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システム集約による効率化と 分散によるリスクヘッジをどう両立するか?
オエノンホールディングスに聞く  災害対策サイトを低コストで実現する“仕組み”

システム運用管理を効率化・確実化する上では、IT 資産を集約し、一元的に管理することが定石とされている。

だが、これをBCP の観点から見ると、システムを集約すればするほど災害時のリスクが高まってしまう。 では運用管理の効率化と災害対策をどのように両立すれば良いのだろうか?

サーバ集約を進める中で、既存資産を活用することでコストを抑えながら災害対策サイトの構築を成功させたオエノンホールディングスに、プロジェクトの経緯とポイントを聞いた。

東日本大震災を きっかけに浮上した サーバ集約環境の災害対策

佐藤英輝氏の写真
オエノン
ホールディングス
オエノンシステム
センター長
佐藤英輝氏

東京都中央区に本社を構えるオエノンホー ルディングスは、12 の子会社を持つ企業グルー プ「オエノングループ」の持株会社だ。大正 13 年に設立された老舗酒造会社「合同酒精」 を母体とし、複数の酒類メーカーとの合併やM &Aを経て、2003 年から現在のオエノングルー プ体制に移行。各傘下企業による酒類製品の 製造・販売の他、加工用でんぷん事業や酵素 医薬品事業、バイオエタノール事業など、幅広 い事業を展開している。

同社を支えるITシステムは、旧合同酒精の 情報システム部門を母体に発足した「オエノン システムセンター」が運営している。同センター は、グループ統一の経営管理基盤の構築(= 利益管理の高度化)および統合的な業務運 営基盤(=業務の共通化、効率化)の実現 に向け、各子会社が個別に運用してきた業務 システムを、システムセンターでの集中管理体 制に統合・集約を進めている。その過程にお いて1 つの課題が浮上してきたのだという。こ の課題について、オエノンシステムセンター長 の佐藤英輝氏は次のように説明する。

「サーバ統合・集約化は、各拠点に散在す る事務系サーバをシステムセンターで一括管理 することで、IT ガバナンスをより確実に担保しつ つ、各事業拠点におけるシステム運用の手間 を減らし、本業に専念できる環境を作ることが目 的です。そこで、まずはファイルサーバやディレ クトリ管理サーバを中心に、システムセンターの ブレードサーバ環境に移行・集約しました。そ の他のサーバに関しても順次移行を進めてお り、最終的にはグループ内の全ての事務系 サーバを集約する予定です」

また、サーバの集約にはセキュリティやデータ 保全体制を強化するという狙いもあった。具体 的には、各拠点でばらばらに行われていたデー タバックアップをシステムセンターで一括して行 い、さらにサーバを冗長化構成にすることで、重 要な業務データをより確実に保護することを考 えたのだ。

そのために、同社は2010 年、日立が提供 するバックアップソフトウェア「JP1/VERITAS Backup Exec」を使ったデータバックアップ体制 を構築した。だが、サーバの集約が進んでバッ クアップ対象のデータ量が増えるに従い、バッ クアップ時間も増加した。また、それにも増して 問題視されたのが、災害に対する備えだった。

「サーバをシステムセンターに集約した分、そ こが被災した場合のリスクは増えてしまいます。 特に東日本大震災をきっかけに、システムの集 約だけではなく、分散によるリスクヘッジの必要 性が社内で議論されるようになったのです」

そこで同社は、「BCP(事業継続計画)の 観点に立ったシステムセンターの災害対策」 を、システム集約に伴う重点課題と設定。早 急な体制整備を目指し、2012 年から本格的に 乗り出したのである。

「JP1/VERITAS NetBackup」 を使った バックアップデータの 遠隔地保管を採用

市川清美氏の写真
オエノン
ホールディングス
オエノンシステム
センター
アシスタント
マネージャー
市川清美氏

ここで同社が相談を持ちかけたのが、高度な ソリューションで多数の実績を持つ日立グルー プのSI 企業、ニッセイコムだった。そもそもサー バ集約プロジェクトも、日立のブレードサーバ製 品「BladeSymphony BS320」を使って同社が 進めていただけに、新たな課題を相談する上で も話が早かった。

そのニッセイコムに、オエノンホールディング ス側から提示した災害対策システムの要件は 大きく2 つあった。1 つは「既存のIT 資産をな るべく効率的に利用して、コストを抑えること」。 もう1 つが「ネットワークに掛かる負荷をなるべ く抑えた方式であること」。佐藤氏は「特に後 者はかなり重視しました」と話す。

「今後、サーバの集約率を上げていけば、バッ クアップデータの量も確実に増えていきます。そ うした大量のデータを災害対策サイトにネット ワーク経由で転送する必要がありますが、高速 な専用線を新たに設けるのではコストが高くつ いてしまいます。そこで、すでに設置されていた WAN 回線で、大量データの転送を何とか実現 できないかと考えていたのです」

この依頼を受けたニッセイコムでは、4 パター ンのソリューション案を提示した。1 つは昔なが らの「テープバックアップ+遠隔地に搬送する 方式」。2 つ目が「ファイルレプリケーションをス トレージ装置の機能で行う方式」。そして3 つ目 が、同じく「ファイルレプリケーションをソフトウェ アで実現する方式」だ。しかし、テープバック アップ方式ではもの足りないし、かといってレプ リケーション方式ではハードウェアやネットワーク のコストが高くついてしまう。

