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株式会社リクルートキーマンズネット(新規ウィンドウを開く)に2011 年 11 月 30 日に掲載された記事より転載掲載しています。
サービス内容、料金などは、掲載日または更新日時点のものです。
株式会社 日立製作所
【ビッグデータ対談】来るべき「ビッグデータ活用」時代に向け、企業が進むべき道

●アイ・ティ・アール 生熊 清司氏(以下、生熊氏)

「ビッグデータ」は、今年に入ってから目にする機会が増えた言葉です。これまでも情報が激しく増加していると言われてきたのですが、企業は、企業内にあるデータの分析をしていればよいという状態でした。ところが今、どうもこれまでとは違うぞと、このままでは“想定外”の問題が起きた時に対応できないようだと分かってきました。
これまでと同じ傾向のことで先を見通せればいいのですが、最近は情勢が大きく変化するような事態が起きています。金融や経済がグローバル化したことも要因で、世界のどこかの地域で起きた問題が、またたく間に世界中に波及して、世の中がガラッと変わってしまうこともありえます。計画を立てながら動いていたのでは間に合わない、データを持っていない事柄に対しても対応しなければならない、という時代が訪れています。
そのためには、今まさに起きているファクト(事実)と、社会にあるデータをうまく取り入れないと、どのような変化が起きているか分からないし、変化に対応できないと企業は考え始めています。

●日立 山口 俊朗氏(以下、山口氏)

これまでは社内にデータを蓄えて一定期間後に処理して情報を得ていましたが、それでは“想定外”の変化には対応しきれないという現状ですね。必要な情報や価値ある情報は、どこかからやって来ると思っていても来ない、変化に対応するためには、自分でデータを取りに行かなければならない…という状況でしょうか。

●生熊氏

変化に対応するには、たくさんのデータをかき集めて来る必要がありますが、そのようなデータは社内にはありません。経験していないことが起きているわけですから、社内のDWHを探っても見つかりません。
そうすると社外にあるデータから、今起きていることをとらえる必要があります。その重要な要素となるのが、インターネット上のデータです。その中でも、FacebookやTwitterなどSNSに参加している人数は数億人にも上り、1つの国の人口に匹敵するほどになりました。これらが今、中東や北アフリカ諸国の民主化運動に大きな影響を与えたことは皆様もニュースでご存じの通りです。つまり、このようなインターネット上の情報も、分析の対象として無視できない状況となっています。
しかし、このような膨大かつ雑多なデータの中から価値あるデータを見つけるというのはまるで、砂漠から宝石を見つけるようなものですから、これまでとはまったく違ったデータの扱い方が必要となります。

●山口氏

一方で、大企業では、自分自身が持っているデータも増大していますので、社内データの処理にかかる時間が増えています。例えば経営層に「あのデータを調べてほしい」と言われた時に、1週間かかっていては意味がありません。その日のうちに分かってこそ意味がある、というようにスピード感が重要視されています。だからこそ、大量のデータを高速処理するシステムが求められるようになりました。そんな折に登場した、大規模データの分散処理が行えるオープンソースソフトウェア(OSS)のHadoopの価値は大きいと感じています。
このような新しい技術が現れた背景には、ストレージやサーバなどハードウェアがコモディティ化してきて、大容量化や高速化の一方で低価格化したことが挙げられます。これらを組み合わせることで、ビッグデータを処理できるソフトウェアやアプライアンスが現実のものになってきている。つまり、コンピュータのアーキテクチャ自体が変わってきているのですね。
そうなると、これまで処理しきれずに捨てていた情報、法令で求められてただ溜めていた大量のデータでも、ビジネスに活用できるのなら「何かに活かしたい」「ビジネスに使えないだろうか」と考えるようになりました。

●生熊氏

アイ・ティ・アールでは毎年「IT投資動向調査」を行っていますが、3年ほど前から企業では、ITコストや業務コストの削減を最重要視していたものが、ITをビジネスや経営に貢献させることをより重視するように変化しています。ITでのコスト削減は、やりつくしたと。国内のみならず海外との競争も厳しくなってきた今、利益を上げるためにも、ビッグデータに期待が集まっているのではないでしょうか。

●山口氏

これまでコスト削減のための“手段”だったITを、 “武器”として活用していこうというように意識変革が起きているようですね。経営層、CIO、CTOは、ビッグデータを活用することが企業競争力を生み出す源泉になると感じ始めているのではないでしょうか。何ができるのか、一緒に模索したいという声が私たちにも届くようになってきています。

