日立の電子フォームワークフローにより次々とワークフローシステムを自社で開発。
内部統制の強化やe-文書法への対応に大きな成果
奥本製粉株式会社(以下、奥本製粉)は、「湯種製パン法」の特許をいち早く取得したことに象徴されるように、技術力の高さと先見の明が、創業70年の歴史を支えてきた。同社では、2004年から、日立の電子フォームワークフローを導入して、さまざまな申請・承認業務のワークフローシステムを自社開発している。日立の電子フォームワークフローは、GUI設計、業務プログラム、プロセス定義を効率よく開発できる機能を提供し、短期間での効率的で柔軟なシステム構築が可能である。ビジネス環境の変化へ柔軟に対応できる改良支援型ワークフローを選択したことで、奥本製粉は、業務改善・改革および内部統制の強化に大きな成果をあげている。
奥本製粉株式会社
理事
企画システム室長
田口 晃氏
「湯種製パン法」など高い技術力を誇る奥本製粉は、IT活用にも早くから取り組んできた。ブロードバンドを活用した社内ネットワーク基盤を構築し、基幹系・情報系のシステム統合と情報共有も進め、ホームページも充実させた。そして、次に取り組んだのが、業務改善・改革である。
「『食のソリューションビジネス』を合言葉に新しいビジネスモデルの創造に取り組んでいますが、これを地に足の着いたものにするには、既存のビジネスモデルを改善・改革して効率化しておかなければなりません」と田口氏は言う。
そこで奥本製粉では、業務改善・改革を進めるための手段として、ワークフローの導入に踏み切った。
奥本製粉株式会社
企画システム室
マネージャー
池田 尚氏
奥本製粉株式会社
企画システム室
サブマネージャー
小財昌博氏
ワークフロー製品の選定にあたっては、ワークフロー検討委員会を結成して、製品の比較検討を行った。
評価項目をリストアップし、公平にチェックした結果、採用されたのが、日立の電子フォームワークフローである。特に重視したのは、次の3つのポイントであった。
第1に、これまで使っていた紙ベースの帳票イメージを、そのまま画面に反映できる。
「業務改善・改革を進めるには、皆の理解とやる気が不可欠です。話し合ってもっと良い仕事のやり方を見出し、それをMicrosoft R ExcelやMicrosoft R Wordで表現したら、そのまま入力画面にできる点がとても気に入りました」と池田氏は説明する。
第2に、自社内でワークフロー開発ができる。
「自社で開発できるからこそ、改革の内容を細かく反映させたワークフローを作り、業務の改善に応じて、システム側をブラッシュアップするといったことがタイムリーにできるのです。社外に開発を依頼してしまうと、改革のチャンスを失ってしまう」と小財氏は強調する。
第3に、携帯電話にメールを転送する機能を付加できることやモバイルコンピューティング機能も高く評価した。
提案営業を推進する奥本製粉では、営業や経営トップ層を中心に、ほぼ全員にノートPCを配布している。外出中でも、携帯電話に申請依頼のメールが届けば、すぐにノートPCを使って承認作業を行うことができる。これにより、業務の流れは格段にスピードアップする。
しかも、通信に接続していないオフラインの状態の時でも、起案書を入力してPCに保存しておき、オンライン状態にした時に送信できるのが、日立の電子フォームワークフローならではのモバイル対応なのである。
奥本製粉では、2004年8月に日立の電子フォームワークフローの採用を決定した。その後すぐに現行業務の流れや作業者を、業務改善の視点で見直しつつ開発に着手。同年10月から順次、ワークフローシステムの運用を開始し、現在では、工場見学申請書、稟議書、廃棄処分リサイクル残渣申請書など、13の業務を運用している。
システムに共通しているのは、業務の流れや承認などの作業者を条件によってきめ細かく設定できるようにしていることである。
ユーザー認証のメニューも自社開発した。
奥本製粉は、一人の社員が複数の役職を兼務していることが多い。そこで、ログイン時に自分の役職が一覧表示されるようにした。選択した役職に従って承認作業ができるのである。
こうしたさまざまなワークフローシステムを自社開発するにあたり、サポートを担ったのが、株式会社ニッセイコムである。
同社は、サンプルを多数提供したり、開発されたシステムを細部にわたりチェックするなどさまざまな技術支援を行った。
「特に、ニッセイコムさんが提供してくれた開発者向けの初期教育と、6ヵ月間の安定稼働サポートというサービスメニューは非常に役立ちました。また、必要なときには日立と直接交渉してすばやく回答してくれるなど、ニッセイコムと日立が一体になった強力なバックアップを感じました」と田口氏は語る。
「ワークフローシステムの構築によって、明らかに業務改善の効果が出ています。導入は成功しました」と田口氏は力強く語る。
従来の帳票を踏襲しながら、業務の流れを徹底的に刷新したのが功を奏したのだ。どの部署は何の役割なのか、誰が承認者なのかが明確に定義され、業務改革は大きく前進した。しかも、申請書や稟議書はワークフローを使わないと承認を得られないため、新しい仕事の流れは確実に定着した。
また、拠点間の時間差もなくなり、社内業務の流れもスピードアップした。たとえば1週間以上かかっていた稟議決裁が、申請当日に完了する場合もある。
今後の開発の予定も目白押しだ。
ひとつは、ワークフローシステムと基幹システムの連携を進めていく。承認結果を自動的に反映させて基幹システムを書き換えたり、基幹システムのマスター情報を呼び出し、参照しながら入力する画面も作っていく。
現在、経費精算システムも開発中である。
「電子フォームワークフローは、e-文書法で要求されている技術要件をほぼ満たしていることから、紙の領収書保存を伴う経費精算をシステム化できれば、ペーパーレス化がさらに大きく前進します」と池田氏は語る。
こうした今後の開発方針に共通しているのは、内部統制を強く意識していることである。
「日本版SOX法が施行されると、取引先に対して内部統制を保証しなければなりません。ワークフローのシステム化を継続してやっていくことで、曖昧な人間の判断を排除し、業務の隅々まで『見える会社』にしていくことができるのです」と田口氏は説明する。
奥本製粉は、ビジネス要件の変化に柔軟に対応できる日立の電子フォームワークフローで業務改善・改革と内部統制強化のIT基盤を築いたのである。
奥本製粉のワークフローシステム概要(工場見学申請例)
USER PROFILE
奥本製粉株式会社
[東京本社] 東京都江東区富岡2-2-11 ふくせい1ビル
[大阪本社] 大阪府大阪市西区南堀江3-7-24
[創業] 1937年
[設立] 1949年1月
[資本金] 2億2,000万円
[従業員数] 224名
小麦粉・パスタ・プレミックスなどの開発・製造・販売を行っている食品メーカー。2007年1月に創業70年を迎えた。お客さまの経営課題解決をサポートする、「食のソリューションビジネス」を志向している。
PARTNER PROFILE
株式会社ニッセイコム
[本社] 東京都品川区大井1-47-1 NTビル
[関西支社] 大阪市中央区北浜3-5-29 日生淀屋橋ビル
[設立] 1974年2月
[資本金] 3億円
[従業員数] 737名
システムインテグレーション、サポート&サービス、ハードウェア&サプライの3事業でワンストップソリューションを提供。長年の業務システム開発のノウハウを活かして、日立の電子フォームワークフローを使った開発実績が豊富。