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ビジネスの変化に即応できる柔軟性と既存帳票をそのまま活かせることが成功の鍵


 社内では交通費の精算をはじめ、各種支払関係の書類など、おびただしい種類・数の申請書類が回覧されており、これに対応するため各部門に事務スタッフを置いていたのですが、人員削減や業務の効率化・組織のスリム化が進められた結果、事務スタッフがいなくなりました。 すると申請書類の決済期限がきても処理ができなかったり、紛失などの事態が散見され、何らかの対策を講じる必要が生じました。
 2005年5月に親会社の米ワーナーミュージック社がニューヨーク証券市場へ上場したことから、米国SOX法への対応が急務となり、ワークフローシステムを社内で検討する動きが加速したという次第です」(藤野氏 ※以下、発言部分はすべて藤野氏)


 

 同社の導入目的を整理すると、大きく分けて「米SOX法への対応」「社内稟議業務の効率化・スピードアップ」の2つであり、ワークフローシステムの導入によって、電子フォーム化と作業の自動化を進めることが主眼だったといえるだろう。
 では、どのような検討がなされ、製品選定のポイントは何だったのか? 引き続き、藤野氏に話を聞こう。


   
 
   
 
 

 「日立を含め3社の提案を基に、社内の各部門から選抜したキーマンたちとともに操作性や運用性を含めた検証を行い、『電子フォームワークフロー』を選びました。
 評価が高かったポイントは、第一に導入に際して社内ユーザーが違和感なく利用できること。そして、ビジネスの変化や様々な業務に対応できる柔軟性でした。特に評価したのは、社内の申請書類はExcel帳票を使っていたのですが、余分な開発をせずにExcel帳票がそのまま電子帳票におきかわるのは、日立の製品だけでした」


 

 日立の『電子フォームワークフロー』は、既存のWord/Excel帳票を変換することにより、従来の帳票そのままの体裁でブラウザ上に表示し、記入することができる。ユーザーに違和感を与えない電子帳票が容易にできることが製品選定の大きな要因になったそうだ。

   
 

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 「まずはシステムに馴染んでもらうことから始めました。SOX法対象外の電子化しやすい帳票からワークフローシステムへシフトしていき、申請・承認の仕組みを見直すとともにシステムのベースづくりを行いました。 SOX法対象外からシステム化したのは、いったん紙書類でOKが出たものが、途中で電子化することで監査しなおされることを避けるためです。
 初めにSOX法対象外の業務でシステム化の体制を確立し、その次の段階で、ノウハウを活かしてSOX法監査にOKが出たものに導入する、という考え方ですね。実際、今年10月の監査で社内体制にOKが出たので、SOX法の対象になるものに随時着手し始めています」


 

 SOX法対策で重要なのは、「ミスや不正が起きない正しいプロセスになっていること」だ。ワークフローシステムでいえば、「確かに権限者が承認したかどうか」「その権限者以外がログインして承認していないか(なりすましがないかどうか)」が、システム上できちんと制御される必要がある。 例えば「30万円(部長承認)と31万円(本部長承認)では承認ルートが変わる」など、ワークフローに書類が流れれば正しく決済される仕組みになっていることも、重要なポイントだ。

 

 「第2段階では、社員の誰もが対象となる交通費清算や経費出庫申請関係、広告宣伝費申請、それと、営業部門のオーダーエントリー。それに、CD店などからの新譜の発注追加や旧版の注文といった、本社処理分のオーダー申請書類の申請書類も含めましたが、これも紙書類と変わらないデザインだったため、違和感なくスムーズに浸透していきました。
 ひとつのCDを売るためだけでもおびただしい書類があり、まずは可視化・自己管理化を図りました。
 日立にサポートをしてもらいながら、あくまで『自分たちが使いやすいものを自分たちでつくった』という点は強調したいですね(笑)」


 

 従来のワークフローでは業務アプリケーションの改変に手間や時間がかかったが、『電子フォームワークフロー』はユーザー自身で電子帳票や業務プログラム、プロセス定義をGUIで開発できる機能を提供しており、短期間での効率的な柔軟なシステム構築が可能だ。こういった製品の特長を、同社では十分に活用したといえるだろう。


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 「現在は、申請書をシステム上で作成・回覧し、回覧終了・承認まで一貫して済ませることができます。また、オプション機能により最終データをPDFファイルにして保存用ファイルサーバにストックしています。このワークフローの導入によって、次のような様々な効果を実現できました」


 

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 「今後は、経費清算の結果をロンドンのデータセンタに送り、ERPの財務会計システムに取り込むなど、データ連携を開始する準備をしています」
 「音楽業界は正に“タイム・イズ・マネー”の世界。デジタル化が進み、タイムリーに音楽コンテンツを世に出していかなければなりません。時間が勝負なだけにスピーディーさが絶対条件であり、様々な契約に関わるあらゆる申請業務をワークフローシステムでスピードアップしていきたいですね。そのためにも、ユーザー自身にExcelで必要な帳票のレイアウトを作ってもらい、それをシステム化していく予定です」

 

 「2006年2月の導入以来、スムーズな進展と、ごく早い段階での効果を達成することができたのは、その前年の製品選定段階から各部門のキーマンたちから成るワークフロープロジェクトを結成したからです。 製品選定から一緒に検討を進め、システム化における課題を見つけ出し、それをクリアするためのシステム改善を進めるといった『使いやすさを自分たちで考える』ことで、『このシステムは自分たちがつくったものだ』という意識が自然と醸成されていきましたし、社員の側でも『身近にいるあの人が選定したんだ』という意識がありました。 これによって、システムの利用に勢いが付いたことは間違いありません」
 「提供元である日立には、音楽業界ならではの独自の組織やスタッフなど、我々の要望にお付き合いいただき、使いやすいソリューションを提供してもらい、感謝しています。今のところ、監査を受けるに当たっては、データをすべてプリントアウトする手間が、少々面倒ですね。今後、電子ファイルでの対応がOKになればそれも解決します」


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 親会社の米国市場上場に伴い、約1年という短期間でのSOX法対応が必要となったワーナーミュージック・ジャパン。 通常であればその対応に追われ、社内は大混乱になるところだが、各部署のキーマンによるプロジェクトを筆頭に、全社体制で確実に関門を乗り切った点は多くの企業で参考にできることだろう。 また、自社の属する業界特有の業務の流れに対応可能か、あるいは自社固有の書式を活かせるかどうかといった点も、選定に際しての大きなポイントだ。
 全社の業務に影響が及ぶだけに、ぜひ同社の事例を参考に、後悔しないワークフロー選びを行っていただきたい。


   
導入の背景 / 選定のポイント 導入<第1段階> / 導入<第2段階> 導入による効果 今後の展開 / 成功のポイント インタビューを終えて 株式会社ワーナーミュージックジャパン


 
 
※ この記事は、「キーマンズネット」に掲載(2006.12.6)のコンテンツを一部再編集したものです。