●山口氏

日本ではまだ、試行錯誤している企業が多いのですが、少しずつビッグデータの活用を始めている企業や団体が出てきています。
まず、東京証券取引所の事例を紹介しますと、日立の大量データをストリーミング処理するシステムを導入することで、株価指数配信サービスの高速化を実現しました。相場の変化が指数に反映されるのに最大で1秒かかっていたものを、10ミリ秒以下で反映できるようになるという効果を上げています。その結果、マーケットの動向をより素早く細かく把握して取引を行うことができるようになりました。

●生熊氏

証券取引所はビッグデータを扱っていますし、コンピュータの処理速度が取引の命ですから、社会の要請や利用者のニーズに適った活用の仕方ではないでしょうか。日本ではほかにも、公共系のビジネスでビッグデータの活用が期待できそうです。社会インフラの分野でも、例えば、車載のGPS機器がデータを送信して瞬時に判断することで渋滞解消に貢献できるといった試みが今、大手自動車メーカーでも行われていますね。

●山口氏

まさに日立でも、都内を走行するGPSを搭載した約2500台の自動車の位置情報を活用し、3年ほど前に地図上に渋滞情報として可視化するという試みを行いました。高速道路にはセンサがあるので渋滞情報は分かりやすいですが、一般道の渋滞を知るためには、実際に走る自動車にセンサを付けて、それを吸い上げた大量のデータを活用しようという取り組みです。現在は、多くの自動車にGPSが搭載されていますので、可能性は更に広がっていると考えています。
また電力の分野では、グローバルな規模でビッグデータを活用している例があります。日立は火力プラントを世界規模で展開していますが、問題なく動いているかどうか、稼働情報を把握するのは大変なことです。そこで世界中のプラントにセンサを付け、衛星回線を通じて、温度、振動、圧力といったデータを取得しています。取得した情報から、部品の取り換え時期を判断し、船で輸送する時間や製造にかかる時間などを逆算、何ヵ月前には製造開始する、といったことを割り出しています。
ほかにも、日本でビッグデータを活用している例としては、リクルート社がHadoopを用いてビッグデータを分析しています。

●山口氏

教育の分野でもビッグデータの活用に関する研究が始まっています。中でも北海道大学では、クラウド環境でビッグデータの分析・研究が行えるためのHadoopなどの仕組みが用意されています。全ての大学で大きなデータセンタを持つことはできませんから、全国の大学にサービスを提供する「北海道大学アカデミッククラウド」というクラウド環境構築を日立が行い、クラウド環境でもHadoopが有効に機能する工夫をしています。同様の環境を提供することで、リソースを持たない企業でも、クラウドを使えばビッグデータの処理を始めることができるというケースです。

●生熊氏

このようなケースは、これまではリソースが少ないから、エンジニアが少ないからとビッグデータを使ったビジネス展開をあきらめていた中堅・中小企業の人たちにもあてはまりそうです。クラウドを使えば、リソースを持たなくてもビッグデータの分析が実現できるということですね。
それに、まずは短期間のトライアルができるのもクラウドのメリットでしょう。私はこれまではエンタープライズ向けのIT製品には“試食”がなかったと感じています。でも、クラウドを使えば「デパ地下で試食」するように、新しいシステムの“試食”ができます。イニシャルの金額を抑えて、アイディアを実現するために何回もトライすることができる。これは、ビジネス上のリスクを避けたい今の日本企業にとっても、挑戦しやすい環境ができたという意味でとても大きなメリットではないでしょうか。

●山口氏

やはり「途中でやめる」という選択肢を残しておきたい企業もいるはずです。だから日立では、ビッグデータ分析に興味を持つ企業にクラウド上でHadoopが使えたり、リアルタイム分析が行えたりという、安価にトライアルできる場が必要と考え、サービスとして用意することにしました。

 

●山口氏

今、日立にはビッグデータへの取り組みについて、多くの声が寄せられています。
「これまで捨てていた情報を何か使えないか」「過去数年分のデータは用途限定でサマライズして部分的にしか残っていない」「24時間営業で夜間バッチという時間が持てなくなった」「夜間バッチが朝までに終わらないかと心配することが増えた」「大量データ分析を試してみたい」など、その声は千差万別です。 中には「何に使うかは決まっていないが、Hadoopについて詳しく知りたいから教えてほしい」という声もあります。情報システム部門としては、新たなビジネスのネタとしてHadoopを勉強しておきたいということかと思います。

●生熊氏

これまで情報システム部門は運用管理など、システムの“お守り”に多くの時間を割いてきましたので、クラウド化が進めば、“お守り”部分の業務が軽減します。したがって、情報システム部門はその分、ITを活用した新しいビジネスへの提案をしなければなりません。その提案の1つが、ビッグデータへの取り組みとなるのでしょう。「Hadoopを教えてほしい」という相談は、ベンダへの質問と言うよりコンサルティングに近い相談かもしれませんね。

●山口氏

そうですね。企業の相談内容は本当に様々です。だからこそ、企業がどんな課題を抱えているのか、それをヒアリングして適切なシステム形態を導くというアセスメントが重要と考えています。
そこで日立は「大量データ分散処理アセスメントサービス」を2011年2月にスタートしました。これは、コンサルティングや研修、検証支援を行うサービスです。検証支援では、よりトライアルしやすくするために、クラウド上にその環境を準備しています。
このサービスには日立全体として取り組んでいまして、まずは日立コンサルティングがビッグデータの活用法などをお客様と一緒に考えていきます。クラウドが良いか、Hadoopが適しているのか…といった方向を定めた後に、システム構築のお手伝いをするということを行っているのです。
また、「Hadoopを教えて」という声を受け、講座を開設したり、ビッグデータに関する講演も行ったりしています。これからもこのような機会を設けて、お客様と接する機会を持っていきたいと考えています。

●生熊氏

アメリカなどの企業では、HadoopのようなOSSをよく使っているのですが、それは情報システム部門の人数が日本企業よりも多いという背景があります。日本ではやはり、ベンダがOSSをサポートしてこそ普及が進むという面があります。私も過去にベンダに勤めていた経験から、「エンドユーザはもっとベンダを使うべき」と考えています。最先端のIT情報を持っているのがベンダですから、そこに積極的に聞くのが早道なんですよね。今後は、ベンダからの売り込みを待っていると、ほかの企業が自らベンダに相談して、いち早く動いてしまうかもしれません。

●山口氏

「もっとベンダを使うべき」という意見に賛成です。ビッグデータ分析はまだ新たな分野ですので、我々も試行錯誤の中にいると感じています。ですから、お客様の声を聞くことで一緒に成長していきたいという思いもあります。

●生熊氏

ユーザとベンダが、買う側、売る側…と対立する立場というのではなく、目標に向かい一緒に進む並走型のビジネスと言うイメージでしょうか。それは、より先進的な付き合い方と言えると思います。ベンダは、エンドユーザのニーズを吸収して成長していきます。ですからエンドユーザもためらわずに、どんどんベンダに相談して、お互いに成長するというのが良い関係ではないでしょうか。
ビッグデータへの取り組みは、まだ始まったばかりです。来年は世界的にも、“ビッグデータ活用元年”になりそうです。そうした中、日立のようなトップベンダが一緒に考えましょう、と言っているのはエンドユーザにとってチャンスです。エンドユーザも、もっとベンダを使い倒せばいい。新しいビジネスを一緒にクリエイトする関係を築くことができれば、日本全体の活性化につながるのではないでしょうか?

●山口氏

ビッグデータ時代というのは、ほかの人や外のデータとの組み合わせにより、これまで捨てていたようなデータでも宝になるかもしれない時代。お互いに新たなビジネスや価値を生むもとになるかもしれませんから相談は大歓迎です。
多くの企業にとっては、ビッグデータは来年から再来年に向けて取り組む課題になるかと思いますが、まずは社内稟議を通すお手伝いも含め、日立としてはアセスメントから検証まで、様々な形でお手伝いをして、お客様とともに成長していきたいですね。

 

対談を通じて、「ビッグデータ活用」が新たな時代の扉を開きつつあることを、ひしひしと感じる読者も多いのではないだろうか。自社には自社のビッグデータ活用への道があり、それを発見することが、大きな価値へとたどり着くための第一歩となるのだろう。その道を見つけるためにも、ともに歩むパートナー選びは更に重要となる。その道筋を見つけるためにも、日立の「大量データ分散処理アセスメントサービス」について、この機会に詳しく調べてみてはいかがだろうか。




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