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株式会社リクルートキーマンズネット(新規ウィンドウを開く)に2008年03月18日に掲載された記事より転載掲載しています。
サービス内容、料金などは、掲載日または更新日時点のものです。
製品コンセプト INSIDE REPORT その背景を探る 運用管理のあるべき姿へと進化し続けるJP1「時代が求める“統制”の提供」〜 “攻めの内部統制”と“グリーンIT”への視点〜

ITの存在なしには語れない今日のビジネス環境。事実、経済産業省もIT統制を内部統制や財務報告の重要施策の1つに位置づけるなど、政府としても経営とITの関係を重視している。
「経営とITが融合したビジネスレベルのシステム運用実現」を見据え、進化し続けてきた日立のJP1が、2008年3月、更なる機能強化を図った。

新たな“進化”のキーワードは「攻めの内部統制」と「グリーンIT」。今なぜ、この2つなのか。JP1の開発責任者である、日立製作所ソフトウェア事業部の石井武夫氏に伺った。


――昨年は、企業による個人情報漏洩や偽装が大きな社会問題になり、企業への「信頼」が大きく揺らいだ年とも言えるのではないでしょうか。一方で、環境問題対策など、企業の社会貢献への「期待」は高まっているかと思います。こうした社会背景は製品開発にどう影響してくるのでしょうか?

確かに、企業には「信頼」が求められる時代になっていると思います。これは言い換えれば、社会的責任を果たすことが、企業価値向上につながるということでもあります。社会的責任を果たすために、ITを使って企業が取り組むべき課題は大きく2つあると考えています。

まず1つ目は、「信頼」される企業となるための内部統制の徹底強化、つまりは“攻めの内部統制”。もう1つは、今や企業が避けては通れない、温暖化対策など環境問題対策への「期待」――これは"グリーンIT"への取り組みです。こうした2つの社会的な課題がすなわち、新しいJP1の強化ポイントとなりました。

――社会の変化と製品開発には密接な関係があるのだと感じます。ところで、“攻めの内部統制”とは、従来の内部統制とはどう違うのでしょうか?

昨年までは、日本版SOX法に対応するための統制で、実際には業務プロセスを定め、それを文書化するなどの作業に終始することで精一杯だったという企業も多いのではないでしょうか。これを“守り”の内部統制だとすれば、今後はその次のフェーズ――定めた業務プロセスの見直しと定着を実施し企業改革を進める、といった“攻め”に転ずる段階にきたと感じています。多くの企業が内部統制を単に法対応だけの問題ではなく、企業価値向上へのステップととらえ、競争力強化のために行うのが“攻めの内部統制”なのです。

――では、もう1つのグリーンITについてお聞きします。地球温暖化対策は確かに重要な問題ですが、JP1はどのように係わってくるのでしょうか?

IT機器の増加により、消費電力が増え続ける一方の今日、CO2排出量削減などの温暖化対策は多くの企業が取り組むべき社会的な課題ですよね。そこで、いかにして消費電力を抑えるか、という取り組みがグリーンITとして広く認識され始めています。グリーンITというとデータセンタにおける熱処理、省電力をまず思い浮かべますが、実際に今、使っているクライアントPCの消費電力を運用面から“統制”するだけでも、電力消費量には大きな差が出ることを知っていただきたいと思います。つまり、クライアントPCを省電力という目的の下にきちんと統制し、運用面からサポートする製品がJP1なのです。

JP1ではこうしたグリーンITへの取り組みをマシン室/データセンタ、オフィス部門のそれぞれにおいて支援しています(図1)。

図1:JP1によるグリーンIT対策


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――さて、次に機能面について伺います。まず、“攻めの内部統制”のために、JP1の新バージョンは具体的にどのような機能が強化されたのでしょうか?

