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企業再編時代に効く! システム最適化へのロードマップ

特集記事:HITACHI USER -ITビジネスNavi Vol.3-

ビジネスの方向性が絶え間なく変化していく中で、企業の情報 システム部門にも変化に応じて情報システムを改修するなどの 対応が求められています。 情報システムの改修に強いアーキテク チャとして以前から言われてきたのがSOA(サービス指向アーキ テクチャ)です。ただ、SOAと聞くと、「説明が難しい」「効果が見え ず、予算がつかない」といったイメージをお持ちの方が多いようで す。

しかし、SOAの考え方やメリットは十分に浸透しており、今や 開発・保守・運用コスト削減や、クラウドサービスを活用する際の 連携基盤にSOAが大きな効果を発揮しつつあります。本稿では、 変化に強い情報システムに、SOAの導入が求められている理由 について概観していきます。

社会情勢の変化への対応が求められる情報システム

まず、企業を取り巻く社会情勢の変化から情報システム部門に 求められる課題を見てみましょう。グローバル化、M&A、ITガバナ ンスへの対応では全社システムを支える統合基盤の整備が求め られます。また、近い将来導入されるIFRS(国際会計基準)の制度 化に合わせて、業務システムを柔軟に変更する必要があります。さ らに、コスト削減の面から、クラウドサービスの活用といった"持たざ るIT"も、情報システム部門に求められています。

こうした変化にシステムを追随させることは情報システム部門の 大きな課題です。「すばやい経営判断ができるよう分析ツールを導 入する」「他社に負けないよう、リードタイムを短縮できるシステム を導入する」といった経営ニーズがある一方で、現場からは「シス テムの一部を変更すると、どこに影響するかわからない」「システム を移行すると、コスト削減や業務はスムーズになるが、スムーズに 移行できるか分からない」など、システムの改修に対する不安があ がってきます。企業の情報システムは個々の業務システムが密に 連携して構築されていることも多く、ビジネスの環境変化に伴う業 務システム開発・改修の負担は大きなものとなっています。

SOA の導入が、求められる情報システムへの近道

業務の効率化や事業環境の変化に対応していくには、業務 の流れであるビジネスプロセスを改善していく必要があります。こ れに伴い、情報システムやその連携にも改修が必要です。SOA に基づくシステム構築では、業務処理の手続きである一連の流 れ(ビジネスプロセス)と、業務を実現する機能(サービス)を分離 し、これらの疎結合(連携するサービスに影響を与えない結合)に よりシステムを構築します。このため、ビジネスプロセスの変化や サービスの入れ替えに柔軟に対応できます。また、ビジネスプロセ スとサービスが分離されることで、ビジネスプロセスを明確に理解 しやすいというメリットもあります。

図:サービスの入れ替えとビジネスプロセスの変更
図:サービスの入れ替えとビジネスプロセスの変更
サービスの入れ替えとは、ビジネスプロセスに接続されるサービスを、そっくり別のサー ビスと入れ替えることを指します。例えば、「与信」のサービスを、改良した「与信'」の サービスに入れ替えるということです。また、ビジネスプロセスの変化とは、判定基準 の変更などでビジネスプロセスそのものが変化することを指します。

システムの改修を例にSOAの適用についてみてみましょう。通 常、改修対象のシステムは他システムとの情報連携を行ってお り、新システムに移行した後も同じような連携が必要になります。 その際、新システムのプロトコルやデータフォーマットに合わせて、 連携しているシステムを修正することは、影響範囲の特定や、修 正方法の検討、修正工数の捻出など、信頼性、保守性、費用等 の面から考えても困難で、連携しているシステムには手を加えたく ないというのが実情です。

このような場合にSOAを導入すると、新システムへの移行をス ムーズに行うことができます。SOA基盤を適用すると、連携してい るシステムのインタフェースはそのままで、新システムと連携でき ます。また、データフォーマットの変換もSOA基盤の中で実現でき るため、連携しているシステムに手を加えることなく、システムの 改修が可能です。

図:システムの改修にSOAを適用した例
図:システムの改修にSOAを適用した例

このようにシステムの改修を考えてみると、SOA基盤が実現する 「サービスの入れ替えとビジネスプロセスの変化への対応」が、 段階的にシステムの改修を進める上で大変有効であることがわか ります。

【日立のSOAの考え方】

  • 疎結合とは、SOA基盤を流れる情報の形式に何か変化があった場合でも、連 携するサービスは一切影響を受けないような結合形態。サービス同士が直接 やり取りせず、SOA基盤を介して情報をやり取りする。
  • 情報の型(プロトコル、データフォーマットなど)変換などはSOA基盤で行われ るため各サービスの情報の型を意識する必要はない。
  • システムのSOA化により、業務の流れを見える化し、その上で改善を継続的 に実施していくのがシステム最適化への効果的なアプローチ。
  • SOA導入後の各業務システムの改修や移行は、他システムに影響を与えるこ となく、サービスの入れ替えやビジネスプロセスの変更で対応できる。

システムのSOA 化はクラウドへの第一歩

最近ではコストカットの面から、クラウドの活用が進んでおり、情 報システムをクラウド環境上へ切り出していく企業が増えていま す。また、東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)への関心が 高まっており、その対応としてクラウドサービスの導入を検討して いる企業も多いようです。

クラウドへの移行を考えた場合にも、情報システムをSOA化し ておくことは有効な手段です。クラウドには特定企業など限られ た範囲の利用者を対象とする「プライベートクラウド」と、インター ネット経由で不特定多数の利用者を対象とする「パブリッククラウ ド」の二つがあります。さらにその中には、システム開発環境に相 当するPaaS(Platform as a Service)の部分と、実際の業務処 理そのものを切り出すSaaS(Software as a Service)の二つに 分けられます。

図:クラウドにおけるSOA基盤の必要性
図:クラウドにおけるSOA基盤の必要性

図:クラウドにおけるSOA基盤の適用
図:クラウドにおけるSOA基盤の適用

開発環境については他のシステムとの情報連携はほとんどな く、それだけでクローズしているため、クラウドへの移行は容易で す。ただし、業務そのものをサービスとして提供するSaaSでは、 サービス部分だけでクローズできず、他のシステムとなんらかの情 報連携が必要となってきます。このため、情報システムをクラウド サービスに対応させる前に、企業内のシステム間がどう接続され ているのか、接続プロセスに変化があった場合に柔軟に対応でき るようになっているかなど、システムの連携を一元管理しておくこ とが重要です。そのための手段としてSOAを利用できます。

また、事前にSOA基盤で接続していない場合でも、クラウドに 切り出す契機で、既存システムとの連携部分はSOA化すること

こうしたシステムの最適化を支援するSOA基盤製品として、日 立では「Cosminexus(コズミネクサス)」を提供しています。本稿 で紹介しきれなかったBPM(business process management) へSOAを活用したアプローチや、SOAの適用例などを含めて、 「BPM/SOAサイト」にて紹介しています。

特記事項

  • この記事は、「会報誌 HITACHI USER 2011年9月」に掲載されたものです。
  • その他記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

BPMを支援する日立のSOA

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