本文へジャンプ

ミドルウェア

uVALUE 実業×IT

Hitachi

第15回:SIサービス工業化の時代にユーザ企業が学ぶべきこと(3)

〜個人の持つノウハウを業務フローに落とし込む

株式会社ノークリサーチ

第13回では情報システム開発を取り巻く法制度関連の重要な変化として「工事進行基準」を紹介した。 第14回ではシステム開発案件の「フェーズ」を取り上げ、SIerやベンダと良好な協力体制を築くための基礎知識を解説した。
ユーザ企業が情報システムに関する理解を深めることは、ユーザ企業自身のIT利活用に大きなプラスとなる。しかし、こうしたノウハウを社内の特定社員に留めてしまうと、担当が代わった時点で全てが振り出しに戻ってしまう。

そこで今回は個人の得たノウハウを共有し、組織単位でそれらを活用・改善していくための方法について考えていくことにする。

第13回 工事進行基準とは何か?
2009年4月から受託ソフトウェア開発にも「工事進行基準」が適用される。
この基準が情報処理システム開発にもたらす影響とそれに伴ってユーザが知っておくべき事項について解説していく。
第14回 情報処理システム開発案件のフェーズを理解する
情報処理システム開発には「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「運用」といったステップが存在する。このステップは「フェーズ」と呼ばれ、今後ユーザが自社の情報処理システム構築を成功させ、SIerとの良好な関係を築くためには必須の知識である。
ユーザの視点からの「フェーズ」をわかりやすく解説する。
第15回 個人の持つノウハウを業務フローに落とし込む
工事進行基準などのルール、そして情報処理システム開発の「フェーズ」を理解することによって、ユーザ側の情報処理システム構築スキルは大きく向上する。しかし、こうしたスキルをきちんと社内で共有しておかないと、同じミスを繰り返してしまうことになる。
ここではノウハウ蓄積と共有のノウハウについて解説していく。

個人の持つノウハウを業務フローに落とし込む

どんな業種であっても、業務を遂行する際にはある程度決まった形の手順が存在するはずだ。

それらは一般的に「業務フロー」と呼ばれる。企業が自社の業績を向上させるためには「顧客満足を実現する高品質な業務フローを迅速かつ安定して実行し、常に改善を続ける」ことが不可欠だ。

だが、これを実現することは容易ではない。多くのユーザ企業が業務フローに関して抱える課題を整理すると以下のようになる。

課題1:業務遂行の品質やスピードが特定社員の持つノウハウに依存してしまっている

これは多くのユーザ企業が実感している課題だろう。
『それは○○さんでないと対処できない』という業務が存在すると、社員数が幾ら多くてもそこがボトルネックとなって全体の効率を上げることができない。
スキルを持つ社員が他の社員をしっかり教育できれば良いのだが、そうした時間を確保すること自体が困難であることも少なくない。

課題2:業務遂行のノウハウをマニュアル化しても、利用されずに陳腐化してしまう

多くのユーザ企業が課題1に対して取る対策が「ノウハウのマニュアル化」である。
しかし、特定社員が持つノウハウを漏れなく洗い出し、それをわかりやすく記述するには多大な労力を要する。結果的に型通りのマニュアルしか作成されず、誰もそれを参照しないというケースも多い。
また、昨今ではビジネス環境が頻繁に変化するため、作成したマニュアルの内容が追随できないという問題も発生している。

課題3:業務遂行のノウハウをマニュアル化しても、活用状況と効果を把握できない

意外と見落とされがちなのが「作成したマニュアルの活用状況と効果だ。
「そのマニュアルはどれだけ参照されたのか?」「参照した結果、果たして業務効率は改善されたのか?」紙面として作成されたマニュアルではこうしたフィードバックを得ることは難しく、作りっぱなしの状態となってしまいやすい。
デジタル化して文書ライブラリに保存しておけば、参照された回数や頻度は確認が可能だ。しかし、きちんとした効果を測ることは難しいだろう。

このように業務フローにおける課題はユーザ企業の業績に多大な影響を与える要素であるにも関わらず、有力な解決策が見出せない状態が長く続いていたのである。

しかし、情報システムの進化に伴い、高品質な業務フローを迅速かつ安定に実行し、絶えず改善し続けるためのツールが登場してきている。以下ではその代表例として日立製作所の「uCosminexus Navigation Platform」を取り上げ、上記の課題がどのように解決されているかを見ていくことにしよう。

