかわる人たちはP/LやB/Sといった企業の根幹データを扱っているわけですから、本来、管理部門ではなく、企業戦略やM&Aなどの意思決定に貢献するような企画部門であるべきだと考えています。 いくらAIで“それっぽい”分析ができたとしても、企業ごとに異なる文化や風土、現場の人間関係、KPIの意味づけなどを踏まえながら、“数字”をどう解釈し、いかに活用するかを考えるのは、開示の最前線にいる人たちにしかできません。 だからこそ、WizLabo Synapseで開示業務にかかわる皆さんを作業から解放したい。開示のための開示ではなく、経営の質を高めるための時間を創出し、企業変革の契機となるプロダクトになると期待しています。
池主:
作業からの解放はまさにその通りで、優秀な人たちが作業に追われている現状は、すぐにでも終わらせるべきだと思っています。不要な作業はWizLabo Synapseに任せてもらい、開示にかかわる人たちがイキイキと会社を前に進められるようにしていきたいです。
WizLabo Synapseについて: