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株式会社リクルートキーマンズネット(新規ウィンドウを開く)に2009年06月04日に掲載された記事より転載掲載しています。
サービス内容、料金などは、掲載日または更新日時点のものです。
Flexible & Smartをコンセプトに “JP1”がメジャーバージョンアップ 目指したのは「IT投資の全体最適化」 IT投資全体は急ブレーキながらも「運用管理ソフト市場」はプラス成長する理由 『本当に最適化されたIT投資』に応える「JP1 Version 9」 「今後の10年も進化しながら使える」という思想 利用シーンでの活用法を理解することが、より効率的な運用を生む


Q.2009年6月に、「JP1 Version 9」がリリースされました。市場では、2009年度のIT投資全体は世界的な景気悪化の影響で大幅に冷え込むと予測される一方で、「国内システムとネットワークの運用管理ソフト市場」はプラス成長を堅持するとも予測されています。なぜ、運用管理ソフトは、この厳しい経済状況の中の限られた投資対象となるのでしょうか?
石井氏  世界的にIT投資が抑制されているのは、みなさんが日ごろから感じているとおりだと思います。この状況下で、IT投資はコスト削減や効率向上につながるものへと厳選されます。全体のIT投資を抑えつつも、いかにサービスレベルを落とさずにシステムの運用管理を行うかに期待が集まった結果、運用管理の分野が絞り込まれているのだと思います。

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Q.ではJP1は、これらの市場動向や期待に、具体的にはどのような方法で応えるべく強化されたのでしょうか?
石井氏  まずは「クラウドコンピューティングに対する期待」が大きいと思います。

現在のように、先行きがあまり見えない厳しい状況の中では、所有するよりもサービスとして利用する「クラウドコンピューティング」は、大きな投資をせずに従来のインフラを置き換え、立ち上げも早い…という点が評価されます。

クラウドコンピューティングの「所有から利用へ」という形態は今後拡大していくでしょう。かといって一気にすべてが置き換わるということにはならないと思います。

ITの中でもコアな業務とノンコアな業務がありますが、いわゆるコア業務をアウトソースするか…というと、セキュリティの問題などから見送る企業が多いでしょう。そこで「コア業務に関するシステムはしっかりと所有・管理しながら、ノンコア業務をサービスとして利用する」という選択肢が考えられます。従来の「すべて所有」に加え、「一部を所有・管理しながらノンコア業務はサービス利用」というように多様化するわけです。

次に、どの企業でも進められているサーバ集約が大きな問題だと思います。何百台、何千台となったサーバを集約して効率的に管理していくことが求められる中、その解決策の1つとして仮想化に対する期待が高まっています。

サーバ集約の現実に目を向けると、部分的にAとBの2つのシステムだけ統合というケースもあれば、センターを1つにして本当に大規模へと集約するケースもあります。いずれにせよ、大規模化に進んでいくのは間違いないと思いますが、そうなったときに、業務が現状のままでいいのかというと、答えは「否」となります。

たとえば従来は、事業所ならその事業所に最適な、いわゆる“個別最適”の運用形態をとってきた企業が多いでしょう。それらを、あるセンターにそのまま集約しただけでは、センター側に相当な負荷がかかってしまうわけです。
つまり、これまで個別最適で行ってきた運用・管理を、いかに効率よくするかが、大きな課題となってくるわけです。業務を効率化しないと“箱”だけを集約しただけになってしまうのです。

そこで「JP1 Version 9」では『ITリソースの効率化』を進め、それを実現してサポートする…ということと、その一方で『運用業務の効率化』もしっかり実現する、すなわちFlexible & Smartという2つの面からお客様のIT投資の最適化を支援することをコンセプトにしています。




Q.「ITリソースの効率化」も「運用業務の効率化」も、企業にとっては大きな関心事ですが、具体的には、どのようなメリットを、ユーザは享受できるのでしょうか?
石井氏  それでは、具体的な例として、機能的面から、

(1)エージェントレスの監視による現状の把握
(2)モニタリングによる統合後の運用管理
(3)急増するジョブを処理する性能
(4)使う目的により切り替えられる業務指向ビュー

の4つをご紹介しましょう。
(1) 今のシステムに手を加えずに現状を把握
計画的に仮想化を進めるための「エージェントレス監視」
「エージェントレスの監視」には、もちろん「エージェントを入れる手間が省ける」ということもありますが、運用管理の効率化の視点から言うと、これ以外のメリットが大きいのです。

たとえばAとBの2つのサーバを集約する際に、それぞれのリソースの合計値を持つ1台のサーバにするのでは、本当のメリットは引き出せません。一般的に、従来のシステムというのは、年間で想定される最大量をサポートできるようなハードウェアスペックを擁しており、普段は1〜2割程度しか使用されていなかったりするケースもあります。

この状況を正確に把握していないと、AとBだけが集約できるのか、更にCやDまで集約できるのかがわからないということになります。まず今動いているシステムを把握することが大事。これをしないと単にシステムをひとつにまとめただけの統合にすぎないのです。システムの統合だけが目的になってしまうと、効率的な利用に対する意識が希薄になってしまうので、注意すべき点と言えるでしょう。

エージェントレスで監視ができるということは、“現状把握のためにエージェントを入れる”という新たな手間をかけずに現状を把握できるということです。今のシステムに手を加えなければ監視をスタートできないとなると、「運用管理を効率化する」というゴールから遠ざかってしまいます。

そこで、現状を把握した効率的なサーバ集約の計画を立てる上で「エージェントレスの監視」というのは、非常に効果的なのです。もちろん集約後もエージェントは不要なので、統合したシステムA、B、C、D…にも手を加えることなく状況を把握できるというメリットもあります。
適切な現状把握が効率的なリソース活用につながる
(2)自動化を進めたモニタリングで
仮想環境下ならではの運用管理の効率化を実現
仮想化によってシステムを統合しても、それ自体がゴールではありません。統合後のシステムをいかに効率的に運用できるかが一番重要であるはずです。そのための機能が、物理サーバと仮想マシンの構成情報を一元管理できるモニタリングです。

JP1 Version 9では仮想化ソフトウェアから物理サーバと論理マシンの構成情報を一括収集できるようになりました。この結果、サーバの構成管理や監視ツリー画面の設定が容易になるのですが、このように言うと「システム構築時に役立つ機能」にとられがちです。

しかし、実際に仮想環境を運用し始めると、多くの企業で悩みとなるのが、仮想化によって統合した後のサーバメンテナンスです。

たとえば「週末にメンテナンス作業をする」といった場合に違うサーバに環境を移動するという運用が発生した際、「どのサーバに移動すればよいか」という悩みが発生してしまうのです。いちいち監視のために設定を変えるのは非常に手間がかかってしまいます。ましてやいろいろなシステムを集約した大規模環境では、設定自体の管理ができない状況に陥ってしまいます。

だからこそ、構成情報を自動的に収集して監視できるモニタリングは、実は仮想環境下だからこその、効率的な運用作業をサポートすることになるのです。
仮想マシンに対応した
監視ツリー画面
ビジュアル監視画面
(3)サーバ集約により集中した
膨大なジョブを処理できる能力
「JP1 Version 9」では「JP1」のフラッグシップであるJP1/AJS2(JP1/Automatic Job Management System 2)を、アーキテクチャからフルモデルチェンジしてJP1/AJS3(JP1/Automatic Job Management System 3)とし、従来比およそ10倍※のジョブ起動性能を実現しました。

これは、サーバが集約されることにより、求められるジョブも集約される上、ジョブはどんどん増え続けるという状況を考えてのことです。何千、何万のジョブを1日に実行…という状況になっても、スケジューラの多重化で、各々が分離したプロセスとなるため、スケーラブルに対応できるとともに、信頼性の向上も期待できます。
※日立製作所による比較(8多重実行の場合)
(4)実行したいことをしっかりサポート
使う目的により切り替えられる業務指向ビュー
従来拠点ごとで業務を行っていた場合は、拠点ですべてのジョブをコントロールしていましたが、集約してセンターに業務を移したときに、その業務を全部センターに任せられるわけではありません。現実的には、マシンの実行はセンター側で行いますが、監視や業務のスケジューリングは、基本的には拠点からのリクエストのはずです。

その場合、拠点側の人たちにとっては、自分たちのジョブの実行状況を把握することと、どういうジョブを流すのかを登録できればいいわけです。

逆にセンター側は、監視すべきシステム全体のジョブが予定通りに終わるのか、エラーが起きていないかを監視できることが重視されるわけです。

このように、いろいろな立場の人が、それぞれの立場で使うことになることを踏まえて強化した「業務指向ビュー」です。
 
 
「業務指向ビュー」使用者の役割や権限に応じた情報を整理して1画面に表示することできます。役割に不要な情報を表示しないことにより、効率よく安全に操作することができます。