「uCosminexus Navigation Platform」は日立製作所が提供するSOAプラットフォーム 「Cosminexus」のうち、「フロント統合基盤」を形成する要素の一つである。ビジネス環境の激しい変化に追随するためには、自社の各業務を「サービス」というある種の部品に見立て、それらを柔軟に組み合わせるという発想が重要だ。

そうした考え方が「SOA(Service Oriented Architecture)」であり、「Cosminexus」はそれを実現するためのシステム基盤(プラットフォーム)である。「Cosminexus」は以下の四つの基盤から構成されている。

Cosminexusの四つの基盤

[アプリケーション基盤]

各サービスを構成するアプリケーションを実行するための基本的な基盤

[プロセス統合基盤]

各サービスを業務フローにしたがって結合、連携させるための基盤

[情報統合基盤]

各サービスが取り扱うデータを集積、管理するための基盤

[フロント統合基盤]

ユーザの目に見える操作画面(インターフェース)を司る基盤

「uCosminexus Navigation Platform」はフロント統合基盤に属し、ユーザが業務フローの作成/共有/実行/改善を手軽に行える機能を提供している。上記に挙げた課題と照らし合わせる形で、その特徴を整理してみよう。

特徴1:(課題1の解決)
ビジュアル化された業務フローをドラッグ&ドロップで手軽に作成

「uCosminexus Navigation Platform」で作成した業務フローには業務を項目毎に整理した「メニュー」、業務の流れを図解した「フローチャート」、特定の業務場面に関する詳細な手ほどきを記した「ガイダンス」といった三つの領域が存在する。
ビジュアル化された業務フローは大変わかりやすい反面、従来は作成に手間がかかるという問題があった。
しかし、「uCosminexus Navigation Platform」では用意されたパーツを選択して画面上に配置する「ドラッグ&ドロップ」スタイルを採用し、プログラミング知識を一切必要とせずに高度な業務フローの作成が可能だ。これによって特定社員の持つノウハウを負担をかけずに形式知化することができるわけである。

特徴2:(課題2の解決)
作成した業務フローはWebブラウザで共有し、いつでも修正が可能

業務フロー作成ツールの中には閲覧のために専用のアプリケーションを必要とするものがある。
しかし、それではせっかく作成した業務フローを他の社員が閲覧する際のハードルが高くなってしまう。「uCosminexus Navigation Platform」で作成した業務フローはWebブラウザで閲覧が可能であるため、そうした心配はない。
また、業務フローの修正も作成時と同様に手軽に行えるため、業務の変化に合わせて変更していくことができる。

特徴3:(課題3の解決)
業務フロー実行状況をログとして記録/解析することで問題点を分析

「uCosminexus Navigation Platform」で作成した業務フローは単なる電子マニュアルではない。
各ユーザが業務ステップを進めていくのに応じて、画面上に表示された「フローチャート」や「ガイダンス」も変化し、その時々に必要な情報を表示してくれる。そして、「どの業務ステップに時間がかかっているか?」をログとして記録しているのである。
このログを解析すれば、業務フローの活用状況はもちろん、業務上の問題点やボトルネックも見つけ出すことが可能となる。

uCosminexus Navigation Platformを活用した業務フロー課題解決サイクル

このようにツールを活用することによって、業務フローの作成/共有/実行/改善のサイクルが回り始める。 その結果、ユーザ企業はより高品質な業務フローを迅速かつ安定して遂行することができる。

日本は欧米と比較すると、業務遂行において個々の社員に依存する度合いが高い。もちろん、個々の社員の個性や才能を尊重し、それを最大限活用する文化は大切にすべきだ。

しかし、その一方で組織としてのパフォーマンスを最大化させることはユーザ企業の責務でもある。

ここで紹介したように、それを実現できるツールは既に存在している。不況下においては人員増強を行いにくく、個々の社員の負担は重くなりがちだ。そうした時にこそ、業務フロー課題を解決するツールを活用すべきである。IT投資を抑制もしくは削減する動きが強まる中、組織としてのノウハウ共有と強化を推し進めることが、中長期的な視点では重要な経営施策となってくるであろう。

特記事項

  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。