前のバージョンでは、正しく運用させるための統制を行う「ITIL(R)サービスデスク」(※1)や、正しく運用されているかの証明を支援する「監査証跡管理」(※2)のように、内部統制の“枠組み”や“仕掛け”を確立するための基盤製品を提供してきました。

※1:JP1/IM - SS(JP1/Integrated Management - Service Support)

※2:JP1/NETM/Audit

新バージョンでは、定めた統制プロセスをいかに定着させ、効率化させるかという点に着目しています。統制プロセスを更に効率よく実行することによって、コストの削減やコンプライアンスの徹底という面から企業価値の向上を支援することができると考えているからです。

そこで「自動化」「見える化」「簡単導入」といった3つの視点から機能を強化しました。

まず、「自動化」については、案件対応の効率化を更に進めました。中でも注目していただきたいのは「メールによる案件登録の自動化」です。実は、これは多くのユーザから「こんな機能があったら便利なのに」と要望があった機能なんですよ。JP1では、従来からJP1/IM(統合コンソール)(※3)で管理している各種障害などのイベントを契機にした案件の自動登録が可能でしたが、「普段業務で使っているメールから直接案件を登録したい」という声にお応えして、今回エンハンスをしました。

※3: JP1/Integrated Management

この機能により、案件管理の負担は減りますし、入力ミスや設定漏れの予防も期待できます。また、案件の「優先度」や「作業期限」はポリシーに基づいて自動設定、更にはその作業期限をメールで自動的に通知する機能も装備していますので、案件の“沈み込み”の防止や“長期化”の抑止にも効果的です。

図2:案件管理の効率化

――エンドユーザの要望を抽出して新たな製品に反映する……こうした面も、JP1の大きな強みと言えそうですね。では、ほかの2つ、「見える化」「簡単導入」を反映した機能について教えて下さい。

「見える化」では、案件を一元的に監視するしくみを更に進化させています。作業の経過や最新の状況を簡単に確認できる案件管理画面に加え、「いつ、誰が何をしたか」を時系列で一覧表示できる、案件ごとの作業状況確認画面が強化されました。

「簡単導入」としては、カスタマイズ性を強化しました。JP1では案件フォームの標準テンプレートが用意されています。そのテンプレートの文言をお客様の業務に合わせ修正・追加・削除するなど、ステータスを容易にカスタマイズできます。これにより、お客様の運用に合わせた案件管理をすばやく実現できます。

更に、新たな監査対象の追加を容易にGUIで定義できる機能を搭載しました。
GUIで正規化ルールを作成すれば、定義や編集のミスが少なくなり、必要な監査証跡の収集が簡単に行えるようになるので、これもまた「簡単導入」の1つと言えます。


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――次にグリーンITについて伺います。JP1が支援する省電力に対応するための機能とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

JP1はオフィスでのクライアントPC、そしてマシン室やデータセンタでの省電力対応を支援します。はじめにオフィス部門のグリーンITについて紹介しますので、下の図を参照して下さい。この図のポイントは、クライアントPCの省電力運用をPDCAサイクルで行える、という点です。

図3:オフィスでのグリーンIT対応のPDCAサイクル

順に見ていきますと、[Plan]では、「省電力対応PCの導入計画立案」として、今現在、何台の省電力PCを導入しているのか、電力は消費していながら利用されていないPCは何台あるのか、といったことが把握できるようになっています。これにより、不稼働PCを把握したり、省電力対応CPUを搭載したPCを導入すると年間どのくらいコストが変わるのか、といった点を把握することができます。

次に[Do]では「省電力のための統制」を行います。指定時刻になったらJP1管理下のPCは自動的に電源がONになり、一定時間を過ぎたらOFFになるという機能です。例えば、AM8:00に自動的に電源ONして、業務が終わるであろうPM9:00には自動的にPCの電源をOFFにする、といった運用ができます。ですから、電源を切らずに帰宅したとしても、自動的に電源が切れるので、無駄な電力消費を抑えることができるわけです。

[Check]では「省電力対応状況の評価」を行います。オフィスの省電力ポリシーに合わせた運用ができているか、部署別、時系列などにレポート出力を行い、チェックしていくことになります。そこで得た結果をもとに、[Action]ではPDCAサイクルを回し、継続的に改善するための省電力ポリシーの適合と設定支援を行います。起動時刻やシャットアウト時刻の見直しや省電力機能の徹底など、次のPDCAサイクルの設定を行ったら、それを実現するための支援を行います。

このサイクルで気づいていただきたいのは、オフィス部門における現状のクライアントPC環境のままでも、“運用”によって省電力への第一歩が踏み出せる、という点です。グリーンITでは「どう“見える化”して“統制”していくか」というのも重要だと考えています。そこをJP1は効率的、継続的に支援するのです。

――なるほど。全社的に統制されれば大きな省電力効果がありそうですね。では、マシン室やデータセンタではどうでしょうか?