また、ある日を境に、現在運用中の業務ジョブネットを、新しいジョブネットに切り替えたいというケースも多くあります。JP1/AJS3では、拠点側で現行の運用と平行して新しいジョブネットを作成しておき、設定した切り替え日に自動でジョブネットを切り替えることができるようになりました。拠点で新しいジョブネットを作成し、センターではそれを実行するだけ、という運用を確立することで、センター側に負担をかけずに大規模システムの運用を維持することができるのです。

このように、従来、拠点側の個別最適でまわしてきた運用のメリットは残したまま、いかに全体の業務の効率化も実現できるか…という視点に立っているのが「JP1 Version 9」なのです。
 
われわれが目指しているのは、利用シーンに沿った「簡単さ、わかりやすさ」です。単にGUIの使いやすさといったレベルではなく、実際の利用シーンに即して「実行したいことをサポート」できなければ意味がありません。

たとえば、従来のジョブ管理では右記のような「終了予定日時」といった項目はありませんでした。運用管理者は、これまでの運用実績の経験などから「このジョブは遅れているから、朝までに終わらせるために何らかの手を打たなくてはならない」というノウハウをもとに運用していたのが現状でしょう。

しかし、管理者にとっては「うまく動いているか」もさることながら、「重要なジョブが時間内で終わるか」が重要な問題です。

障害時/遅延時でも、いつ業務が終わるのか、どこに影響があるのかをすぐに把握することができるため、次のアクションへの判断に役立てることができます。
JP1 Version 9のセンター側管理者画面では、終了予定日時も表示

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Q.それぞれの立場に応じての使いやすさを機能に反映するためには、開発段階で大規模なリサーチなども行ったのでしょうか?
石井氏   「バージョンいくつだから…」というわけではありませんが、日ごろからお客様、パートナー企業様の声を収集し、そのご要望を反映するというスタンスは常に取ってきています。

しかし、ご要望によっては、大きな“リアーキテクト”でないと対応できないこともあります。今回のバージョンアップでは、実はアーキテクチャレベルでの大きな刷新を図っています。それだけに、これまで実現したかったけれどもできなかった機能をつぎ込むことができました。

先ほども触れたように、単にGUIレベルでの使いやすさ…といったことではなく、運用業務の切り口から見て「本当にわかりやすいか」という点に1歩踏み込んだ製品と言えます。今回のバージョンアップに対しては、非常に強い自信と手応えを持っています。どのくらい変わったのかを、お客様にも、是非体感していただきたいですね。
Q.今後、運用管理はどのように変化していくと考えていらっしゃいますか?
石井氏   仮想化やサーバ集約、クラウドの導入などが進むと、運用管理者の立場は、ますます変わってくるはずです。それにより自分たちの業務にとって最適な運用管理の形態も変わってきます。

「JP1 Version 9」では、大きく複雑になったシステムを一元的に管理・監視できる機能を提供できると思います。

「JP1」は15年の歴史を持っていますが、昨今の仮想化などで、運用管理の場も大きく変化してきました。これから先の10年は、更なる変化が生まれるでしょう。その状況の中でも、安心して使えるように「JP1」を進化させ、当然のことながら、互換性も踏まえて、業務を守り続けていきます。

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Q. 「JP1」は今年も顧客満足度、パートナー満足度ともに1位※という高い評価を獲得している製品ですね。その点も踏まえ、最後に、JP1ユーザやパートナー企業へメッセージをお願いします。
石井氏   「JP1」をより効率的に使いこなすためには、「こういう利用シーンでは、こう使う」という、より深い理解が必要であると考えています。

そこで日立製作所では、認定資格制度を含めた研修を、技術者、セールス、コンサルタントなど、幅広い層を対象に実施しています。既に「JP1」の認定資格制度を受講した方は、1万人を突破していますが、もっともっと力を入れていきたいと思っています。

「活用シーンにおける課題の解決」を念頭においている「JP1」だからこそ、導入企業の皆様にも、パートナー企業様にも、利用シーンにあわせた、効果的なJP1の活用方法をご理解いただくことはますます重要になると思います。

それだけに、お客様、パートナー企業様とも一体になって、「JP1」を進化させていきたいと思っております。
※「日経ソリューションビジネス 2009年2月15日号 第11回パートナー満足度調査」


今回の石井氏へのインタビューでは、このような不況下だからこそ、多大な期待が寄せられる統合システム運用管理製品の中でも、「JP1 Version 9」は、真の意味での効率化を実現できる思想の元に、大きなモデルチェンジが行われたことがわかりました。

実際の業務を行う担当者の目線で、最大限に効率化した運用管理を行えることが最大の特長である「JP1 Version 9」は、今後ますます大規模化、複雑化が進む企業システムにとって、大きな助けとなることでしょう。



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