そこでオエノンホールディングスが注目したの が4つ目の提案、「日立のバックアップソフトウェ ア『JP1/VERITAS NetBackup』を使ったバック アップデータの遠隔地保管」だった。オエノン ホールディングス オエノンシステムセンター アシ スタントマネージャー 市川清美氏は、この案を 提示された際、「JP1/VERITAS NetBackup の 重複排除機能に大きな可能性を感じました」と 振り返る。

「バックアップデータの総量は約2テラバイトを 超えていましたが、JP1/VERITAS NetBackup の 重複排除機能と自動遠隔バックアップ機能 (AIR)を用い、重複を排除したバックアップデー タを遠隔地に効率良くコピーすることで、転送 データ量をかなり抑えられます。そのため既存の WAN 回線でも、遠隔地へのバックアップデータ 保管を問題なく実現できるだろうと思ったのです。 また、本番サイトでのバックアップに要する時間 も、重複排除機能により大きく短縮できるはずだ と踏みました」

加えて、システム運用管理の現場で日々利 用しているJP1 製品群の高い信頼性や使い勝 手の良さなども、バックアップ体制を確実化する 上で1 つのポイントになると考えたという。

最小限の投資で データ圧縮率95%という 予想以上の パフォーマンスを発揮

渡辺浩一氏の写真
ニッセイコム
情報通信システム
第二営業本部
営業第二部
第三課 主任
渡辺浩一氏

桂木章光氏の写真
ニッセイコム
システム
技術開発本部
システム第一部
第三課 主任
桂木章光氏

こうして同社は、JP1/VERITAS NetBackupを 使った災害対策システムの導入に着手。わず か2 カ月という短期間のうちに災害対策サイト の構築は完了した。

システムの提案活動に当たったニッセイコム 情報通信システム第二営業本部 営業第二部 第三課 主任 渡辺浩一氏は、当時を次のよう に振り返る。

「弊社が相談を受ける以前から、災害対策サ イトについてオエノンシステムセンター内で検討 を重ねていたこともあって、プロジェクト開始当 初からバックアップの技術や遠隔地でのデータ 保管の必要性に対する理解が浸透していまし た。そのためソリューションの説明や社内調整 に時間を割かれることなく、すぐに設計・構築 作業に入れたのが大きかったですね」

また、実際に設計・構築を担当したニッセイ コム システム技術開発本部 システム第一部 第三課 主任 桂木章光氏は、「日立からの強力 な技術支援を得られたことも、プロジェクトを進 める上で大きなポイントになった」と述べる。

「システムの設計段階で、遠隔地へのデータ 保管と重複排除の処理について、日立の技術 者に設計内容をチェックしてもらったのです。ま た、データレプリケーションの性能をシミュレー ションするツールも提供してもらいました。こうし た支援があったからこそ、極めて短期間のうち に構築を完了できたのだと思います」

こうして2012 年7 月、オエノンホールディン グスの新災害対策システムは完成し、現在も順 調に稼働を続けている。同社では、バックアッ プデータの重複排除の効率や転送レートを定 常的に観測しているが、現在、重複排除率は 94 〜 95%という高い値を安定的に記録し続け ているという。

市川氏は、JP1/VERITAS NetBackup の重複 排除のパフォーマンスの高さについて、「新たな サーバをバックアップ対象に加えた時も、初めか ら60〜70%の重複率を示したのには正直びっく りしました」と振り返る。一方、佐藤氏は、「災 害対策サイトへのバックアップサーバ導入と、本 番サイトの既存バックアップサーバにCPUを追加 した他は、機器増強の必要性が生じませんでし た。新たな投資を極力抑えながら災害対策サイト を実現できたことに非常に満足しています」と、 JP1/VERITAS NetBackup の投資対効果の高さ を評価する。

今後、オエノンホールディングスでは、引き続 きグループ内のサーバ集約を進めていく予定だ が、「今回構築したシステムは、今後も大きな役 割を果たすことになります」と佐藤氏は述べる。

「サーバ集約が進み、バックアップデータ量 が増えていっても、JP1/VERITAS NetBackup で 構築した仕組みをベースにすれば、十分に対応 していけるという確信が得られました。今後も日 立とニッセイコムの協力を仰ぎながら、業務シス テムの効率化を合理的に推し進めていきたい と思います」

「日立のバックアップソフトウェア『JP1/VERITAS NetBackup』を使ったバックアップデータの遠隔地保管」の概要
「日立のバックアップソフトウェア『JP1/VERITAS NetBackup』を使ったバックアップデータの遠隔地保管」の概要

USER PROFILE

オエノンホールディングス株式会社

オエノンホールディングス株式会社

[本社] 東京都中央区銀座6-2-10
[従業員数] 1,038 名(連結)/
       93 名(単独)(2011 年12 月現在)
[資本金] 6,946 百万円(2011 年12 月現在)
[事業内容]
純粋持株会社。酒類事業、加工用でんぷん事業、酵素医 薬品事業、不動産事業などを展開する12 の事業会社を傘下に持つ。

Partner Profile

株式会社 ニッセイコム

株式会社 ニッセイコム

[本社] 東京都品川区大井1-47-1 NT ビル
[関西支社] 大阪市中央区北浜3-5-29 日生淀屋橋ビル
[従業員数] 848 名(2012 年4 月現在)
[事業内容]
SI とERP「GrowOne Cube」、そして信頼と誠実な取り 組みでご満足いただけるシステムを提供するソリューションプロバイダ。

特記事項

  • この記事は、アイティメディア @IT情報マネジメント(2012年9月)に掲載されたものです。
  • 記載されている会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。
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