まずは現況の見直しを行ってはいかがでしょう。最近はインターネットの普及もあり、365日24時間体制で稼働せざるを得ないサーバも多いと思います。でも、サーバを業務量に応じてうまく使っているでしょうか? 例えば昼間に比べたら夜間の業務量は少ない、週末の業務量も少ないかもしれません。JP1なら、業務量が多い時にはすべてのサーバで運用し、業務量が少なくなったら、必要ないサーバの電源をOFFにする、というような省電力シナリオをもとに自動運用することも可能になるのです。

――それは大変便利ですね。ただ、マシン室やデータセンタには温度問題もあります。温度監視やマシンの電源設定の制御も必要だと思いますが。

確かに、マシン室やデータセンタの温度監視も重要な課題です。今回、JP1は温湿度が監視できる無線センサAirSense(TM)との連携で、サーバラックやマシン室の熱異常を監視することができるようになりました。

図4:マシン室/データセンタでのグリーンIT対応 温度監視による電源設定制御

※1:AirSense(TM):(株)日立製作所ワイヤレスインフォベンチャーカンパニーが開発・販売している小型無線センサ。温湿度、振動、パーティクルなどの環境監視が可能。

※2:DBS:Demand Based Switching(Intelプロセッサの周波数・消費電力を制御する機能)

※3:JP1/IM - RL:JP1/Integrated Management - Rule Operation


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――これからのJP1の展望を教えて下さい。

今後、サーバの仮想化がますます進むと考えられますが、サーバのリソースを有効に使うという意味では、仮想化もグリーンITの一環ととらえることができます。ですから、仮想化環境での運用の強化というのも重要な課題になってきますね。例えば、物理サーバに何か障害が起きたときに、仮想サーバではどれだけ影響があるのかを把握できるようにするなど、仮想環境と物理環境の関係を可視化することが求められるでしょう。

――時代を先取りするような新しい開発には常に困難が伴いそうですね。

時代の流れの速さを痛感します。開発に時間をかけると、できたときに時代にそぐわないものになりかねませんから、そういう意味でも開発はやさしい道ではないですね。でも、常に時代が求めるものを把握し、単に機能が良いというだけではなく、お客様や、パートナー様の気持ちに立って、満足してもらえるような製品開発ができれば、きっと何年後も期待されるJP1であり続けるのではないでしょうか。

――御社は多くのパートナーとの意見交換を積極的に行っていると聞いています。そうした製品向上のための姿勢が日経ソリューションビジネス誌の「第10回パートナー満足度調査」のネットワーク/システム運用管理ソフト部門で1位(※4)に選ばれたのではないでしょうか?

※4:日経ソリューションビジネス 2008年 第10回パートナー満足度調査 ネットワーク/システム運用管理ソフト部門 1位

ありがとうございます。パートナー様からお客様の声も伝わってきますし、チャネルにはとても恵まれていると思います。改めて、多くの方々に支えられているのだと実感しました。今後も皆様のご期待に応えられるよう、開発していきたいと考えています。

――本日はありがとうございました。


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――「夢を与える製品」。石井氏はインタビュー最後に、JP1をこう語った。運用管理というシビアで現実的な分野の開発トップから、このような言葉を聞いたのが意外で、深く印象に残った。それを筆者はこのように解釈した――時代にマッチした製品を開発するには、“今”だけを見ていては取り残される。ユーザやパートナーといった多くの人々と“夢”を共有すること――それが優れた製品の開発につながるのだろう、と。


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株式会社日立製作所

ソフトウェア事業部
システム管理ソフトウェア本部
システム管理ソフト設計部 部長

石井 武夫氏




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